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【いちはらSDGsアワード受賞】大型商業施設「unimoちはら台」のサステナビリティ戦略

環境先進国では環境配慮に劣る不動産は投資市場から淘汰され始めており、その波は日本にも訪れそうだ。そうした中、大型商業施設「unimoちはら台」は建物単体の省エネのみならず、買物客や地域と一体となってサステナビリティ戦略を実践中。その先進的な取り組みが評価され、市原市のSDGsアワードを受賞した。

2024年 01月 10日
unimoちはら台が市原市のSDGsアワード受賞

千葉県市原市と千葉市にまたがるニュータウンエリア地域で最大級のリージョナル型ショッピングセンターである「unimoちはら台」は2023年11月12日、市原市が主催する「いちはらSDGsアワード」において優秀賞を受賞した。

市原市は、SDGsに関する先進的な取り組みを実施している全国自治体の中から内閣府によって「SDGs未来都市」に選定され、その中でも特に先導的な取り組みを行う「自治体SDGsモデル事業」にも選定されている。同アワードは市原市の市制施行60周年記念事業として初開催され、18の市原市SDGs宣言企業・団体がノミネートしていた。

unimoちはら台は、経済産業省関東経済産業局の2018年度「エネルギー管理優良事業者等関東経済産業局表彰」、一般財団法人省エネルギーセンターが主催する2019年度「省エネ大賞」の省エネルギーセンター会長賞を受賞する等、省エネ対策に多数の実績をもつ。

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サステナビリティ対策に取り組む理由
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電気代の高騰によってコスト負担が重くなる中、省エネ施策は経済効果も高く、オーナー側は多大なメリットを享受できる

今回のアワード受賞で新たな勲章が加わることになったunimoちはら台。施設規模は延床面積で約7万㎡。店舗数は150超。一般家庭と比較するとゴミの年間排出量は約1,000倍、電気使用量は約3,000倍にのぼる。環境負荷への影響は一般家庭の比にならず、オーナーサイド(投資家・アセットマネジメント会社)共に、サステナビリティ対策は喫緊の課題と考えており、2015年頃から省エネ改修主体の環境対策に取り組み始めた。具体的な取り組みは下記になる。

①無線調光機能付きLED導入:2015年に共用部の照明4,120台の照度を自動制御できる無線調光機能付きLEDに変更。年間54万9,000kWhの使用電力量削減に成功した。投資回収期間は3.4年。

②空調自動制御システム導入:2017年7月には空調機をコンピューター制御で稼働させる自動システムを館内13カ所、屋外1カ所に設置した。年間105万5,000kWhの使用電力量削減を実現。投資回収期間は2年。

③太陽光発電設備の導入:2022年3月から本格稼働。塔屋の屋根部分に約2,000枚の太陽光パネルを設置、最大出力は745.5kWh。電気使用量全体の6%程度を削減でき、投資回収は6.6年を見込む。

④その他:館内・駐車場の照明LED化、既存設備の運用改善等。

これらの取り組みにより、電気使用量の大幅削減に成功した。省エネ施策を本格的に実施する前の2014年の電気使用量は年間約1,800万kWhだったが、2022年は約1,300万kWhとなり、約30%の削減に成功した。同施設の運営管理業務を受託し、サステナビリティ戦略の企画立案から実行までを担うJLLリテールマネジメント 支配人 黒田 雅裕によると「電気代の高騰によってコスト負担が重くなる中、省エネ施策は経済効果も高く、オーナー側は多大なメリットを享受できる」といい、省エネ施策を推進するための追い風になったという。

unimoちはら台では2014年から2022年にかけて年間電気使用量を約30%削減 出所:JLLリテールマネジメント

施設単体の省エネ施策から幅広いサステナビリティ活動へ

一方、今回のアワードを受賞した理由は省エネ施策だけではない。黒田は「2015年から省エネに特化した取り組みを強化し、電気使用量の大幅削減を実現する中で、施設単体での省エネ対策の限界を痛感した。そこで、2020年頃から多くの人が集う商業施設だからこそできるサステナビリティ活動を加速させ、より広範にSDGsの輪を広げていくことを目指した」と説明する。

元々、unimoちはら台はファンドに組み込まれた不動産投資商品の側面があり、先に述べた電気代削減に伴う経済効果の大きさもあり、当該施設のアセットマネージャーのラサール不動産投資顧問がサステナビリティ施策に前向きだったことが大きい。この流れに加えて、投資家サイドからもサステナビリティに関する要望が増えていき、省エネ改修や設備運用面の改善のみならず、来館者向けのSDGsイベントによる啓蒙活動、廃棄物の削減対策等、より広範なサステナビリティ活動を求める声が高まっていた。

そうしたオーナーサイドからの要望を受けて、2020年頃から本格的なサステナビリティ活動に取り組むことになったという。特に注力しているのは廃棄物の削減とサステナビリティイベントの企画・実行だ。

「大型商業施設ならではの“集客力”を生かして、多くの来館者と共にサステナビリティ活動を実施し、SDGsの意義を地域に伝えていくことに注力した」(黒田)

テナントを対象にしたゴミ分別研修を実施し、リサイクル率を向上させた 画像:JLLリテールマネジメント

2019年のリサイクル率は51.3%だったが、2023年(1-7月)は70.5%を達成

廃棄物削減

廃棄物を削減するために注力しているのはリサイクルの徹底だ。黒田は「共用部から出る廃棄物の量は全体のごく一部であり、テナントからの廃棄物量をいかに削減するかが求められる」と指摘する。具体的には、軟質系プラスチック類や紙類のリサイクルをテナントと協働で推進。2019年のリサイクル率は51.3%だったが、2023年(1-7月)は70.5%を達成。今後は市原市が推進するポリスチレンケミカルリサイクル事業に参画予定だ。

「廃棄物削減については温度差があるものの、キーテナント主体で積極的に取り組んでいるケースが多い上、サステナビリティという世界的なトレンドに反対するテナント自体少なく、施設全体で取り組むのは比較的容易だった」(黒田)

利用客参加型のSDGsイベントウィーク「ユニフェス」 画像:JLLリテールマネジメント

サステナビリティイベント

大規模施設ゆえエネルギー消費量、廃棄物量は一般家庭に比べて圧倒的に多いことから、省エネ・廃棄物削減に取り組んできたが、黒田はこれらの取り組みを「大型商業施設だから『やるべきこと』」と認識している。

一方、2021年から本格的に実施することになったサステナビリティイベントは「大型商業施設だから『できること』」と位置付けている。

「施設単体でみれば確かに巨大だが、市原市の全世帯と比較すると電気使用量はわずか2%程度。決して小さくないが、12万世帯を数える市原市全体でみれば、その影響力は微々たるものに過ぎない。施設単体のサステナビリティ活動では限界があると痛感し、買物客や地域等、より多くのステークホルダーを巻き込んだほうが推進力が生まれるとの結論に至った」(黒田)

そうした考えのもと、企画されたのがサステナビリティイベントだった。年間500万人超(延べ人数)が来館する商業施設ならではの集客力を生かし、サステナブル活動の重要性を広く啓蒙するべく、2021年にはSDGs関連イベントを約20企画・実施。

それらを実施する中で得られた知見を活かして、2022年4月には、利用客参加型のSDGsイベントウィーク「unimo for SDGs Unifes(以下、ユニフェス)」を立ち上げた。開催時期はゴールデンウィーク、シルバーウィーク期間の年2回、継続して行われている。地元生産者によるマルシェ、子供たちのリユース精神を育むキッズフリーマーケット、海の環境教室、職人による木工教室、海外に届ける学用品回収など、買物客と地域、企業、世界が繋がるためのタッチポイントを生み出した。

なかでも、発展途上国の子供たちへ寄贈する学用品回収イベントには計667個のランドセルが集まった。黒田は「SDGsに対する熱意に圧倒された」と、参加者の意識の高さに舌を巻く。

学用品回収イベントでは600個超のランドセルが集まった 画像:JLLリテールマネジメント

また、2023年6月には、企業と協働し、子供向けSDGs学習イベント「unimo SDGs Challenge School サステナシップ」を立ち上げた。SDGs活動に取り組む企業が毎月1回開催する子供向けの“学びの場”だ。「竹害のアップサイクル体験」や「地雷疑似体験」等、子供たちが“体験”を通じて自発的に学びを得る機会として、父兄からも好評を博している。
 

サステナビリティが商業施設にもたらすリターン

サンゴを人工繁殖する企業の取り組みに注目する子供たち。サステナビリティイベントは将来のSDGs活動を担う子供たちへの啓もう活動の側面もある 画像:JLLリテールマネジメント

前述した通り、当該施設は不動産ファンドに組み込まれた“投資商品”としての側面があり、サステナビリティへの取り組み…特にイベントに対する投資をどのように考えているのだろか?

黒田は「サステナビリティイベントはいわゆる販促活動の一環であり、その成果は集客人数で評価される。集客効果を考えれば従前から行われていたキャラクターショーでもいいのだが、サステナビリティイベントのほうが集客効果に加えて参加者の高い満足度を享受できている」との認識を示す。例えば、ユニフェスは2年間で4回開催したが、参加者数は2,500名超。事前予約制の体験イベント・教室は告知開始から応募が殺到。わずか1日で締め切りに達したという。

「サンゴを人工繁殖させる技術をもつ企業に参加してもらったが、参加者が後日手紙を送り、実際にラボに招待される等、より発展的な活動に繋がっている。こうした役割を担えるのは郊外型の大型ショッピングセンターならではの特権であり、子供たちが将来を考える良いきっかけづくりになることを期待している」(黒田)

unimoちはら台のSDGs特設ページを見る
 

商業施設のサステナビリティ化に寄与するJLLリテールマネジメント

unimoちはら台の全景。多くの買物客が集う大型商業施設だからこそできるサステナビリティ戦略を実践 画像:JLLリテールマネジメント

不動産投資市場においてサステナビリティ化はもはや避けては通れない喫緊の課題

JLLがグローバルで実施した調査によると、2021年の段階で「サステナビリティ戦略がテナント入居率・定着率・賃料を向上させ、全体的な不動産の価値向上に繋がる」と回答した不動産投資家は73%にのぼる。こうした環境意識の高まりは加速しており、環境先進国である欧州を中心に、サステナビリティ対策を怠っている不動産は投資対象から外れつつあるという。不動産投資市場においてサステナビリティ化はもはや避けては通れない喫緊の課題となっている。

そうした中、unimoちはら台は多種多様なステークホルダーを抱える大型商業施設として先進的なサステナビリティ施策を実践することで、不動産としての評価も高めてきた。具体的には、2022年にグリーンビルディング認証制度「DBJ Green Building認証」において評価ランク「4つ星」を取得した他、同施設を含めた不動産ファンドがGRESBリアルエステイト評価において既存ポートフォリオに関する評価である「GRESBスタンディング・インベストメント・ベンチマーク」で最高評価となる「5スター」を取得したことが挙げられる。

GRESB(グレスビー)の解説記事を読む

不動産の価値向上には効果的なサステナビリティ施策を実現するための企画力と実行力が必要不可欠だ。事業用不動産セクターの中でも環境対策が遅れているとされるリテールセクターにおいて、サステナビリティの先進的な取り組みを行っているJLLリテールマネジメントは不動産価値を高めるベストパートナーといえるだろう。

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連絡先 黒田 雅裕

JLLリテールマネジメント unimoちはら台 支配人

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