グローバル不動産マーケットの展望
不確実性が意思決定を遅らせ、市場の活性化を鈍らせる
多くの国でインフレは収まる気配がなく、利上げが続き、労働市場は軟化。そして、銀行業界の経営悪化がボラティリティに拍車をかけるなど、厳しい経済状況が続いている。これを受け、テナント各社はオフィス戦略に関する意思決定を保留するなど、ディフェンシブな戦略に移行し始めている。また、長引く不透明感や借入コストの上昇は、投資意欲に影響し、投資市場の阻害要因となっている。
オフィスセクターは、2023年第1四半期に経済的逆風の影響が高まり、世界全体の賃借契約面積は前年同期比で18%減となり、米国・欧州・アジア太平洋の3地域すべてで減少となった。第1四半期は、北米で入居率低下が加速したが、欧州とアジア太平洋地域ではネットアブソープション(吸収需要)がプラスとなった。物流セクターも取引の鎮静化が見られ、米国と欧州では、テナントの意思決定が長引いていることが響いて賃借契約面積が減少した。
しかし、インフレ率低下が進み、利上げの打ち止めが視野に入っており、年末に向かって状況は改善する見通しである。2023年は低成長が予測されるが、それでも前期中の予想を上回る見通しだ。
主要都市の不動産マーケット動向
注目を集める金利と債券市場
2022年に顕著になった市場に対する圧力は2023年も継続する見通しだ。第1四半期は価格発見が続き、先行き不透明感によって意思決定が遅れ、投資活動の妨げとなった。目下の利上げサイクルを背景に、米国に端を発し、後に欧州にも広がった銀行の経営難によって不動産向け融資のボラティリティがますます高まっている。こうした要因は、世界のほとんどの市場で貸し出し基準の引き締めにつながっている。一方、多様な貸し手がスポンサー、セクター、アセットの質に重きを置き、積極的に事業展開している。
セクター別の景気循環・長期見通しは依然として濃淡があり、投資家が長期的な戦略を策定し、ポートフォリオの組み換えに踏み切る中、成長セクターを選好する投資スタンスが強まっている。この結果、産業用・物流不動産や居住用不動産セクターを重視する姿勢が継続する。質の高い商業施設は、成長志向の小売業者の間で需要が高く、ホテルは、これまで鬱積していた個人旅行需要や増加傾向にある団体・ビジネス旅行需要の恩恵を受けている。オフィスセクターでは、ファンダメンタルズが悪化し、買い手側にも厚みがないままで、不動産市場全体から見ると当該セクターは出遅れ感が続いている。背景には、オフィスの将来性に関わる構造的な課題がある。
市場の混乱が悪化し、流動性に制約が生じている一方、融資市場、取引市場とも活発な動きが続いているものの、依然として経済的リスクは高いままだ。
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