グリーンデータセンターとは?実現
の鍵を握る「液体冷却」に世界が注目

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オンラインサービスの普及などを受けてデータセンター需要が急拡大している。一方、施設内に保存したサーバーを常時冷却する必要があるデータセンターにとって省エネ化が喫緊の課題となっている。環境に配慮した「グリーンデータセンター」が待望される中、実現の鍵を握る「液体冷却」が世界的に注目を浴びている。

2024年 03月 28日

本稿では、データセンターの喫緊の課題となっている省エネ施策として、世界的に注目されるグリーンデータセンターと液体冷却について言及しています。

 

なお、JLLではデータセンターに関する様々なサービスを一気通貫で提供しています。ご興味にある方は下記サービスページをご覧いただくか、情報収集・質問などございましたら下記フォームからお問合せください。

JLLがアジア太平洋地域13カ国で実施したアンケート調査では、今後2年間でデータセンターが解決すべき最優先課題として「サステナビリティと社会的責任の追及」を挙げている

クラウドサービスに代表される多種多少なオンラインサービスの利用者が世界的に急増している中、足もとでは生成AIの爆発的なムーブメントが勃興。データ通信におけるインフラ施設となるデータセンターに対する需要が飛躍的に高まっており、新たな不動産投資先として世界的に耳目を集めている。

一方、データセンターの開発件数が伸びることで消費電力の急激な増加を招いており、サステナビリティの観点からデータセンター開発に対する環境規制を実施する国・地域も存在する。

JLLが2022年にアジア太平洋地域13カ国のデータセンター管理者500名超を対象としたアンケート調査によると、今後2年間でデータセンターが解決すべき最優先課題として「サステナビリティと社会的責任の追及」を挙げている。

また、JLL日本では2022年1月に脱炭素化に向けて動き出すデータセンター市場に関するコラムを発表しており、世界的に強まるデータセンターの環境規制についても解説している。

グリーンデータセンターとは?

グリーンデータセンターとはサステナブル社会に適合した環境配慮型のデータセンターを指す

不動産におけるサステナビリティの重要性はこれまで以上に高まっているなか、データセンターにとって、いかに消費電力を抑えるかが喫緊の課題となっている。

そうした中、注目を集めているのが「グリーン化」されたデータセンター…すなわち「グリーンデータセンター」だ。

サーバーの稼働電力のみならず、サーバーの発熱を抑えるための空調冷却が必要不可欠とされるデータセンターは膨大な電力を消費することになる。そして、生成AIのムーブメントに後押しされ、データセンターの消費電力量は右肩上がりを続けている。

そのため、主要なCO2排出源であるエンボディドカーボン(建設時の製造・運搬・解体に伴うCO2排出量)の削減が必要不可欠とされている。地球温暖化対策の一層の推進が望まれる現下において、高度な「省エネ対策=グリーン化」が求められているのだ。グリーンデータセンターとは、こうしたサステナブル社会に適合した環境配慮型のデータセンターだ。

データセンターのエネルギー効率を示す指標として「PUE(Power Usage Effectiveness/電力使用効率)」が存在する。データセンターにおける総消費電力量をIT機器の消費電力量で割った数値であり、IT機器のみに電力を使用していることを意味する1.0が最も効率的とされる。資源エネルギー庁の「データセンター業におけるベンチマーク制度」では目指すべき水準を「PUE1.4以下」としており、これが日本においてグリーンデータセンターであるかどうかを示す1つの基準といえるだろう。

グリーンデータセンター実現に向けて注目される液体冷却

高性能サーバーを冷却するための唯一実行可能な施策は現時点では液体冷却

グリーンデータセンター実現に向けた省エネ施策は多岐にわたるが、主な手法として①サーバーの使用電力の抑制、②サーバー冷却システムの省エネ化、③再生可能エネルギー導入が挙げられる。

そうした中、世界的に注目を集めているのが空調冷却システムに代わる「液体冷却」だ。液体冷却には次のような手法がある。

液体冷却の種類

  • 直接液体冷却…サーバーを液体で直接冷却する手法

  • ハイブリッド液体冷却…空気と液体を組み合わせた手法

  • 浸漬冷却…サーバーを液体に浸す手法
     
グローバル動向

世界的なデータセンター投資家・オペレーターであるエクイニクスは2023年12月、世界45都市超100カ所超のデータセンターに先進的な液体冷却技術を導入すると発表した。同じくDigital Realtyは2023年8月、空気支援液体冷却技術を利用し、ラックあたり最大70 kWをサポートする高密度コロケーションサービスの導入を発表している。

また、世界的な半導体大手のNVIDIAが従来型サーバーに比べて発熱量・消費電力量が多いGPU(画像処理半導体)に対して液体冷却専用の次世代サーバーを設計していると一部で報道された。

国内動向

日本でも液体冷却による省エネ化を目指す動きは顕在化している。

NTTデータは2022年6月、液浸冷却方式を採用したデータセンター冷却システムを構築し、実証実験において従来型データセンターと比較して消費電量を最大97%削減(推定PUE1.07)できることを確認。さらに、2023年6月、既存データセンターで活用可能なラック型液浸冷却システムを三菱重工業と構築したという。

また、KDDI、三菱重工業、NECネッツエスアイは2023年2月、液体でIT機器を冷却する液浸冷却装置の大規模構成での利用を想定した実証実験を行い、従来型データセンターと比較し、サーバー冷却のために消費電力を94%削減、PUE1.05を実現したと発表している。

JLL ワークダイナミクス 地域データセンター プラクティス リード アンドリュー・グリーンは「データセンターの開発においてラック密度が70kWを超える見込みであり、物理的に空冷の効果が見込める限界値に達している。高性能サーバーを冷却するための唯一実行可能な施策は現時点では液体冷却…つまり半導体チップへの直接冷却や浸漬冷却が挙げられる。いずれにせよAI時代を迎える現代において液体冷却は避けては通れない道」との見解を示す。

液体冷却による多様なメリット

投資家やデータセンターオペレーターにとって、液体冷却によって達成されるPUEの改善効果は大きなメリットとなる。冷媒を冷却するために必要なエネルギーを抑えることができ、大幅なコスト削減に寄与するためだ。

さらに、液体冷却の導入メリットは省エネ・コスト削減だけにとどまらない。グリーンは「液体冷却により空冷用の設備が不要になり、貴重な床面積に余裕が生まれ、データホールの追加容量に転換できる」と説明する。

また、浸漬冷却を導入することで天井高の要件を緩和できるというメリットも見逃せない。海外では既存データセンターの標準的な天井高は6mとなるが、4m程度で収まるという。その一方で、床荷重の負担増を考慮する必要がある。グリーンは「同じ床面積内に同規模のIT機器を設置した場合、液体冷却システムは1㎡あたりの重量が12-15kPa(キロパスカル)から、少なくとも20kPaまで増加する」と説明する。

サステナブル社会への適合が求められている

グリーンデータセンターは環境規制が強化されたサステナブルな近未来に対するデータセンターのあるべき姿といえる

液体冷却に関する研究開発が進むことで、新規データセンターは液体冷却をより容易に採用できる半面、インフラストラクチャに制約がある既存データセンターで空調冷却から液体冷却に切り替えるのは容易ではない。グリーンは「つまり100%AI仕様にアップグレードできる可能性が低い」と指摘する。

稼働中の既存データセンターにおける大きな変化は運用リスクが高く、慎重に管理する必要がある。データセンターオペレーターはレジリエンス(回復力)の観点から、アップグレードに向けた各種取り組みによってデータセンターサービスを停止させる可能性があることを考慮する必要があるだろう。

グリーンによると、データセンター業界は一般的に「Bleeding edge(信頼性リスクがある開発途上の最先端技術)」ではなく「Leading edge(確立された最先端技術)」を選好しがちだという。データセンターに求められる安全性・信頼性を担保するためには、多少保守的ながらも実績のある既存技術を導入する傾向が強いようだ。これも液体冷却の普及拡大を遅らせる1つの要因になっている。

しかし、AIに代表されるテクノロジー業界の日進月歩に対して、データセンターは迅速に適応していかざるを得なくなる。グリーンデータセンターは環境規制が強化されたサステナブルな近未来に対するデータセンターのあるべき姿といえるのではないだろうか。

JLLが提供するデータセンター関連サービス

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