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遊休不動産の活用事例からみる収益化の要素

コロナ禍をはじめとする社会的インパクトのある出来事を機に、不動産の需要は大きく変化してきた。テナント需要が低下した、いわゆる遊休不動産をいかに再生するべきか。変化する嗜好や需要に適応させていくことが求められている。

2021年 10月 20日
コロナによる変化で増加する遊休不動産

劇的な変化が社会的なニーズを一変させ、不動産トレンドも大きく変化する。東日本大震災によって建物の耐震性に注目が集まり、旧耐震のオフィスビルのテナント需要が低下したのが象徴的だが、コロナ禍も同様だ。新型コロナ感染拡大防止の観点から、ヒトとの接触を避けた新しい生活様式は、不動産の遊休化という問題を顕在化させた。JLLがまとめた不動産の資産価値向上に関するレポートでは、アジア太平洋地域において、コロナ禍でのニーズの変化により老朽化・価値減少した物件の賃料水準は最新物件よりも最大で60%低く、アフターコロナではその差がさらに大きくなるというデータが挙げられている。既存の収益物件は、コロナ前のような価値を生み出さなくなっており、現状に適応させるため、デザインの改善やビル改修等の資産最適化が今後は必須の時代となってくるだろう。レポート内で示したJLLの分析によると、オフィスはフレキシブルオフィス等の従業員のウェルネスを重視し、働き方に寄り添った空間への最適化、物流不動産はテクノロジーを活用したハイテクな物流施設への置き換え等、それぞれの遊休不動産タイプに沿った最適化の方法が提示されている。日本企業における遊休不動産の最適化は少しずつ認知され始めているが、欧米グローバル企業と比較すると遅れを取っている。遊休不動産への対応は、経営戦略的視点だけでなく企業全体に影響を与える要素となるだろう。

既存の収益物件は、コロナ前のような価値を生み出さなくなっており、現状に適応させるため、デザインの改善やビル改修等の資産最適化が今後は必須の時代となってくるだろう

遊休不動産とCRE戦略

遊休不動産の価値を向上させるプロセスにおいて、CRE戦略の概念は必須といっても良い。企業や資産の価値を様々な視点から見直し、最適化を行うことで不動産投資の効率化を図るCRE戦略は、需要が見込めなくなった土地や資産である遊休不動産の活用・再生に大いに役立つ。例えば、有効活用しにくい土地にあるオフィスや居住不動産、商業施設等の資産について、社会情勢や事業の安定性を調査、どのアセットタイプが条件に適応し価値を最大化させられるかについて何通りものシミュレーション、専門知識を活用した売却等、手法は多岐にわたる。遊休不動産は、企業経営戦略に影響する重要な課題であるため、短期的な最適化ではなく、長期的な視点で不動産ポートフォリオを根底から分析、改善、管理・運用、全体の最適化を行うことが本質的な資産価値の向上に繋がってくるだろう。

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アセットタイプ別の遊休不動産の収益化
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トレンドに適応したオフィススペースへの最適化

アセットタイプによって、トレンドや価値向上の要因は異なるからこそ、対象となる不動産クラスの強化戦略を把握しておくことが重要となる。オフィスビルは、老朽化が進む物件の空室率の上昇と賃料下落の傾向がある中で、資産の向上を早急に行うことが求められる。オフィスの価値を改めて生み出す要因として「健康ウェルネス」、「ヒューマンエクスペリエンス」、「サステナビリティ」、「テクノロジー」の要素が挙げられる。コロナ禍や環境問題等の社会的背景からこれらの新しいトレンドが生まれている。また、拡大傾向にあるフレックススペースは柔軟な働き方が可能となるだけでなく、初期投資や業務開始までの時間を抑えることができるため、様々なニーズに応えている。JLLリサーチによると、現時点でオフィススペース全体の5%を占めるフレックススペースは2030年までに最大で30%まで拡大すると見通されている。その他にもタッチレス技術の導入等、アフターコロナに対応した新しいトレンドをキャッチし、俊敏に対応していくことが資産の陳腐化防止や遊休不動産の再生・活用に直結してくると考えられる。

コロナ禍で進化する商業施設のテナント構成の最適化

商業施設は、コロナ禍で大きな変化のあったアセットタイプの一つである。ECの発展により、アジア太平洋地域の小売売上高全体の20%がECとなっており、今後5年間で年間平均成長率が10%以上維持されると予測されている。消費者動向の変化に伴い、テナント構成も変わり、コワーキングスペースや幼稚園等の教育施設を誘致するショッピングモールが増加している。様々なテナントが共存する場となっているからこそ、商業施設の共用スペース等の衛生面強化やセンサー・不動産テックによるテクノロジーを駆使した自動化で、効率化や省エネ対策に繋げ、資産価値を高めていく必要がある。

都心の遊休地の活用で収益化に寄与した成功事例

遊休不動産の活用は、社会情勢の変化等、多角的な視野が必要となってくるため専門知識を持つパートナーの存在は不可欠

遊休不動産のタイプは様々で、専門的な知識と経験をもとにシミュレーションを行い、最適な突破口を見出し、資産の価値向上に繋げるケースが多く存在する。都心一等地という立地にもかかわらず、傾斜地であることや建設途中の基礎部分が残っていることが要因で新規開発が不可であった未活用の土地の最適化を行い、豊かな自然環境という点を活かし高齢者向けの賃貸住宅を開発し、収益化に貢献した成功事例もある。遊休不動産の活用は、社会情勢の変化等、多角的な視野が必要となってくるため専門知識を持つパートナーの存在は不可欠となる。

変化の激しい時代だからこそ、遊休不動産となってしまう前の早期の最適化が必要であり、この行動が所有者や企業の今後を決める。先手の行動により”遅すぎる最適化”を回避し、収益サイクルを活発に保つことでアフターコロナという未来に備えることができるのではないだろうか。

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