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ワークプレイス戦略推進には社内コラボが不可欠

企業のワークプレイス戦略を実務担当するのは総務部(CRE部門)であることが多いが、もはやCRE部門単独ではワークプレイス戦略を効果的に推進することが難しくなってきている。人材獲得や生産性向上といった事業戦略の観点から財務部や人事部との連携は必須となっている。

2019年 10月 24日

日本企業のCRE部門は発展途上

JLLではワークプレイス戦略についてグローバルで企業アンケートを実施し、その結果を隔年で発表してきた。新たに発行した2019年版ではグローバル企業の回答数561件、日本企業の回答数40件を数えた。その結果、グローバル企業のCRE部門は他部門とのコラボレーションを進め、ワークプレイス戦略のさらなる推進を目指す傾向が強く見られる半面、日本企業ではその割合が低いという結果になった。

アンケート調査によると、今後3年間でCREの重要性が増すと考える割合はグローバルFuture Fit企業は74%、グローバル企業65%、日本企業48%となった。日本企業はグローバルと比べて、まだまだCREの重要性に気付いていない企業が多いと考えられる。ちなみに「Future Fit(未来に適合した)企業」とは、高度なCRE機能を構築・機能し、ワークプレイス戦略を推進している企業であり、その数はグローバルでも希少な存在だ。

社内コラボの重要性

続いて、CREが企業に戦略的付加価値をもたらす上での制約事項について質問したところ、日本企業の回答では「CREマンデート(権限)の強度」、「文化的障壁」がグローバル企業に比べて高い水準を示した。前者は43%(グローバル29%)、後者は38%(グローバル30%)。一方、グローバル企業で割合が高いものの、日本企業で制約事項として割合が低かったのが「テクノロジーへの投資」「他の事業部門との統合」であった。前者は18%(グローバル32%)、後者は13%(グローバル25%)。日本のCREが事業に付加価値をもたらすにはグローバルとは異なる独自の課題克服が必要となり、制約が少ない点から徐々に改革を進めていくべきだろう。特に「他の事業部門と統合」については多くの日本企業がその重要性に気が付いている。今回のアンケートでは、今後3年間でコラボレーションが増すと予想する部門として最も割合が高かったのは「IT」部門であり、70%を占めた。続いて「経営層」で58%、「経理」50%、「人事」43%、「購買」33%となり、社内コラボを望む考えが浮き彫りになった形だ。

昨今、企業のワークプレイス戦略として、執務空間以外にレクリエーションスペース等の共有スペースを充実させる事例は少なくないが、こうした取り組みが人材採用で有利になり、既存従業員の長期安定雇用を実現することを人事部から経営層に説明し、理解を得ることで実際にワークプレイス戦略が動き出す。半面、人事部が従業員の執務環境に対する満足度を向上させるためには、人事部単独での取り組みでは限界があり、CRE部門と連携する必要がある。本レポートの制作責任者であるJLLアジアパシフィック コーポレート・ソリューションズ・リサーチヘッド スーザン・サザーランドは「少子化等の影響で人手不足が顕著になり、人材獲得競争が激化する日本では、従業員が快適に働くことができ、ひいてはイノベーション創発に繋がる刺激的なワークプレイスを整備していることが人事部にとって効果的な人材獲得策となっている」と説明する。

財務、人事との連携が求められる

一方、CRE推進を妨げる制約要因として「CREマンデート(権限)の強度」は根深い課題だ。JLLでは過去4回、CREに関するアンケート調査を実施し、それぞれレポートを発表してきたが、日本企業はCRE部門を事業部として独立させず、総務部の1つの業務として本腰を入れてこなかった。一方、今回の調査で定義づけたFuture Fit企業ではCRE部門の責任者は経営層であり、特に財務責任者であり、CRE分野においても投資権限を有するCFOとCRE部門が緊密に連携している事例が見られた。ワークプレイスについては依然として賃料が発生するコストセンターとしての意識は根強く、コスト削減の努力は各企業で引き続き行われているが、近年は優秀な人材を採用するためにワークプレイス環境への投資に注力するケースはFuture Fit企業において少なくない。しかし、日本企業はCRE部門とCFOのレポートラインを確立しているケースはまだまだ少数であり、この点でも社内のコラボレーションは極めて重要になるようだ。

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