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コロナ禍でもフレキシブルオフィスの需要は衰えない

「フレキシブルオフィス」と呼ばれる外部の利用者向け共用型オフィスがコロナ禍で生じた様々なニーズの受け皿となっている。日本リージャスホールディングス 代表取締役 西岡 真吾氏にコロナ禍におけるフレキシブルオフィスの影響について聞いた。

2021年 02月 22日

開業時に高稼働を実現したフレキシブルオフィス

「開業時の稼働率がここまで高まったのは予想外だった」

2021年3月、東京都港区に新規開業するコワーキング型のフレキシブルオフィス「SPACES赤坂」の高稼働を受けて、施設運営会社の日本リージャスホールディングス 代表取締役 西岡 真吾氏は驚きを隠さなかった。

「SPACES赤坂」は2020年11月に竣工した「ヒューリックJP赤坂ビル」3階-6階の計4フロア、床面積2,185.1㎡の大型コワーキングスペースだ。7階、8階には日本リージャスの親会社であるTKPが運営する貸会議室「TKP赤坂二丁目カンファレンスセンター」が入居。計6フロアをTKPグループが借り受けることになる。

入居予定の企業の中には、コロナ禍においてテレワークが進んだグループ企業の都内オフィスの立地や規模を見直し、危機的な状況の中でもグループ企業全体の推進力を低下させないようにSPACES赤坂を拠点に再編したいとするこれまでになかった新しい動きも見られた。

またコワーキングスペースは、多種多様な利用者の交流がイノベーションを産むというメリットの一方で、利用者がフリーアドレス席を使い回すというイメージが定着しており、コロナ禍では利用者の心理的不安につながる。そうした不安を解消するべく、同社は大手家具メーカーと連携。ソーシャルディスタンス用のオフィス家具を新規開発し、新規契約者が当該オフィス家具を購入する場合、契約者1名あたり10万円-20万円相当額をオフィス利用料金から差し引くキャッシュバックキャンペーンを実施(2021年3月末まで)することで、従業員やその家族の心理的な不安を解消した。コロナ禍を逆手に取った施策が奏功した形だ。

全国170ものフレキシブルオフィス・ネットワークが強みに

日本リージャスの創業は1998年。北海道から沖縄まで全国170もの拠点ネットワークを有し(2020年12月現在)、日本のフレキシブルオフィス市場を牽引してきた。特長となるのが立地や施設規模等に応じてコンセプトの異なる4つの施設ブランドを展開している点だ。

全国の主要都市の主要駅至近のハイグレードなオフィスビルへの出店を主とし、多彩な個室型プライベートオフィスを提供する「Regus」、広いビジネスラウンジやカフェスペース等が充実し、入居者同士のコミュニケーションを醸成する設備・サービスに注力している大型のコワーキングスペース「SPACES」、無人運営でコストを抑えながら機能的かつ高い利便性を求める起業家や支店・営業所開設を想定した個室タイプ中心のシェアオフィス「Openoffice」、駅や空港内には「Regus express」を展開する。

同社のフレキシブルオフィスが注目される理由は何か。企業のオフィス戦略に詳しいJLL日本 オフィス リーシング アドバイザリー事業部 シニアマネージャー 柴田 才は「競合他社にはない豊富な施設ネットワークがコロナ禍で変化した働き方に適していたため」と推測する。

フレキシブルオフィスならではの長所

フレキシブルオフィスは、レンタルオフィス、サービスオフィス、コワーキングスペース、またそれらのオフィスを総称して使われるシェアオフィス、本社以外の場所で好きな時に立ち寄って使うことができるサテライトオフィス等、外部の利用者向けに提供する共用型オフィスを指す。IT環境やオフィス家具、受付サービス等、執務環境が整備されており、一般的なオフィスの賃貸借契約に比べて短期間の利用が可能。内装造作工事や原状回復工事が基本的に不要となり、初期投資と業務を開始するまでの時間を抑えることができる。

新型コロナ感染防止を目的に在宅勤務などのテレワークを柔軟に取り入れる企業が増加した結果、コアオフィスへの出社率が低下し、オフィスの余剰スペースを持て余すようになった。「テレワークでも業務活動に支障はない」とする声も聞こえるようになり、都内Aグレードオフィスの空室率も上昇傾向にある。しかし、フレキシブルオフィスはその特長からコロナ禍で生じた様々なニーズの受け皿となっているのだ。

マーケットが落ち着くまでの一時避難場所

例えば、今回のコロナ禍のようにオフィスマーケットの将来性が不透明な場合、オフィスを移転する際に中途解約が難しい定借で契約するのはリスクが高い。そこでマーケットが落ち着くまでの間、フレキシブルオフィスに一時的に避難(移転)する企業が増えているという。オフィス家具やインターネット環境等が完備され、内装工事を行う必要がないため、一般的なオフィスと比べて初期投資を抑えられる。

地方、ワーケーションニーズへの対応力

BCP(事業継続計画)の観点から、業務の一部機能を地方都市へ移動させる地方分散ニーズや、ワークとバケーションを組み合わせた「ワーケーション」といったコロナ禍ならではのオフィスニーズの受け皿にもなっている。西岡氏は「利用者にヒアリングしたところ『見ず知らずの場所に1人で行くのは精神的な負担が大きい』と聞く。滞在先のフレキシブルオフィスで働くことで地域のコミュニティにも参画できる」と説明する。

分散型オフィス戦略の実現

日本リージャスのフレキシブルオフィスは都市圏近郊にも施設展開しており、サテライトオフィス需要にも対応している。また、すべての運営施設を対象にビジネスラウンジ、コワーキング、個室型オフィスを選択利用できる「メンバーシップ」や「バーチャルオフィス」の需要も伸びている。これまで効率化を重視し、都心のコアオフィスに業務機能を一極集中させていたが、コロナ感染防止の観点から、コアオフィスとフレキシブルオフィス、在宅勤務を組み合わせた「分散型オフィス」が広まりつつある。そうした中、小規模かつ柔軟に活用できる同社のフレキシブルオフィスの需要が高まっているのだ。

景気後退期でも需要が見込めるフレキシブルオフィス

西岡氏は「世界金融危機や東日本大震災等、景気後退期を何度も経験してきたが、当社都合で拠点を閉鎖したことは一度もない」と強調する。通常、オフィス需要は好況時に伸び、不況になると低下するのが一般的だが、同社の事業モデルは縮小移転等の借り換え需要が増える。西岡氏は「現在は好景気から景気後退期へと需要が入れ替わる途中段階」との認識だ。

大口テナントが多い都心部のフレキシブルオフィスは若干コロナ禍の影響を受けたというが、代わって都市部近郊や地方都市の施設の需要が伸びている。西岡氏は「不景気の中でもパフォーマンスは維持できている」と力を込める。

今後は親会社である貸会議室大手のTKPと連携し、フレキシブルオフィスと貸会議室のダブルブランドを主体に新規拠点の開発に注力するという。西岡氏は「短期利用の場合、オフィス移転時の費用を抑えることを最優先にする利用者は少なくない。TKPの貸会議室をオフィス替わりとして利用してもらうことで、RegusやSPACESに比べて費用を抑えられる」とし、より柔軟で利便性の高いサービスを提供していくという。

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フレキシブルオフィスはこれまで以上に活用される

JLL日本が発表したレポート「経営層に聞くニューノーマルな働き方に向けた選択とは⁉」では「with/afterコロナの働き方を実現するには、会社としてどのようなサポートを考える必要があるか」との問いに対して、「サテライトオフィス(自社・外部コワーキングスペース)の設置」との回答が43.6%に及んだ。フレキシブルオフィスの更なる活用が進むことを示唆している。

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