記事

ワークプレイスが紡ぐ未来の働き方

未来の働き方を語る上でワークプレイスの存在は欠かせない。コロナ禍でリモートワークを体感し、改めてオフィスという場の大切さを学んだからこそ、従来の働き方には戻ることはないと考えられる。では、アフターコロナという未来の働き方を実現するには、どのようなワークプレイスが理想なのだろうか。

2021年 05月 25日

ワークプレイスと働き方の変化

働く場所といえば「本拠地オフィス」という概念が一般的であったが、時代の流れやワークライフの価値観が変化したことにより、様々な"場"を選択肢とする広義的な「ワークプレイス」へとアップデートされた

新型コロナウイルス感染防止の観点からリモートワークが推奨される中、「自宅で業務に集中できない」、「会議での偶発的なコミュニケーションがなくなりイノベーションが生まれにくくなった」、「雑談がなくなり孤独を感じやすくなった」等の理由により、オフィスやサードプレイスでの業務を望む従業員の声を聞くようになった。このような背景と現状を経て求められているのは、柔軟かつ多様な働き方を可能とするワークプレイスであり、多くの企業がアフターコロナにおける働き方の成功例を作るべく行動を起こし始めている。例として挙げられるのがコロナ禍により関心度の高まったABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)であり、柔軟性・多様性を軸とした執務環境の構築に欠かせない考え方としてワークプレイス戦略へ取り入れている企業も少なくない。

 

購読

さらにインサイトをお探しですか?アップデートを見逃さない

グローバルな事業用不動産市場から最新のニュース、インサイト、投資機会を受け取る。

コロナ禍で浮き彫りとなったワークプレイスの課題

従業員の未来の働き方を導くワークプレイスを考える上で、日本特有の現状課題を理解しておくことが重要ポイント

JLLが世界中のオフィスワーカーを対象に実施した調査レポートで、急速に浸透したリモートワークにより、在宅勤務を経験したオフィスワーカーの46%が「生産性の高い仕事ができた」と回答している半面「オフィスに戻りたい」が58%という半数以上の回答が得られた。日本のオフィスワーカーがオフィス回帰を望む理由として「業務に集中できる環境(35%)」がトップに挙がっている。他国で一番多い理由として挙げられた「人との交流や同僚との付き合い」(アジア太平洋地域では39%、日本では34%)との違いが興味深く、日本の住環境の問題が背景にあると考えられる。その他にも子育てや介護等のプライベートな部分との線引きができず、業務に集中できないという現状も推測できる。従業員の未来の働き方を導くワークプレイスを考える上で、このような日本特有の現状課題を理解しておくことが重要ポイントとなってくるだろう。

経営層が考えるオフィス改革とは?

オフィスワーカーの現状意識に対し、企業の経営層はどのような考えを持っているのだろうか。企業の経営層を対象に実施したJLLの調査では、オフィス改革における重要要素として「業務効率の向上」、「コスト削減(オフィス面積縮小など)」、「立地改善」の順で関心が寄せられているというデータが確認できた。これらは従来から重要視されていた要素であるが、企業規模の大きい集計データから推測できるインサイトとして、収益ファーストよりも従業員のエンゲージメントを高めることで、一人ひとりの潜在能力を最大限に発揮させるという経営層の持続的かつ長期的な視点があると読み解ける。この視点を実践していくには、オフィス戦略立案から入念なプロセスが必要となり、ひいてはプロジェクトを先導する人材の確保という課題に直面するだろう。その解決策として、オフィス改革に詳しい専門的知識を持つ外部パートナーの採用を選択肢として考える経営層も少なくない。


「経営層に聞く『ニューノーマルな働き方に向けた選択とは!?』」より抜粋出所:JLL

ワークプレイス改革について詳しく見る

アフターコロナを見据えたワークプレイスに欠かせない要素

従業員が行きたくなるような特異性を持つワークプレイスが今後さらに必要

柔軟かつ多様な働き方を実現するインフラ・テクノロジー

インフラ・テクノロジーは理想とする働き方を実現する上で欠くことのできない要素だ。JLLが実施したオフィス需要に関する調査レポートでもこれからのオフィス要素として、テクノロジーはワークプレイスの根幹ともいえる役割を果たすと述べられている。そしてインフラ・テクノロジーを整えるべく不動産テックの採用を検討する企業が増えてきており、未来の働き方への投資となるこれらの動向は、長期的な視点で多角的な効果が得られると考えられる。

健康で安全な環境づくりとウェルビーイング

新型コロナウイルス感染拡大により、健康であることの重要性が再認識され、人々が集積するオフィスという場を作る上で「安全衛生・健康管理」は欠かせない要素の1つとなった。これはオフィスビルのテナントが求める必要要素としても挙げられており、企業、従業員のみならずオフィスを取り巻くビルオーナーやステークホルダーにとっても重要であることが窺える。また、世界のオフィスワーカーへのアンケート調査からも見て取れるように、テクノロジーが発展した半面、ヒトはより本質的な繋がりを求めている。このインサイトを踏まえ、従前の当たり前のオフィスという価値ではなく、従業員が行きたくなるような特異性を持つオフィスが今後さらに必要となってくるであろう。

未来のワークプレイスを担うフレキシブルオフィス

広義で「働く場」を指すワークプレイスは「サードプレイス」の役割を担うフレキシブルオフィスも選択肢として取り込み、未来の働き方の実現に向けて着実に進化している。分散型オフィスを選択する企業は住宅地郊外や地方等、今まで思い付かなかったような場所へサードプレイスとしてフレキシブルオフィスを活用し、ニューノーマルな働き方に対応している。

時代によっての理想の働き方の概念は変化してきた。コロナ禍の今がその時ともいえる。だからこそ、短期的ではなく中長期的な視点で心身共に満たされたワークライフスタイルを実現するワークプレイスの模索が企業にますます求められるだろう。

ワークプレイス改革に関する記事を見る

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。