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これからのオフィス需要と求められる要素

with/afterコロナ時代における、企業のオフィス戦略のアップデートにより、オフィス需要を形成する要素も変化している。企業やオフィスワーカーの現状も踏まえ、これからのオフィス需要や必要とされる要素がどのようになっていくのか解説する。

2021年 02月 19日
ニューノーマル時代のオフィスワーカーの現状と今後

新型コロナウイルスの影響により世界中のオフィスワーカーの71%がリモートワークを経験したという調査結果が確認されており、世界でもかなりの割合のオフィスワーカーがニューノーマルな働き方を体験したといえる。

コロナ禍での状況変化により、週のオフィス出勤日数を減らしリモートワークと融合させたハイブリッドな働き方、サテライトオフィス活用でのリモートワーク、フルリモートワークなど、企業の様々なインフラを活用し、多様な働き方の選択肢が増えたのではないだろうか。それでは、リモートワークを経験したオフィスワーカーはどのようなことを感じているのだろう?調査レポートでは、グローバル全体でオフィス回帰を望むという回答が58%となっており、その理由として、「人との交流や同僚との付き合い」の社会的交流が多く挙げられた。この点は、ヒトが感じる本質的な要素であるからこそ、これからのオフィス戦略やオフィス需要で大事なポイントとなってくる。

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コロナ禍で変化するオフィス需要

企業の経営層が考えるこれからのオフィスへの対応

今後のオフィス戦略を考慮し、オフィス改善を考えている企業経営層も少なくない。企業の経営層を対象としたアンケート調査では、「with/afterコロナの働き方に伴い、自社オフィス面積は今後どのように変更すべきだと思うか?」という質問に対し「若干の縮小(80-90%程度)」(41.2%) 、「50-80%程度に削減」(18.4%)、「現状維持」(14%)など、既存オフィスの面積を変更しリノベーション実施もしくは現状維持という回答が76.4%となった一方で、「オフィスをなくす」との回答は1.6%と少数であることが判明した。この調査結果より、企業の経営層はオフィスありきの働き方を考えていること、また、既存のオフィススペースを最適化させたニューノーマルな働き方を策定していることが推測できる。

 

従業員が求めるオフィスの在り方

従業員は何らかの新しい形でのオフィス回帰を望んでいる可能性が高い

 

従業員の視点から見たオフィス需要はどうだろう。JLLが発表した「新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.3」では、オフィス回帰を望むようなデータがいくつか確認できた。リモートワークで高い生産性を問う設問では「より生産性が高い仕事ができた」と回答した日本のオフィスワーカーは21%にとどまった(アジア太平洋地域のオフィスワーカーの回答率は46%)。このデータより、従業員はリモートワークで効率的に働くことが厳しいと考えていることが窺える。また、リモートワークでの心理状態を問う設問では「自身の仕事に対して不安がある」という回答が45%、「常にプレッシャーを感じる状態にある」が41%と心理的な負担を感じていることがデータに反映されている。これらの結果から、従業員は何らかの新しい形でのオフィス回帰を望んでいる可能性が高いと考えられる。

レポート調査の結果から”新しい”オフィスの要素に直結するいくつかの回答が得られた。新しいオフィスに求める要素として、「高度に清潔に保たれ、消毒剤などの感染症予防も徹底されていること」が52%、「密にならないオフィス環境」が40%、「長時間にわたる対面での会議の削減」が39%と”安全衛生”が最重視されていることが分かる結果となっている。従業員の現状やこれからのオフィスの在り方に求める要素を見る限り、衛生的な面、そして精神的な繋がりを補填したウェルビーイングを構築する場へと変化していくと推測できる。

 

JLL「新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.3」から抜粋
 

オフィスの将来的な需要を形成する要素とは?

オフィス需要は、柔軟性を重視したリモートワークとのバランスを取ったハイブリッドな働き方を実現できる要素が不可欠

「場」の価値を再定義するリモートワーク

リモートワークは従業員に柔軟な働き方という利益を生み出したが、前述した調査結果からも社会的交流を求めているという理由で、長期的にリモートワークのみという考え方は懐疑的である。リモートワークを経験したからこそオフィスという「場」の価値を再定義する従業員がいる中、近い未来のオフィス需要は、柔軟性を重視したリモートワークとのバランスを取ったハイブリッドな働き方を実現できる要素が不可欠となってくるであろう。

ハイブリッドワークを実現させるフレキシブルオフィス

アフターコロナを見据え新しい形のオフィスを模索する企業が多い中、柔軟性の高いフレキシブルオフィス市場が急成長しており、「ハイブリッドな働き方を実現すること」を実施する企業が増えてきていると考えられる。JLLの記事「急成長前夜のフレキシブルオフィス市場」では、フレキシブルオフィスに関心が寄せられていることの背景に、コスト削減、機動性(準備プロセスの短縮等)、イノベーション/コラボレーション、広いエリアでの人材獲得が起因しているというインサイトが述べられている。本拠地とフレキシブルオフィス、在宅勤務の選択型の勤務形態やフレキシブルオフィスのみを採用する等、企業によってオフィス戦略は様々だが、フレキシブルオフィスはこれからの働き方を支える場として今後さらに拡大していくと予想される。

ニューノーマル時代に対応したオフィス再設計

新型コロナウイルスがきっかけでオフィス設計の重要要素が変化したことはいうまでもない。今回の出来事をきっかけに従業員の健康とウェルネスへの配慮はより一層強まり、オフィススペースの安全性を確保するための強化措置が講じられると考えられる。従来の島型レイアウトではなく、従業員同士の距離を十分に確保したソーシャルディスタンス対策、また、社会的交流を重視した空間づくりなど、ニューノーマル時代に適応したオフィス設計がこれからのオフィス需要を形成する必須要素となり、関心も高まっている。

重要度が増すオフィスのサステナビリティ化

前述したオフィスのウェルビーイングの構築は、SDGs達成の観点からも重要視されている。従業員へ配慮する要素だけでなく、環境問題への取り組みを考慮したオフィスの需要は、投資やブランディングの観点で評価が高くなりつつあることから、企業戦略としてオフィスのサステナビリティ化を図るケースが見られ始めている。グリーンビルディングやウェルネスオフィス等、新しい需要に対応した場が生まれている中、近い将来を見据え、戦略的な要素でオフィスを形成することがより一層求められているのではないだろうか。

これからのオフィス需要の多様化

理想のオフィス像もコロナ禍によって多様化している。従来は、都市中心部にオフィスを構えることが理想とされてきたが、地方への本社オフィス移転やサテライトオフィスの設置など「都市機能の分散化」というトレンドが加速し、郊外エリアや小都市での持続的な暮らしや働き方を理想とする考え方も生まれ、新しいオフィス需要の機会が生まれた。このような多様化の中でも、都市部でのオフィス需要は継続的であるが、急速なデジタル化によるオフィスビルのスマート化や都市テック(アーバンテック)、環境問題に配慮したサステナブルでインクルーシブな取り組み、そしてグローカリゼーションの考え方など、求められる要素は多様化すると考えられる。

オフィスという場はヒトに様々な影響を与え、働く上で欠かすことのできない事業インフラであるからこそ、企業は変化に対して迅速に適応していかなければならない。リモートワークとオフィス勤務というハイブリッドな働き方とバランスの要素を持ち合わせたオフィスへの最適化という課題が考えられる上で、これからのオフィス需要に注目したい。

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