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企業を強くする「戦略総務」とは?

働き方改革により、企業の在り方が問われる昨今、社内のコミュニケーション活性化や企業価値の向上など、内側から会社の価値を見出し、戦略的に改革していくことが求められるようになった。戦略的な企業改革を行う「戦略総務」について紹介する。

2020年 05月 11日

働き方改革により、企業の在り方が問われる昨今、社内のコミュニケーション活性化や企業価値の向上など、内側から会社の価値を見出し、戦略的に改革していくことが求められるようになった。戦略的な企業改革は総務が担うことが多いが、実際どれだけの担当者が理解し、「戦略総務」を実践できているのだろうか?

現代の企業に求められる「戦略総務」

従来の「総務」と「戦略総務」の違い

「総務」は従来、組織全体に関する事務や雑務を扱うこととされてきたが、それが今、時代の変化と共に「戦略総務」へと進化を遂げている。「総務」と「戦略総務」の大きな違いは、業務の効率性と専門性を高めることによって企業の組織力向上に繋げ、会社を内側から改革するためのアクションプランを積極的に行っているかに現れる。各部署から与えられる仕事を受け身でこなすのではなく、知恵とアイデア、そして現場力を活かし積極的に提案・実施、そしてアドバイスしていくことが「戦略総務」として求められているのだ。

「総務業務」から「戦略総務」へのタスクへ変化

総務の視点を生かしコミュニケーションを円滑にする「戦略総務」

各部署と日常的なコミュニケーションを取り、ハブともなる立ち位置で現状を俯瞰できる総務の視点は、企業を改革していく上で重要だ。昨今、ワークプレイス戦略として、レクリエーション等の共有スペースを充実させる企業が見られるようになったが、このような取り組みには総務が大きく関与している。企業の成長に伴う人員増員のため、メンバー同士の関係性が希薄になっていることにいち早く気付いたり、メンバーのモチベーション低下を察するなど、社内の変化に気付くのは総務であるケースが多い。その「気付き」をもとに、部署の垣根を越えて協力・情報共有できるコミュニケーションの場を設けるように提案するなどの働きかけも戦略総務の一つと言っても良いだろう。

「オフィス改革」を軽視する企業が生き残れない理由

JLLが日経BPコンサルティングの協力のもとに行った調査*で、オフィスについての関心や取り組みなど幅広いテーマについての質問を実施。”今後新たに取り組む可能性が高いテーマ” を聞いた設問では、「総務業務に関するコンサルティング」を挙げた企業が1位、その後に「オフィス移転」「総務業務のアウトソーシング」が続くなど、アウトソーシングサービスに関するニーズが高まっている事情が見えてくることから、社内のリソースを求めるよりもまず、総務コンサルティングを行うことでより効率的なコスト改善や業務改善に繋げたいという企業の意識が伺える。調査で意外だったのが「オフィス移転の目的」で、最も多かった回答が「社員の労働環境の改善」だった。企業は、社員数の増加や事業拡大への対応より、働く環境の改善を重視して移転を考えているということだ。さらに続いて「オフィスレイアウトの効率化」「社員の満足度向上」という回答が多かったことから、「ただの移転」に費用をかけることを企業が嫌うことが推測できる。オフィス改革に投資することで、保有するリソースの効率化を目指し最大限の価値創出というリターンを生み出す。そこに、移転が必要なら実行しようということではないだろうか。この調査から逆説的にわかるのは「目的の重要性」であり、オフィス移転やオフィス改革の真の目的を達成するためにはどういう選択をすべきか、先入観にとらわれず幅広く柔軟に検討することが求められる。目の前の仕事をこなすだけでなく、大局を見据えた戦略がこれからの経営企画部門や総務部門には重要となってくるだろう。

まずは東洋経済オンラインにも掲載された調査レポート”「オフィス改革」を軽視する企業が生き残れない理由”を確認し、現状を把握することが必要である。
調査では、企業の経営企画部門 や総務部門、財務部門の勤務者を対象に、オフィスについての関心や取り組みなど幅広いテーマについて質問、500件の有効回答を集めた。

戦略的な総務アウトソーシング・コンサルティングの事例と結果

グローバルなネットワークを活かした戦略総務により大幅なコスト削減に成功

大手国内電気メーカーは戦略総務を実施すべく、ファシリティマネジメントのパートナーとしてJLLと独占的に契約を結び、コスト削減を目的としたプロジェクトを開始した。警備、建設、水道光熱費、清掃・修繕、リース及びエンジニアリングサービスなど広範囲におけるコスト削減を実施し、9年間で69億4200万円のコスト削減効果へと繋げた。成功要因にJLLがグローバルなネットワークを生かし、グループ会社海外工場7件の取得・売却支援等、幅広いサービスを提供したことが挙げられる。総務アウトソーシング・コンサルティング活用により、自社だけでは得られないネットワークを活用し、継続的かつ根本的なコスト削減に成功することができたのだ。

費用はかかってもそれ以上のリターンを

ある中堅エンターテインメント系企業では、外資系ベンダーのサポートを受けることにより、4年間で5億円超のコスト削減を実現した。入居中であったビルの取り壊しが決定されたため、立ち退きを余儀なくされ、昨年、都内で新築ビルに本社を移転した。このとき移転先探しをはじめとする幅広い不動産コンサルティングサービスを受けることを決めた。この選択が正解だったのだ。入居していたビルの移転補償に関する交渉についても満足する結果を引き出すことに成功したのである。

総務業務の専門性を生かし、ワークプレイス・エクスペリエンスを提供

外資系IT関連企業は2007年から現在に至るまで、JLLへファシリティマネジメント全般の運営を委託。JLLはヘルプデスク運営や庶務サービス/コーポレートサービス、受付サービス/メールルームサービス、予算作成・管理、経理業務など総務業務全般のアウトソーシングを継続的に行っている。企業文化を理解し、新しいサービスを提案・実施 (社内イベントの企画や開催など)、業務拡大・人員増員に伴い、全ての業務フローを再確認した上で改善と効率化を提案、またマニュアル作成・レポート整備・情報集約のルール策定など、新しい価値を積極的に生み出し、KPIスコア(5段階評価)も3.8から4.7へ大きく向上させた。

従来の総務から大きく変化を遂げた戦略総務は、企業が競争力を維持するために今後さらに必要となる役割・考え方だ。業務内容は同じでも、積極的な姿勢と企業の価値を内側から改革していくという意識を持つことが大事であり、激しく変化する時代へ対応していくため、「戦略総務」の姿勢や考え方を取り入れることが不可欠となる。

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