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これからのオフィスに必要な戦略とは?

新型コロナウイルスの影響で、在宅やサテライトオフィス勤務のテレワークが加速し、働く場所の選択肢が格段に増えた今、これからどのようなオフィスが求められていくのだろうか。アフターコロナのオフィスに求められる役割や具体的な戦略を紹介する。

2022年 02月 01日
従来のオフィスの在り方と価値

オフィスは、今まで従業員が仕事をする上で欠かすことのできない場所として存在してきた。従業員が一堂に会して働くことが当たり前で、自然と一体感が生まれ、企業文化が醸成される側面があった。近くに同僚がいることにより、偶発的なコミュニケーションから生まれる雑談から、仕事以外での人となりが見えやすかった。また、自分の仕事と直接関わりがない同僚との接点も持ちやすく、お互いが何をしているのか把握しやすいという利点もあっただろう。同じゴールを目指す仲間との絆を感じることで、仕事へのモチベーションを高めたり、職場で自分が果たすべき役割に気づきやすかった環境が、従来のオフィスの特徴であったのかもしれない


オフィスワーカーの現状から導くこれからのオフィスの要素

従業員が求めているのは、単なる働く場所としてのオフィスではなく、情緒的な価値を持つ”場”としてのオフィス

JLLが2021年9月に発表したレポート「新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.3」では、在宅勤務に対する環境そのものは整ってきているにも関わらず、世界的に「在宅勤務では生産性が下がる」と回答する人が増えているという結果が示されている。その理由の一つとして、在宅勤務によって「個人が心理的な負担を過度に背負っていると感じている」という要素が挙げられており、経営者層にとって避けられない課題となっているのが現状だ。では、従業員はこれからのオフィスに何を求めているのだろうか。

前述の調査結果では、在宅勤務開始以降のオフィスワーカーがオフィス回帰を望む素因として「人との関わりや社会的なつながり」、「見える景色の変化」、「エンターテイメントイベントへの参加」等が上がってきている。この結果から、従業員が求めているのは、単なる働く場所としてのオフィスではなく、情緒的な価値を持つ”場”としてのオフィスであることが窺える。コミュニケーションや社会的なつながりが生まれ、仕事をする目的や達成感を喜び分かち合える機会が創出できることが、これからのオフィスに求められる必要不可欠な要素となってくるのではないだろうか。

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パフォーマンスが高いオフィスの秘密

2021年7月にJLLが発表したレポート「ヒューマン・パフォーマンスの解読」によると、高いパフォーマンスを見せた従業員の多くが在宅勤務中にオフィスを懐かしんでいたことが示された。高パフォーマーにとって、オフィスはクリエイティブな環境やコワーキング・スペース、イノベーションのツールやテクノロジーを利用し、従業員同士の高度なコラボレーションやイノベーションを体感できる場所であった。結束したコミュニティに対するニーズこそ、物理的オフィスが差をつけられるヒントであり、企業が最優先するべきなのは、従業員が職場のコミュニティに帰属意識を持てるオフィス環境の整備だと考えられる。

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企業と従業員を繋ぐ役割を担うオフィス

働き方改革やコロナ禍での勤務体制の変化に伴い、オフィス改革に着手する企業も増えている。コロナ禍のオフィス移転で人材確保、長期雇用、帰属意識の向上に繋げた事例では、オフィスコンセプトを刷新し、社員が誇りに思える魅力的な本社オフィスを構築することに成功した。一元化されたオフィスコンセプトを掲げながら、各フロアに多目的のコラボレーションエリアを設置し、コミュニケーション活性化を実現。その他にも、デジタルを活用し、オフィスワークと同等でテレワークが可能となる執務環境を整備する等、具体的な施策を取り入れ、ソフトとハードの両軸によるオフィス移転で成果に結びつけた。これからのオフィスは、効率面だけでなく、企業と従業員を繋ぐ場所としての価値がより一層求められるのではないだろうか。

これからのオフィス戦略とは?

働き方の変化により様々な課題が浮き彫りになってきているが、他にも、従来のオフィスでは、アフターコロナの働き方には対応できない要素がいくつかあると考えられる。例えば、同僚と並んだ自席からオンライン商談できるのか、会議室の予約が取れない、小さな休憩室は混み合っていて快適でない等の不安があるのではないだろうか。一人で集中できる場所やリラックス・気分転換できる場所を求めて自宅やカフェなどを選択するのも頷ける。このような問題要素をこれからのオフィス戦略に結び付けていくことが必要となってくる。

企業戦略に沿ったオフィス価値の再定義(分散型とオフィス回帰型)

在宅勤務や働き方改革によって、分散型オフィスを選択する企業も存在する。多様な働き方の実現による優秀な人材の確保等のメリットをはじめ、社会情勢の変化に柔軟に対応できることが分散型の決断へと踏み切らせる要因となってくると考えられる。一方でオフィス回帰型の選択を取る企業もある。コロナ禍でハイブリッド型の働き方を採りつつも以前の3倍の床面積の新オフィスへの移転を決行した事例では、新オフィスは全席固定席で従業員にとって時間と場所を共有する場として機能するように設計。30の会議室を備え、コミュニケーションを深める施策を打つ一方で、遮音ボードやノイズキャンセリングのヘッドセットを配備するなど、個人での作業にも配慮した。

ウェルネスやウェルビーイング構築の意識

ウェルネスやウェルビーイングを意識したオフィスづくりは、長期的な企業の成長のためにも不可欠な要素だ。持続可能なオフィスを従業員に提供することで、従業員のエンゲージメントを向上させるだけでなく、ステークホルダーや社外へのプレゼンスにも繋がるためだ。世界のエネルギー使用量、資源消費量、温室効果ガス排出量等の膨大な消費を占める建物のサステナビリティ化、従業員のウェルネスやウェルビーイングの構築を両立することは、企業が環境・社会と従業員に対してコミットするべき項目の一つであると考えられる。

これからのオフィスに求められるのは、コミュニケーションの場としての機能

これまで見てきたように、コロナや働き方改革の影響で在宅勤務が増えた従業員も、企業の経営陣も、コミュニケーションの場としてのオフィスの機能が重要であると考えていることがわかった。一方で、コロナ対策や、自席でもオンラインミーティングがしやすいような環境配慮、ウェルネスやウェルビーイングへの積極的な取り組みが新しく求められている。これらの要素を取り込んでいくことが、これからのオフィス戦略を成功に導くポイントとなってくるのではないだろうか。

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