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コロナ禍でも床面積3倍に拡張移転したLegalForceのオフィス戦略

リーガルテック分野で急成長を遂げるLegalForceが本社オフィスを拡張移転した。リモートワークとオフィスを組み合わせたハイブリッドな働き方を採用しつつもスタッフ全員の固定席を用意。ソーシャルディスタンスと快適性を重視した独自のオフィス戦略は「従業員を迎え入れる企業の姿勢として最も重要」との認識を示している。

2021年 10月 05日
本社オフィスを移転、床面積3倍に

株式会社LegalForceは2021年5月6日、東京・豊洲駅から徒歩1分に位置する大型オフィスビル「豊洲フロント」6階に本社を移転した。賃借床は1,200坪。前オフィスと比べて実に3倍もの拡張移転だ。

コロナ禍を受けて、リモートワークとオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方に切り替える企業は少なくない。その多くは座席数を効率化できるフリーアドレスを採用するが、同社ではハイブリッド型の働き方を採りつつも全席固定席とした。その理由についてLegalForce 代表取締役CEO 角田 望氏は「フリーアドレスはコスト削減を理由に一定のニーズはあるが、出社の際にどこに座るか悩む時間を避けたいと考えた。また、出社したい時に出社できる状態を維持しておくことは、従業員を迎え入れる企業側の姿勢として最も重要」と説明する。

それゆえ、新オフィスはソーシャルディスタンスを確保しながらスタッフが快適に過ごせるワークスペースを目指した。固定席のサイズは一般的なデスクよりも広く、自席でのオンライン商談が可能に。遮音ボードとノイズキャンセリング仕様の高性能ヘッドセットを完備。また、オフィス内には人工芝を配したフリースペースを設けた他、大小さまざまなサイズの会議室を30室ほど用意。コミュニケーションを深める場として機能している。

角田氏は「同僚と相談しながら決める。隣に頑張っている人がいるから頑張れる。他愛のない雑談から思いがけないアイディアが生まれることもある。そういったコミュニケーションを楽しみに感じることもある。オフィスは時間と場所を共有するのに不可欠なファクター」と強調する。

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リーガルテック分野で急成長を遂げるLegalForce

LegalFoceは「全ての契約書リスクを制御可能にする。」というミッションを掲げ、法務業務に関する各種課題を解決するソフトウェアを開発・提供するリーガルテックスタートアップ企業だ。創業5年目で急成長中だ。

契約当事者間の権利や義務が明記される契約書。その内容に不備があると事業上のリスクになるため、契約書レビュー業務は必要不可欠な業務となっている。契約書レビューを担当するのは企業法務部や法律事務所の弁護士などだ。担当者の法律知識や経験をもとに契約内容を確認していくことが多く、どうしても人為ミスの不安は常につきまとう。同社ではこうした契約リスクを管理・制御するべく、AIを活用して契約書のチェックを行う     AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」、契約締結後の契約書をAIで管理する「LegalForceキャビネ」を開発・提供している。

前者はAIによる契約書の自動レビュー機能によってリスクポイントを自動的に抽出する他、条文検索や契約書ひな形などの提供、契約書作成に関わるデータ蓄積によるナレッジシェアなど、契約前のリスク要因を最小化するのがコンセプトだ。2019年4月に正式版の提供を開始し、2021年7月には導入企業・法律事務所が1,000社を超える等、急成長を遂げている。

後者は2021年1月より提供開始。契約締結後のリスク管理を目的としたAI契約書管理システムだ。締結後の契約書のPDFファイルをクラウド上にアップロードすると、自動で文書データを認識。契約書の基本情報(タイトル、契約締結日、契約当事者名、契約開始日・終了日など)を抽出し、全文検索が可能なデータベースを自動で組成することができ、電子契約後に自動的にPDFの契約書を格納することが可能(別途設定が必要)。​

移転先に求める4つの条件

前述した2つのサービスを中心に急速に事業を拡大。足元では毎月30名程度の人員増が続いていた。従前は東京・日比谷に位置するオフィスビルで400坪を賃借していた。同ビルは再開発のため建て替えが予定されており、2019年から2021年までの定期借家で入居をしていた。事業計画から算出すると、2年間で手狭になることは予想されていたため、     2019年末頃から早々にオフィス拡張移転の検討を開始した。

移転時の希望条件は①ワンフロア、②十分なキャパシティ、③都心の近く、④値ごろな賃料の4点を重視した。実際に候補物件の選定を本格化させたのは2021年6-7月頃から。コロナ下の折、東京オフィス市場は空室率が上昇しており、候補物件は多数存在していたが、前述した4つの条件をすべて満たす物件はなかなか見つからず、最終的に豊洲に位置する大型オフィスビル「豊洲フロント」6階に決定した。

角田氏によると、当初の計画ではワンフロア600坪-900坪で移転先を探していたが、想定よりも人員の増加ペースが速く、賃借床を1,000坪に変更したという。当該物件はこの4つの条件を満たし、かつ高スペック・高グレードなオフィスビル。当初は賃貸可能な1,500坪のうち1,000坪分を区割りで賃借する考えだったが、将来的な事業成長を考慮し、最終的に1,200坪を賃借した。当初計画から大幅な借り増しとなったが「今年度中には収容許容の従業員数に達する」(角田氏)という。

居抜きによるコストメリット

「豊洲フロント」を選定した理由は前述の4条件に加え、前入居テナントの内装造作物を利用可能な「居抜き物件」であったことも大きい。特にスタートアップは事業成長を受けて一定期間で必ず移転を検討せざるを得ない状況になる。その際、せっかく作り上げたオフィスを原状回復しなくてはならず、多額のコストがかかる。しかし、居抜きは原状回復を前提とした内装造作コストを抑えられることができ、成長期のスタートアップにとっては合理的な選択肢となっている。

今回のオフィス移転をサポートしたJLL日本 オフィス リーシング アドバイザリー事業部 の担当者は「居抜きは内装造作の状況によっては使い勝手が悪いという懸念もあるが、本件は問題なかった」と説明する。会議室やフリースペースなどの造作は、ほぼそのまま活かすことができ、角田氏が「仮に居抜きでなければ3倍の内装費がかかっていた」と述べるように、大幅なコスト削減を実現した。

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