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ベンチャー企業が注目するインキュベーションオフィスとは?メリットやレンタルオフィス等との違い

フレキシブルオフィスのなかで特にベンチャー企業やスタートアップから注目を集める「インキュベーションオフィス」とはどのようなオフィスなのか。特徴やメリット・デメリット、他のフレキシブルオフィスとの違い、向いているユーザー像について解説する。

2024年 03月 03日
インキュベーションオフィスとは?

スタートアップやベンチャーなどの創業間もない企業を、一人前に育てて世に送り出す機能を持ったオフィスのことを「インキュベーションオフィス」と呼ぶ

インキュベーション(incubation)は日本語で鳥のひなを卵からかえすための装置である「孵化器」を意味する。

転じて、ビジネスの世界では、スタートアップやベンチャーなどの創業間もない企業を、一人前に育てて世に送り出す機能を持ったオフィスのことを「インキュベーションオフィス」と呼ぶようになった。

インキュベーションオフィスの特徴

インキュベーションオフィスは、おもに都道府県や市町村などの公的機関が企画運営している。

実際のオペレーションは民間企業に委託していることが多く、例えば東京都では、求める設備やサポート内容をクリアしていれば「認定インキュベーションオフィス」として登録される。

インキュベーションオフィスには、一般的な賃貸オフィスとは異なり、経営の専門知識を持った「インキュベーションマネージャー」が常駐しているのが最大の特徴で、入居した企業はインキュベーションマネージャーから経営ノウハウ・資金計画・人材紹介といったさまざまなアドバイスやサポートを受けられる。

インキュベーションオフィスが注目される背景

日本では、起業した会社の存続率は5年後で約80%と諸外国に比べて高いものの、開業率は欧米で10-15%の国が多いのに対して5%台にとどまっている。

たとえ大企業であっても先行きが不透明な現代だが、経済発展のために新産業の創出は欠かせない。そのためには、そこで起業に対するハードルを引き下げ、事業創出を促すと同時に、専門的なアドバイスを提供し企業価値を高めて継続的に成長できる仕組み作りまでサポートする目的でインキュベーションオフィスが生まれた。

起業家への総合的な支援が期待できるとあって、スタートアップやベンチャー企業から注目が集まっている。

インキュベーションオフィスが提供するサポート内容

インキュベーションオフィスが提供するサポートは地域や運営団体により若干差があるが、おもに以下のような内容となり、創業アイデアから実際の経営・管理まで幅広い支援が受けられることが多い。

  • 新規事業創出の相談

  • 事業経営に必要なノウハウの提供

  • 事業計画の策定に関するアドバイス

  • 業務提携先の紹介

  • 資金調達支援

  • 経理や税務申告のサポート

  • 人事労務管理の相談
インキュベーションオフィスに備えられている設備

インキュベーションオフィスには、通常、事業をスタートさせるのに必要な設備や機能が一式備わっている。具体的には以下のようなものが利用できる。

  • デスク・収納家具・什器類

  • 通信・インターネット回線

  • OA機器

  • 個室ブース

  • 応接エリア

  • 会議室・ミーティングスペース

  • 事業関連の郵便物の受け取りや転送サービス

  • 法人登記ができる住所など

他にも、業種によっては研究室や工場などが使用できることもあり、必要な設備を自社で準備しなくてもすぐに事業を開始できるのがインキュベーションオフィスの特徴だ。

インキュベーションオフィスのメリット

入居期間のあいだに経営ノウハウの提供、資金計画相談、人材紹介といった創業と事業成長のサポートを受けられる

インキュベーションオフィスは、自社のニーズに合えば非常に大きなメリットがある。

起業・経営に関する支援

インキュベーションオフィスには、原則、専属のインキュベーションマネージャーが常駐し、入居期間のあいだに経営ノウハウの提供、資金計画相談、人材紹介といった創業と事業成長に関するサポートを受けられる。

オフィス賃料の節約

インキュベーションオフィスの賃料相場は、スペースの間取りや立地にもよるが、月額数万-十数万円と、設備一式が使用できるわりには一般的な賃貸オフィスよりも低価格であることが多い。

自治体運営のインキュベーションオフィスでは、賃料補助制度が設けられていることが多い。

他の起業家とのネットワーキング
 

インキュベーションオフィスでは複数の企業が入居しており、入居者同士の交流を目的とした共有スペースなどが設けられている。

関連性のある業種であれば情報交換やビジネスチャンスが生まれ、まったくの異業種であっても新しい発想やイノベーション創出のきっかけとなるだろう。

必要最低限の設備が用意されている

一般的な賃貸オフィスでは機器や設備は自前で準備することになるが、インキュベーションオフィスでは事業活動に最低限必要なファシリティが一式揃っているため、事業立ち上げ直後の設備コストを抑えられ、資金を残しながらスタートを切れる。

インキュベーションオフィスのデメリット

一方、インキュベーションオフィスのデメリットも存在する。自社に当てはまる場合は注意が必要だ。

煩雑な入居手続き
 

民営のフレキシブルオフィスと比べて、公的なインキュベーションオフィスへの入居には面接や審査、事業計画の提出、家賃の補助申請手続きなど、煩雑な手続きを求められる可能性がある。

入居期間があらかじめ決められている
 

事業のアドバイス、家賃補助などのサポートがあるインキュベーションオフィスは、いつまでも入居して恩恵にあずかることはできず、入居期間に定めがある。施設によって異なるが、原則1年間、任意で3-5年に延長できることもあるが、いずれにせよ最終的に退去しなくてはならない。

オフィスレイアウトの自由度が低い

ほとんどのインキュベーションオフィスはあらかじめ設備一式が揃った状態で入居するため、レイアウトや内装を自由に変更できないことが多い。

インキュベーションオフィスが向いている利用者・向いていない利用者

メリットの多いインキュベーションオフィスだが、その一方で制約もあるため、向き不向きを見極めて入居するかどうかを判断したい。

インキュベーションオフィスが向いている利用者

インキュベーションオフィスが向いているのは、やはり起業まもないベンチャー企業やスタートアップである。具体的には「賃料や初期投資をできるだけ抑えたい」、「企業や経営のノウハウを教わりたい」、「起業家のネットワークを構築したい」といった利用者は、インキュベーションオフィスに向いているといえる。

インキュベーションオフィスが向いていない利用者

一方、インキュベーションオフィスに向いていないのは「オフィス周りの手続きに時間をかけられない」、「自社の特徴を出したオフィスレイアウトや内装にしたい」、「長期間安定して入居したい」といった企業である。インキュベーションオフィスのメリットと、自由度をどの程度求めるのか、バランスを考えて判断すると失敗が少ないだろう。

インキュベーションオフィス以外の選択肢と各オフィスのメリット・デメリット

インキュベーションオフィスはフレキシブルオフィスの一形態だが、他にもさまざまなフレキシブルオフィスが存在する。それぞれの特徴やメリット・デメリットをふまえてオフィスを選択したい。

サービスオフィス

サービスオフィスとは、オフィス機器・什器・通信回線などが完備されている個室型のオフィスで、受付・秘書業務を行うスタッフが常駐し、ロビーや会議室・ラウンジなど充実したサービスが特徴だ。

月額制や従量制で契約利用することが多く、サポートが手厚い分、フレキシビルオフィスの中では相対的にややコストが高額とされる。

レンタルオフィス

レンタルオフィスも、ビジネスに必要な機器やインフラ一式が揃っていてすぐに事業開始できる点ではサービスオフィスと同じだが、サービスオフィスのような有人のサービスはなく座席・区画のみを提供、ラグジュアリーさを追求していない。その分費用は抑えて入居できるのがメリットだ。

コワーキングスペース

従来は、フリーランスや個人事業主が利用することの多かったコワーキングスペースだが、コロナ禍をきっかけに、コアオフィス(本社)に出社しない従業員の執務スペース>としても利用されることが増えた。

通勤時間の削減利用者同士のコミュニケーションが生まれやすいといったメリットがあるが、固定席でないコワーキングスペースでは必ずしも席が空いているとは限らないことや、セキュリティ面でのリスクが高まるのがデメリットである。

サテライトオフィス

サテライトオフィスとは、交通利便性の高いターミナル駅や従業員の居住地に近いエリアに構築する小規模なオフィス環境をいい、多様な働き方に対応するオフィスのありかたとして近年注目を集めている。

サテライトオフィス構築にかかる初期費用及びランニングコストの負担は大きいものの、法人を対象にした外部貸しのサテライト型シェアオフィスなどが充実しており、従量課金制で利用できる。セキュリティ面での懸念はあるものの、通勤の負担軽減による従業員の生産性向上、通勤交通費やオフィス規模縮小によるコスト削減、非常時のBCP(事業継続計画)にも役立つなどメリットは数多い。

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自社に合ったオフィスの選び方

現在は、インキュベーションオフィスの他にもさまざまな形態のフレキシブルオフィスがあるため、どのタイプがもっとも自社に適しているのか、以下のようなポイントをよく比較検討して選びたい。

  • イニシャルコスト…入退去時の仲介手数料・契約諸費用、什器や備品の費用

  • ランニングコスト…月々の利用料・水道光熱費・清掃費・機器リース料など

  • 立地条件…シェアオフィスなどを利用することで好立地のオフィスに入居できることも

  • コミュニケーション…ラウンジなど人との交流ができるスペースがあるかどうか
     

自社に最適なオフィス戦略を見つける

インキュベーションオフィスの特徴を知り、最適なオフィス選択を

インキュベーションオフィスと他のフレキシブルオフィスとの最大の違いは、専属のインキュベーションマネージャーにさまざまなビジネス成長のサポートを受けられるという点だ。

その他にも賃料の補助が受けられる、設備一式を自社で用意する必要がないというメリットがあるが、その分、入居時の制約や各種条件・手続きも煩雑になるため、自社に最適なのかどうかしっかりと検討した上で入居を決めるようにしたい。

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