新時代を迎える大阪フレキシブルオフィス市場
柔軟な働き方を実践できるフレキシブルオフィスが大阪でも拡大傾向にある。2023年にはコロナ前の2019年比で総貸床面積が40%増を記録。国内オペレーターの新規供給が目立ち、まさに“新時代”を迎えようとしている。
大阪フレキシブルオフィス市場が拡大、2019年比で床面積40%増
大阪の中心部(北区、中央区、浪速区、西区、淀川区)のフレキシブルオフィス市場が活況を呈している。大手企業を中心にした、オフィスとリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークの導入拡大が背景にある。JLL日本の調査では、大阪のフレキシブルオフィス市場は総賃貸面積が58,070㎡となり、2019年末時点と比較すると40%増となった(図1)。
図1:大阪中心部におけるフレキシブルオフィス市場の供給推移(総貸床面積) 出所:JLL日本
従前、フレキシブルオフィスの中心的な利用者は中小企業やベンチャー・スタートアップとされていたが、コロナ禍を受けてリモートワーク制度を導入した大手企業がその利用実績を重ねてきている。狭小な住宅事情や脆弱な通信環境といった在宅勤務ならではの課題を解消するために、一定以上のインフラを備えたフレキシブルオフィスに着目したためだ。
一般的なオフィス賃貸借契約と比較して低廉な初期費用、入居後からすぐに業務が可能な執務環境、そして利用期間等が柔軟に設定できる契約条件等、大手企業がフレキシブルオフィスを選択する主な要因として考えられている(図2)。
図2:大阪中心部におけるフレキシブルオフィス対Aグレードオフィスの対比(2023年9月末時点) 出所:JLL日本 ※大阪Aグレードオフィス…大阪市中央区・北区・浪速区・西区・淀川区に位置する延床面積15,000㎡以上、基準階面積600㎡以上のオフィスビルが対象
国内オペレーターが大阪で新規開発を加速
本社オフィス、地方拠点、サテライトオフィス、BCP対策を兼ねたサブオフィス等、フレキシブルオフィスは多様なワークプレイス戦略に対応
上記に挙げたフレキシブルオフィスの多種多様な特長は、利用実態の多彩さに反映されている。例えば本社オフィスとして活用されるだけでなく、地方拠点、サテライトオフィス、BCP対策を兼ねたサブオフィス等、様々なワークプレイス戦略に対応している。
フレキシブルオフィスの需要増に呼応するかのように、国内オペレーターも新規供給に注力している。国内大手のフレキシブルオフィス・ブランド「ワークスタイリング」のオペレーターである三井不動産は梅田・本町エリアに複数拠点を開業した他、野村不動産も大阪の中心部に自社サービスオフィス・ブランド「H1O(エイチワンオー/Human First Office)」を複数開業している。
他方、SYNTH等の地元オペレーターは、東急不動産のコワーキングスペース・ブランド「ビジネスエアポート」と提携し、新規開発も視野に拠点ネットワークを拡充させる可能性がある。
新規Aグレードオフィスへの開業続く
大阪Aグレードオフィスに対するフレキシブルオフィスのシェアは2023年9月末時点で1%強(貸床面積ベース)に過ぎず、大阪都心5区のフレキシブルオフィスの総貸床面積のほぼ半分が主要なAグレードオフィス内で運営されている。
さらに、大阪駅直上で現在開発中の「イノゲート大阪」2階部分には、香港を本拠地とし世界の主要都市で事業展開するフレキシブルオフィス・ブランド「Compass Offices」のフラッグシップワークスペースが開設予定となり、2022年3月に全面開業を迎えた「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」ではリージャスグループの高級フレキシブルオフィス・ブランド「Signature」が2024年1月に15階全体に開業する等、新規Aグレードオフィスで大規模施設が開業予定だ。
オフィス大量供給でフレキシブルオフィス開発の増加を予想
2024年の大阪Aグレードオフィス市場は記録的な新規大量供給に見舞われ、空室率の上昇が見込まれており、フレキシブルオフィスのオペレーターにとっては主要オフィスビルで拠点を開発する機会が増えると予想
フレキシブルオフィスは働きやすい環境づくりに寄与する(画像はイメージ)
2024年の大阪Aグレードオフィス市場は記録的な新規大量供給に見舞われ、空室率の上昇が見込まれており、フレキシブルオフィスのオペレーターにとっては主要オフィスビルで拠点を開発する機会が増えると予想される。
日本におけるフレキシブルオフィス市場は右肩上がりに拡大を続けているものの、ニューヨークやロンドン等のグローバル都市と比較するとAグレードオフィスのストック(床面積ベース)に対する割合は依然として低い。
働き方改革と人手不足の解消…日本企業が直面する2つの経営課題を解消するための具体的な施策として、フレキシブルオフィスの将来性に期待が寄せられている。
【執筆者:JLL日本 リサーチ事業部 アシスタントマネージャー 中丸 友世】