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クレジットイベントに強い物流セクター

新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大する中、当然不動産にもマイナスの影響が出てくることは避けられず、一部のセクターについては影響が出始めている。そんな中、今回もっとも「クレジットイベント(市場ならびに経済に多大な悪影響を与えると思われる社会上の出来事)に強い」として注目されているのが物流施設である。

2020年 06月 29日
リーマンショック後に投資額94%増を記録した賃貸住宅

リーマンショック時を振り返ると、サブプライムローンに端を発した混乱で金融機関が一気に業績を落としたことをきっかけに、国内の景気全体が加速度的に下降線をたどった。その結果としてオフィス需要が減退し空室率の増加ならびに賃料の下落につながったため、多くの投資家がオフィス物件への投資を中断させた。

他方、賃貸住宅に関してはその性質上大きく落ち込むことはなく、また極めて安定的な稼働率を維持し続けており、リーマンショックから1年半ほど経過した2010年の日本における投資額は、オフィスが前年比36.3%減となった半面、賃貸住宅は実に94.8%の上昇を記録することからも、賃貸住宅がいかに「クレジットイベントに強い」セクターであったかがわかる。

本稿執筆時点(2020年5月末時点)ではまだ本格的な影響が反映されているわけはないが、賃貸住宅に対する投資家の見方はいわゆる「コロナ前」とほぼ変わっていないとされる。そのような性質をもった賃貸住宅とならんで、今回は物流施設が耐性のあるセクターの仲間入りをしようとしている。

コロナ禍に対して強い耐性を見せる物流施設

ランプウェイのついた多層階フロアを持つなど、いわゆる「先進的物流施設」が日本に初めて導入されたのは2002年。当時日本初投資となる米プロロジスが、独物流大手DHLの専用施設を東京・江東区に建設したのが始まりとされる。

以降、それまで自社保有が前提だった物流施設を賃貸するというコンセプトが定着。なかには延床面積10万㎡を超える超巨大物流施設が首都圏、関西圏を中心に多く建設されてきている。こうした大規模な物流施設であっても、竣工時には満室稼働する物件が多いとされる。

この背景には過去数年で大きな成長を見せているインターネット通販(eコマース)の隆盛がその一つであると考えられる。

日本国内におけるeコマースは消費活動全体において10%未満であり、およそ半分のシェアにまで拡大した中国や、急成長を見せる韓国など諸外国と比べるとまだかなり少ないという印象である。

しかし今回の新型コロナウイルスの感染拡大で外出も自由にできなくなった今、これまではお店を訪問して購入していた品々をeコマースで購入する消費者が増加してきている。こうした「半ば強制的に」eコマースを利用せざるを得ない状況は、結果として通信販売の物量を増加させているといえよう。

またマスクや消毒液など日常生活に欠かせない物資のなかには一時的に需要が増加しているものもあり、これらも物量の飛躍的な増加に貢献している。こうした増える一方の物量を鑑みると、この先さらなる賃貸床の需要につながることは容易に考えうることであり、需給バランスがひっ迫することで賃料の上昇傾向は今後しばらく続くと考えられる。

今回の感染拡大が収束したのちも、eコマースの便利さ、手軽さはこれまで利用してきたいわば「コア層」のみならず、一般社会に幅広く認知され続けると考えられることから、物流施設の床需要は引き続き拡大することが考えられる。

物件価格の大きさも投資家を魅了

安定感と伸びしろを与える物流施設の投資だが、もう一点、物件価格の大きさも投資家にとって魅力的なポイントであるといえる。

不動産投資に対するエクイティは増加の一途をたどっており、「ドライパウダー(投資を待つ資金のこと。銀行融資は含まない)」は数千億規模に膨れ上がっている。むろん賃貸住宅も耐性のあるセクターであり続けているが、物件価格は高いものでも数十億円前後と、数千億を消化するにはいささか小ぶりな感じが否めない。

一方で物流施設は小さいもので数十億円レベルであり、投資対象となる物件のほとんどが数百億規模の物件である。ドライパウダーの消化に苦心のうえ手を変え品を変え対応してきている投資家にとってはまさに絶好の投資先であるといえる。

そのうえ「安定した需要」が見込め「クレジットイベントに強く」かつ、現在のような経済混乱期においてすら「需給バランスひっ迫による賃料上昇期待」があるとなれば、もはや投資しない理由などないとすら考えられる。

規模が大きく収支が安定し、さらに賃料の伸びしろもある物流施設は、こうした状況下においても「インフラを支えるセクター」として今後も認知され続けると期待される。新型コロナウイルスの感染拡大が一日も早く収束し、さらに重要度が増す物流セクターになることを願ってやまない。

(著者:JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター 内藤 康二)

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