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働き方改革の目的とは?法改正の内容や企業に求められる準備

少子高齢化による生産年齢人口の減少や、育児や介護との両立など、現在直面している課題解決を図ることを目的とする働き方改革について、企業に求められることを詳しく解説する。働き方改革の目的を整理し、しっかりと対応していくことで社内の労働環境改善だけでなく、生産性の向上も期待できる。

2022年 07月 14日

2018年6月に働き方改革の関連法が成立し、2019年4月以降から企業に対して順次適用されることになった。

働き方改革が進められている背景にあるのは、日本の労働人口の不足問題だ。

日本の労働人口は2013年の約8,000万人をピークに、2013年以降は減少の一途を辿っている。2051年の労働人口は約5,000万人まで減少するといった予測も立てられている。

少子高齢化による生産年齢人口の減少や、育児や介護との両立など、現在直面している課題解決を図ることを目的とする働き方改革について、企業に求められることを詳しく解説する。働き方改革の目的を整理し、しっかりと対応していくことで社内の労働環境改善だけでなく、生産性の向上も期待できる。

働き方改革を推進する法律「働き方改革関連法」

働き方改革関連法は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」を省略した言い方であり、労働基準法などのいくつかの法律改正をまとめたものだ。それぞれポイントを絞って解説する。

労働時間状況の客観的把握の義務付け

2019年4月以降、雇用するすべての労働者に関して、労働時間の客観的な記録や把握が義務化された。

年5日間の年次有給休暇の取得の義務付け

入社後6カ月が経過し、かつ全労働日の8割以上出勤している労働者には、年5日間の有給休暇を取得させる。従わなかった場合は労働基準法違反となり、1人につき30万円以下の罰金刑の可能性もある。

時間外労働の上限規制(罰則付き)

時間外労働は月45時間・年360時間までが原則となった。違反した場合は罰則もあり、「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が課せられる。

「高度プロフェッショナル制度」の新設

今回新しく作られた「高度プロフェッショナル制度」は、 研究開発やコンサルタント業務などの特定の専門職に携わる労働者が長時間労働にならないための制度。高度な専門知識が必要な職に就き、年収1,075万円以上の労働者が、同意をすることで労働時間・休日・深夜の割増賃金等の規定を適用除外とできる。制度適用後、企業は労働者に対して年間104日を休日としなければならない。

「フレックスタイム制」は上限3カ月へ拡充

フレックスタイム制とは「変形労働時間制」であり、労働者側が始業や終業の時刻を決めて働くことができる制度。1日の勤務時間が固定されず、出勤や退勤の時間に融通をきかせることで、労働者のワークライフバランスを保つ取り組みだ。労働者のモチベーションを維持することができ、結果として企業全体の生産性アップも期待できる。従来は上限1カ月内の期間をもとに労働時間帯を設定していたが、今回の改正で上限が3カ月へと拡充された。

「勤務間インターバル制度」の導入促進

勤務間インターバル制度とは、退勤後から翌日の始業までの時間を一定時間確保する制度だ。この一定時間の範囲は9-11時間程度であり、残業して退勤した場合、翌日の始業時間を繰り下げて勤務間インターバルを確保する。労働者の睡眠時間や在宅時間を確保する目的だ。勤務間インターバル制度は企業に努力義務として課せられている。

産業医・産業保健機能の強化

産業医とは、労働者の心身のケアにあたる医師であり、企業は産業医が行った健康管理などに関する内容を報告しなければならない。 労働者にとっては産業医がより身近で心強い存在になるだろう。

同一労働同一賃金の推進

正規社員や非正規社員などの雇用形態の違いが、 賃金や福利厚生などの待遇差に表れる不合理をなくすため、同じ内容の仕事に対しては給与水準や福利厚生も同等にする。シニア層や介護・育児が必要な人は、正規雇用には限界がある。このような人々の労働意欲が低下しないような雇用体系を目指すために設けられた。

月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ

月に60時間を超える時間外労働に対し、これまで大企業が50%、中小企業が25%の割増賃金率となっていた。しかし、2023年4月以降は中小企業も50%の割増賃金率が適用されることとなる。

働き方改革の3つの目的

労働人口を維持・増加していくためにはシニア層の活躍をはじめ、介護や出産・育児などにも対応できる、多様な働き方を選択できる環境をつくることが重要

働き方改革は、労働環境の大きな見直しを行い「1億総活躍社会」の実現を目指すものだ。 主に3つの具体的な目的がある。

  1. シニア層の就労促進

  2. 非正規の格差是正

  3. 長時間労働の解消

それぞれの目的について解説する。

多様で柔軟な働き方の実現でシニア層の就労促進

少子高齢化が進む日本では、高齢者の就労促進も大きな課題となっている。生産年齢(15-64歳)人口の減少が激しい日本で、労働人口を維持・増加していくためにはシニア層の活躍をはじめ、介護や出産・育児などにも対応できる、多様な働き方を選択できる環境をつくることが重要だ。労働者が増えればそれだけ国の税収も潤う。テレワークや時短勤務、兼業など、働き方のオプションが増えれば、あらゆるライフステージの人が自分に合った働き方で社会参画できるようになる。

非正規の格差是正で労働意欲のアップ

日本企業では非正規社員が約4割を占めている。これまで、非正規社員は正社員と同一の業務に従事しているにも関わらず、賃金や賞与、福利厚生の面で正規社員よりも低い待遇が常態化していた。とくに高齢者や育児出産時期にあたる女性は、非正規社員として働かざるを得ない。両者の格差をなくすため、原則として正社員と同一賃金の支給を企業側に求めることとなった。

また、賃金だけでなく通勤手当などの福利厚生に関しても正社員と同一の待遇とするなど、雇用形態による格差をなくすことで、主体的に働き方を選択でき、モチベーション維持も期待できる。

労働時間を見直した長時間労働の解消

長時間労働の常態化は、他国と比較しても日本が抱える大きな課題とされる。過労死や長時間労働を原因とする労働者の健康被害も後を絶たない。働き方改革関連法以前では「36協定」と呼ばれる制度を利用することで、何時間でも時間外労働が可能になっていた。 長時間労働を是正し、労働者が健康でより活躍できる社会の実現は1つの大きな目的となっている。

働き方改革で企業が行うべき対応は?

時間外労働の罰則付き上限規制が導入されたことで、より効率的かつ生産性の高い働き方を実現できるワークプレイス改革の必要性が高まっている

働き方改革関連法が整備されたことを受けて、今後企業はどのような対策や準備をしていけばよいのだろうか。以下の3つのアプローチが考えられる。

労働時間や休暇日数の適切な管理と把握

時間外労働の上限値や、取得させる有給休暇の日数が明確化されたことで、 企業側は労働者一人一人の労働時間や休暇日数を適切に把握し、管理できる仕組みづくりが求められる。

たとえば、労働者個々の有給消化日程表を作ったり、 時間外労働が増えつつある労働者に対して労働時間を減らすように指示したりすることが必要だ。 業務分担を見直して長時間労働になりやすい業務を分担させるなどの仕組み作りも行う必要があるだろう。

さらに、時間外労働の罰則付き上限規制が導入されたことで、より効率的かつ生産性の高い働き方を実現できるワークプレイス改革の必要性が高まっている。オフィスとリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークをはじめ、外部貸しのフレキシブルオフィスの活用などは一考に値する。人手不足の中、総労働時間が規制によって短縮されるため、生産性を維持するのは至難の業だ。将来性豊かな若者世代のみならず、子育てや介護などで労働市場から外れていた女性やシニア世代の登用を進めるため、柔軟な働き方を模索していく必要があるだろう。

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テクノロジーの推進と整備

テクノロジーを駆使して業務そのものの工程削減も必要だ。たとえば、まだ勤怠管理システムなどを導入していない企業であれば、こういった ITツールを積極的に導入すべきだ。既に導入している企業であっても、フレックスタイム制の拡充などに対応できるように設定を変更する必要がある。

待遇格差の理由づけを明確化

同一労働同一賃金が進められることで企業は待遇格差を説明できる準備をしなければならない。行政による履行確保措置や行政ADR(裁判外紛争解決手続き) によって、労働者は待遇の不合理に対し行政を仲介させて説明を求めることが可能となった。行政 ADR の実施は企業ブランドを傷つけかねない。しっかりと説明できるように準備すべきだろう。

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