記事

未来の働き方改革とオフィスの関係

この数年で働き方改革の概念は大きく変化した。”必要不可欠なもの”を優先する新しい生活様式へと移り変わる過程で、働き方や働く場所に対しての考え方もアップデートされる中、未来の予測とオフィスの最適化が肝心となる。コロナ前後のオフィス戦略の歩みと未来の働き方改革について解説する。

2021年 04月 15日
働き方改革に必要な考え方とオフィスの在り方

2019年4月の働き方改革関連法施行により様々な行動計画が実施された。生産性向上による多様な働き方の実現等の目標が掲げられ、企業は模索しながらも意識改革やワークプレイス改革を実施していた。そんな中、コロナという思わぬ事態により、ソーシャルディスタンスや徹底的な消毒による衛生管理を最優先としたオフィス環境が求められ、人々のワークライフが再定義された。ビフォー・ウィズコロナという稀な過程を経て、ヒトはより本質的な要素に気づくことができたのではないだろうか。

その気づきが本当の意味での働き方改革を加速させる大事な要素となった。オフィス視点での大きな変化ポイントは、従業員にとっての「働く場」の在り方だろう。ビフォーコロナの働き方改革では、オフィスは毎日通うものという考え方のもと、自動的に"過去の常識"を繰り返し、場の存在意義を問う機会は少なかった。しかし、新型コロナウイルスの影響により世界中オフィスワーカーの71%が在宅勤務を経験し、オフィス出社が常識ではなくなった今、本質的な意味での働く場の在り方が問い直されている。この問いと答えが、働く人々の精神・身体におけるウェルビーイングの実現をサポートし、最終的に企業への利益にも繋がるという持続可能なサイクルを作り出す、真の働き方改革へ導くと考えられる。コロナ禍は、働き方改革を正しい方向へと進めるために、無くてはならない意識の再認識という機会を与えてくれたのではないだろうか。

ビフォー・ウィズコロナという稀な過程を経て、ヒトはより本質的な要素に気づくことができた

働き方とオフィス環境の現状課題

コロナにより、働き方の理想像も大きく変化した。仕事だけを重視するよりも、人生やヒトとの繋がりで豊かに生きるワークライフという、質への重要性が高くなったように感じられる。これは、JLLが提示した人間本来の持つ素質を最大限に活かすヒューマン・エクスペリエンスという要素が関係しており、従業員だけでなく、企業戦略や運営において重要な役割を果たすといわれている。そして今、これらの要素を体感できるようなオフィス環境へのアップデートが求められているのだ。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、非対面型のリモートワークが当たり前となっているが、長期的な企業戦略を考える上で、フルリモートワークにおける徹底した工夫をしない限り、従業員のモチベーション維持等の視点からウェルビーイングな働き方の実現からは程遠い。コロナ禍から学んだ安全衛生を考慮しながら、効率的なデジタルを活用したオフィスというリアル空間で、人財である従業員の価値を最大化することが企業の未来を変えていくきっかけとなるのではないか。

 

未来を見据えた働き方改革とオフィス戦略に欠かせない要素
企業戦略起点のオフィス戦略やコンセプトの明確化

働き方改革を促進するオフィスづくりはレイアウトやデザイン設計よりも前の段階で、企業の現状課題や特性を活かした戦略とコンセプトの明確化が欠かせない。ニューノーマルな働き方へのシフトにより、事業戦略の再考だけでなく、以前とは異なる課題に向けた対応策に追われている企業も多いが、この戦略とコンセプトの明確化により解決へ導いているケースも少なくない。例えば、昨今の課題とされるリモートワークでの帰属意識の低下に対し、企業戦略をオフィス空間のコンセプトとして体現し、従業員のエンゲージメントを高めた事例も実際に見られる。こうした企業戦略起点のオフィス戦略やコンセプトの明確化は、従業員と企業の相互理解という組織のサイクルに欠かせない本質的な効果創出にも寄与すると考えられる。

 

個と多様性を理解した企業意識

柔軟であることは、多様な個を包括・理解し、組織の質の向上や企業へのエンゲージメントを高める効力があると考えられる

理想の働き方の条件として「柔軟に働くこと」が以前よりも重要視されている。新しい行動習慣により、ヒトはいかに個人のライフスタイルに合った働き方ができるか、ということを企業に求めているように感じられる。そして企業側もこの変化に適応したオフィス改革を迅速に進めることが必要だ。フレキシブルオフィスやデジタルワークプレイスの活用は、この「柔軟に働くこと」を実現するための手段として企業が実践しているケースともいえる。柔軟であることは、多様な個を包括・理解し、組織の質の向上や企業へのエンゲージメントを高める効力があると考えられる。アフターコロナにおける働き方改革を実現するオフィスには、個と多様性を本質的に理解することが不可欠であり、その理解から得られた要素をオフィス戦略にどう落とし込むかによって結果が大きく変わってくるだろう。

「訪れる価値」を生むオフィスでコロナ時代のオフィス像を示した企業事例

企業によって様々なオフィス改革がある中、コロナ時代に本社オフィスレイアウト・デザインを大幅に改装し、「場」の価値を再定義させた企業事例も存在する。若手の従業員や人材採用の視点からデザイン性に富んだ魅力的なオフィスを構築することで、行きたくなるような働く場所を作り上げた。オンラインではなくリアルな場所に重きを置いたオフィス戦略は功を奏し、今では従業員の出社率が95%にのぼっているという。アフターコロナに向けたオフィス像を多くの企業が模索している中、このケースは1つの新しい成功モデルを生み出したのだ。

理想の働き方は時代によって異なり、今がちょうどその過渡期のタイミングともいえる。今までの当たり前が通用しないからこそ、根底にある企業の考えを改めて見つめ直し、再定義することで未来の働き方改革におけるオフィス改革の促進に寄与していくだろう。

オフィス関連の成功事例を見る 

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。