記事

仕事と遊びのオンライン化で急成長するデータセンター市場

スマートフォンなどのデジタル機器の普及に伴い、データ通信量が爆発的に増加している。コロナ禍をきっかけに人々の生活にオンラインは欠かせなくなり、データ通信のインフラであるデータセンターの需要も急拡大している。データセンター市場が急成長している欧州の状況を追った。

2021年 03月 24日

データセンター開発は過去最高を更新予定の欧州市場

データセンター人気が沸騰しているのはアジア太平洋地域だけではない。デジタルサービスに対する需要が急増し、生活や労働面でのオンライン化が進むにつれて、欧州全域でデータセンターが急増しているのだ。

JLLの調査によると2020年におけるデータセンター開発件数は前年を遥かに上回っていることがわかった。そして2021年も過去最高を更新することが予想される。約80MWの予約取引が2021年に開始される予定で、これにはハイパースケールデータセンターの運営事業者であるColt Date Centre Servicesが成約した案件も含まれる。

データセンター開発が増加する背景について、オルタナティブ資産に詳しいJLL シニア・リサーチ・アナリスト ダニエル・ソープは「クラウドストレージはインターネット、ゲーム、ストリーミング・サービスに接続されているデバイスが増え、5Gの登場が差し迫ったことから、すでにデータ通信の急激な増加をもたらしている」と指摘する。

そして、コロナ禍において同僚、友人、家族とのコミュニケーションを維持し、Eコマースの利便性を享受するためにオンラインサービスの利用者が急増し、企業のクラウド利用は過去最高を記録した。 欧州の主要データセンター市場であるフランクフルト、ロンドン、アムステルダム、ダブリン、パリの2020年の設備容量は143MW。前年同期比15%増の2,076MWとなった。

成長モードに入った欧州データセンター市場

コロケーション・プロバイダーは、複数の企業に賃貸用のデータセンターを提供しており、GoogleやMicrosoftなどの大口需要家はスペースの拡大を求めている。アイルランドではTikTokが約5億米ドルのデータセンターを建設予定だ。

JLLの調査ではアムステルダム、ダブリン、フランクフルト、ロンドン、パリで引き続きデータセンター開発が好まれている。フランクフルトはアムステルダムを抜いて2番目に規模の大きいコロケーション市場となり、2019年には賃借スペースを18%増加させ、欧州の主要5市場で最も多くのスペースを提供している。

しかし、2019年以降、5%成長しているマドリードのようなデータセンターの新興市場が台頭し始めた。Digital Realtyと合併したInterxionが34MWのデータセンターを開発するためにマドリードの土地を購入したのが一例だ。

ソープは「前述した欧州の5大主要市場は5年以内に規模が倍増する見通しであり、持続的成長が難しいことから新興市場に注目が集まっている。そして、このことは通信遅延に対する、いわゆるエッジ・データセンターの需要がより多くなることを示唆している。エッジ・データセンターは需要の旺盛な都市により近く、施設規模はより小さい」と述べている。

開発規制がデータセンター市場の新規参入者に圧力

デベロッパーが住宅・倉庫部門との競争に直面している都市部では、適切なスペースの確保が依然として課題となっている。 例えば、アムステルダムでは電力消費と土地の利用可能性に関する懸念からデータセンター開発に当初は難色を示していた。

ソープは「すでに競争が激しい市場における開発規制は、主要市場・新興市場の双方で地価を押し上げながら、データセンター市場の新規参入者にさらなる圧力をかけている」との見解を示す。

高度な省エネ化を求められる欧州データセンター市場

世界的に環境配慮への関心が高まる中で、エネルギー効率をさらに向上させるためには、その支出の一部が必要となるだろう。ただし、データセンターはすでに他の多くの産業よりも省エネ化に注力している。開発件数は近年劇的に増加しているが、世界のエネルギー消費量のわずか1%に過ぎず、2010年と同じ割合だ。

それにもかかわらず、欧州委員会は欧州グリーン取引の一環としてデータセンターに対して「2030年までにカーボンニュートラルであるべき」と宣言した。 新規開発されるデータセンターはPUE(電力使用効率)が1.2以下、既存データセンターはPUE1.3以下にしなくてはならない。

ソープは「冷却などの分野で継続的なイノベーションが鍵となるだろう」と指摘する。スコットランドでは、Microsoftが水中データセンターを試した結果、陸上サーバーよりもサーバーの障害率がはるかに低いことがわかった。

「5Gではより多くのイノベーションが必要とされる。通信遅延の少ない接続性に対する需要によって2022年にはデータセンターの需要を大幅に押し上げるだろう。自動運転車両が登場し、Eコマースが拡大する。そしてIoT家電が増えていくだろう」(ソープ)

データ通信環境が進化し続けることで、より効率的なデータセンターが出現し、巨大な需要を抱える都市部にデータセンター開発が波及していきそうだ。

データセンターを含む不動産投資市場の最新動向を見る

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。