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外資系ホテルを地方都市へ誘致するのは誰?

日本では建物オーナーとオペレーターの間で賃貸借契約を締結してホテル経営がなされることが多いが、こと外資系ホテルになると話が大きく異なる。「マネジメントコントラクト(MC)」と呼ばれ、いわゆる「運営受託契約」がスタンダードになる。

3月 20, 2018

賃貸借契約よりも収益増

グローバルスタンダードの形成に大きな影響を及ぼす米国ではホテル投資・開発における「所有・経営・運営」といった機能分化が進んでいる。この場合、まず建物オーナーとホテル経営会社(建物オーナーが設立するケースが多い)が賃貸借契約を結び、経営会社とホテルオペレーターがホテル運営に関するMCを締結する。オペレーターはホテルブランドとその営業ノウハウの提供、幹部社員を派遣しスタッフの採用等も担当する。ホテル運営における実務面を一手に引き受ける。一方、経営会社はホテル経営におけるすべての収益を享受し、その中からオペレーターへ一定額の運営フィーを支払うことになる。賃貸借契約方式の場合、建物オーナーが得られるのはホテル営業利益(GOP)のおおよそ7割程度、残り3割がテナントであるオペレーターに残ることになる。MCの場合は経営会社がスタッフの雇用や損益が変動する等、相応の事業リスクを背負うことになり、そのリスクに応じたより高いリターンが見込める。GOPの9割程度を得られるという。MCが主流の海外では経営会社(建物オーナー)がリスクをコントロールしつつキャッシュフローの多くを享受し、ホテルの総体的な資産価値は結果的により大きくなる。

インバウンドに沸く地方都市- 外資系ホテルを地方へ誘致

これまで外資系ホテルを積極的に誘致してきたのは一握りの大手デベロッパーに限られており、都心一等地で行われる再開発プロジェクトが主体だった。しかし、訪日外国人観光客が爆発的に増加する中で、インバウンドの興味は地方都市に波及しており、外資系ホテルも地方都市への進出を真剣に検討し始めている。いわば地方都市でトロフィー案件となる外資系ホテルを誘致する「可能性」が開けてきたということなのだが、その課題となるのが前述したMCといえる。外資系ホテルの国内進出を多数サポートしてきたJLL日本ホテルズ&ホスピタリティ事業部 川井孝洋によると「日本において主流の賃貸借契約ではホテル運営のすべてをオペレーターが担い、オーナーはその運営方針に口を出せない半面、固定賃料であれば長期的に安定した賃料収益を得ることができた。しかし、MCにおいてオーナーがホテル経営会社を設立する場合、ホテル運営に係るリスクの多くを負担しなくてはならない。オペレーター側からノウハウ・人材が提供されるとはいえ、オペレーターには基本的には常に一定の運営手数料が入るため、例えば、コスト削減などに関して必ずしもホテル経営会社(オーナー)と利害が一致するとは限らない。オーナー側がホテル経営に通じていないと、ホテルの資産価値を上げるどころかオペレーターの管理すらできなくなる」と、そのリスクについて説明する。

オペレーターのお目付け役となるアセットマネージャー- 外資系ホテルを地方へ誘致

現在、国内大手デベロッパーの多くがホテル事業への参入を表明し、彼らが手掛ける大型再開発プロジェクトでは「日本初進出」を売りにした外資系ホテルの誘致を積極的に進めている。自らホテル経営会社を設立し、もしくはホテル経営に詳しいアセットマネージャーを抱え込み、万全の体制で外資系ホテルとの付き合いを深めているが、こと地方都市に目を向けると国内大手デベロッパーの未進出エリアも当然存在する。仮に当該エリアに外資系ホテルが進出の意向を示しても、オーナーが一定の運営リスクを背負うMCという馴染みのない商慣習がネックになり、話そのものが頓挫してしまう。あるいは、馴染みのある賃貸借契約に応じてくれる国内オペレーターを選好する。川井によるとこうした事例は水面下では意外に少なくないそうだ。ニュースバリューの高い外資系ホテルを誘致できず、誘致されるのは目新しさに欠ける国内の宿泊特化型ホテルばかり…アップサイドの追求機会を逃してきたともいえそうだ。

では、外資系ホテルを誘致するにはどうするべきか。論点となるのはMCに加えて、契約締結後にいかにオペレーターに最大限パフォーマンスを発揮してもらうかに他ならない。この点についてオペレーターのお目付け役として起用される「ホテルアセットマネージャー」の存在が重要となる。川井によると「ホテル運営は外部要因の影響を受けやすく、不動産アセットの中でも収益変動が大きい、専門性の高い分野とされている。そのため、ホテル経営に通じたアセットマネージャーいかんで収益は大きく変わる」と指摘。ホテルアセットマネージャーはオーナーの代弁者としてホテル経営をモニターし、リスクをコントロールしながら収益の最大化を目指す。具体的にはオペレーターのパフォーマンスを測定し、ホテル運営における課題の抽出とその打開策を策定し、オペレーターを監督する役割を担う。

日本においては上場REITや不動産投資ファンド、ホテル事業を手掛けるデベロッパー・大手不動産会社はホテルアセットマネージャーを自前で雇用しているが、地方においては、その地方の有力不動産会社や有力デベロッパーであったとしても、自社内にホテルアセットマネージャーを雇用しているケースは稀だ。地方に進出したい外資系ホテルと、外資系ホテルを誘致したい地方の間に存在するギャップは、ホテルアセットマネジメントサービスを通じた、ホテル運営に通じた専門家のノウハウの活用により埋まり、外資系ホテルの地方進出が加速する可能性がある。

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