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データセンター人気が過熱している理由

投資家はアジア太平洋地域を安定市場として認識している。中でもデータセンターは今後大幅な需要拡大が見込める投資セクターとして注目を浴びている。

2021年 02月 12日
海外投資家が参入する日本のデータセンター市場

フランスの保険会社AXAの投資部門が2020年12月初旬に日本初となるデータセンターを取得した事例は、インターネット利用が急増する中、不動産セクターへの投資意欲が旺盛であることを示している。

AXAは、東京で最大級のデータセンターであるサーバー施設を約220億円で購入した。

JLLアジア太平洋地域 キャピタルマーケット リサーチヘッド レジーナ・リムは「増え続けるインターネット利用者とアジア太平洋地域における接続性の向上によって、データセンターが多くの投資家のポートフォリオにおいて重要な資産となっていることは間違いない」と指摘する。

AXAの案件は、物流施設やライフサイエンス施設など、新型コロナによる不況下でも業績が良かった不動産セクターへ投資家の動きが広がっていることを示唆している。

クラウドコンピューティングのニーズを満たすためのインターネット利用が急増しており、グーグル、アマゾン、マイクロソフト等のテクノロジー企業がサービスの急拡大を報告している。ビジネスについての洞察を提供するResearch and Markets社によれば、アジア太平洋地域のクラウドコンピューティング収入は2021年-2025年に87%増加し、データセンターの収入は22%増加する見通しだ。

AXAの案件はまた、デジタルインフラ企業であるEquinixがシンガポールで第5号となるデータセンター開発に1億4,400万米ドルを投じると発表した日とも重なった。なおEquinixは2020年4月にも、シンガポールのソブリンファンドであるGICと10億米ドルの合弁事業を設立し、東京2カ所と大阪1カ所でデータセンターの建設計画を発表している。

日本のデータセンター市場の優位性

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 シニアディレクター 浅木 文規は「アジア太平洋地域では通常、シンガポール、香港、シドニー、東京が4つのデータセンターハブとなっており、経済規模と人口が選択の理由となっている。データ保護の重要性が増し、データセンターの主権、すなわち、これを取り巻く法令の適用がますます不可欠となるにつれて、インフラ、電力供給、セキュリティが安定した日本の人気が高まっている」と説明する。

日本が従来から安全な「避難港」として認められていることも、オフィス中心のポートフォリオの分散化を求める投資家の共感を呼んだ。

「投資家は依然としてオフィスをコア資産とみているものの、データセンター等のオルタナティブ資産への投資拡大を求める相談を受けるようになっている。データセンター開発にとって注目すべきプライムエリアは、東京の都心部では大手町、東部では印西、西部では府中、多摩、および三鷹だ」(浅木)

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東南アジアのデータセンター投資はシンガポール以外へ波及

シンガポールも、同じ理由でホットスポット化している。FacebookやZoomがデータセンターをシンガポールに設置することを選択しており、前者はアジア第1号となるデータセンターを2022年までに竣工予定、後者は2020年4月に操業を開始した。 

リムは「データセンター投資が主流になりつつあるだけではなく、とりわけ経済が安定した国の物件は、投資家にとって大きな回復力と成長の将来性を持っているとみられている。ただし、土地不足が深刻なシンガポールがデータセンターの建設制限に動いたことで、東南アジアの他の国々が取り組みを強化し、投資家にアピールする道が開ける可能性がある」と指摘する。

データセンター事業者のDigital Realtyによれば、シンガポールは現在、東南アジアにおけるデータセンター供給の60%近くを占めるという。 

しかし、隣国インドネシアでは、2025年末までにデータセンター市場への累積投資額が15億米ドルに達すると予測されており、勢力を増している。2020年3月に、グーグルが2021年内に同国首都へのデータセンター開設計画を発表したことも追い風となった。 

リムは「投資家が求めている市場に需要を満たすだけの十分なデータセンターが存在しているかどうか、また、投資家は他のパートナーとどのように連携して新たなデータセンターを開発していくのかが問われている」と締めくくった。

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連絡先 浅木 文規

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 シニアディレクター

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