記事

福岡都市圏の分譲・賃貸マンション価格状況

「億ション」の新規供給、坪単価500万円超で販売される中古マンションも見られるようになり、福岡都市圏のマンション価格高騰が顕著になっている。地価と建築費の上昇に歯止めがかからず、今後もマンション価格が高止まりする可能性が高いが、若年層の流入により需給は安定している。

2023年 02月 28日
坪単価500万円超の億ションも登場

福岡都市圏のマンション価格について近年、分譲価格の急激な上昇について各所で耳にする。実際の分譲価格は福岡都市圏平均で5年前から約2割程度上昇している。加えて、福岡都市圏中心部の分譲価格はもはや一般市民では手を出せない水準にまで達している。具体的には販売坪単価500万円を超える物件が散見されるようになり、実需タイプの間取りでは、いわゆる「億ション」となっている状況だ。

価格高騰の2つの要因

1. マンション素地の価格高騰

この価格上昇の要因の一つにはマンション素地の価格高騰があり、この傾向はコロナ禍前から続いている。マンション適地である、地籍がまとまった商業地域の土地は、コロナ禍直前にホテル業者が買い進めたため取引価格水準が乱高した。

その後、コロナ禍でホテル業者はマーケットから撤退したが、一旦上昇した価格目線は下がることなく、余力のあるデベロッパーのみが土地を購入できる状態となっている。

2. 建築費の上昇

もう一つの要因に建築費の上昇がある。建築費の資材価格は直近2年で約3割上昇している。この上昇基調は落ち着きを見せることなく、2023年に入っても見積金額の有効期間は2-3カ月となっており、多くのプロジェクトで建築費の見直しが必要な状況となっている。

上記要因によりデベロッパーの仕入価格は事業収支上、大変厳しいものとなっており、事情を考慮すれば販売価格への転嫁は致し方ない状態にある。
 

分譲マンションは物件原価から販売価格を試算するため価格転嫁が可能であり、現時点では分譲マンション業者に仕入れの分がある

ここで、分譲マンションと賃貸マンションの販売価格についてそれぞれの視点から考えると、賃貸マンションはその値付けの根拠を利回りに求めることが多く、家賃を根拠に販売価格を試算することを考えれば、(土地価格の上昇ほど家賃の上昇は見込めないことから)原価の高騰を価格に転嫁することは難しい。一方で、分譲マンションは物件原価から販売価格を試算するため価格転嫁が可能であり、現時点では分譲マンション業社に仕入れの分があるようだ。

上記のような状況から、賃貸マンションデベロッパーは開発素地として古屋付の物件を購入し、自社で立退きを行うなどの工夫をして土地手当を行っているようだ。

購読

さらにインサイトをお探しですか?アップデートを見逃さない

グローバルな事業用不動産市場から最新のニュース、インサイト、投資機会を受け取る。

賃貸マンション市場の現状

地場の賃貸マンションデベロッパーがこうした需要に応えるための高級賃貸マンションの開発に着手する案件も見受けられる

賃貸マンションのマーケットに注目すると、政令指定都市の中でも特に若年層の人口増加が予想されている福岡市は、市外からの人口流入を受け、単身者用マンションの需要が底堅い。堅調な需要を受け、単身者用の間取りで人気の高い1LDKタイプなどは家賃水準が上昇している。

また、一方で、中央資本企業の管理職クラス転勤者や外資系企業の従業員など家賃負担力の高い層を受け入れる賃貸物件が少ない状況にある。地場の賃貸マンションデベロッパーがこうした需要に応えるための高級賃貸マンションの開発に着手する案件も見受けられるようになった。

分譲マンション市場の現状

分譲マンションについては、新築の販売価格高騰を受け、中古マンションについても高値で取引されている。築浅でなくても立地やブランドが優位な物件は坪単価500万円で値付けされている。数年前に購入した部屋が今となっては購入時よりも高値で売却できる状態だ。福岡都市圏のマンション販売価格については、もはや新築と中古の価格チェイスの様相を呈している。

価格高騰も需要は堅調

上記の通り、福岡の地価上昇・建築費上昇傾向について収まる様子を見せない現状では、マンション価格はまだまだ高騰が継続すると予想される。しかし、高いながらも売れている状況の背景には住宅取得層世帯に共働きが浸透し、所謂パワーカップルが増加していることも考えられる。

若年人口が今後も増加していくとされる福岡市では「マンション価格高騰」といえど需給のバランスが取れているのかもしれない。

居住用不動産に関するJLLのサービスはこちら

連絡先 吉田 興右

JLL日本 福岡支社 キャピタルマーケット事業部 シニアディレクター

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。

あなたの投資の目標は何ですか?

世界中にある投資機会と資本源をご覧下さい。そして、JLLがどのようにお客様の投資目標の達成を支援できるかお尋ねください。