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「不動産投資の花形」への返り咲きも近い昨今のオフィス投資市場

2023年通年における日本のオフィス投資額は停滞したものの、2024年にはその状況が一変。2024年第1四半期の国内不動産投資額においてオフィスが51%を占めるなど、大躍進を遂げている。オフィス賃貸市場の回復を背景に、2024年後半にかけてオフィスが“不動産投資の花形”へと返り咲くだろう。

2024年 07月 25日
2024年第1四半期の投資額でオフィスが51%を占める

街から人影が消えた新型コロナウイルスの感染拡大時、不動産投資の側面で大きな打撃を受けたセクターをあげるとすれば、いの一番に商業が挙げられよう。

一方で、オフィスも当時は需要面の懸念から投資額が大きく減少したセクターのひとつであったことは記憶に新しい。コロナ渦が過去のことになった現在、街にはオフィスワーカーが戻って活気がみなぎっているなか、オフィス賃貸市場も好調である。それに呼応する形でオフィス投資への関心も再び高まっている。2024年後半にかけてのオフィス投資について考察していきたい。

2024年第1四半期の国内不動産投資全体に占めるオフィスの割合は51%に上っている。これは直近では2021年の47%を上回る、過去5年間で最も高い割合を記録している。久し振りにオフィスが投資額の半分を占めるという状況となり、やはりオフィスは「不動産投資の花形」であることが数字で示されたといえよう。

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オフィス投資が大幅増を記録した背景
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2024年第1四半期は117件のオフィスが取引され、取引総額8,900億円近くに及ぶ。1物件あたりの平均価格は76億円と、2023年の約1.7倍

こうした「大幅増」を記録した背景には、大型のオフィス取引案件が2024年に入って一気に増加したことと無関係ではないだろう。

2023年におけるオフィス取引は取引価格にして1兆8,296億円、取引物件数は404物件であり、1物件あたりの平均取引価格が約45億円であった半面、2024年第1四半期は117件のオフィスが取引され、取引総額8,900億円近くに及ぶ。1物件あたりの平均価格は76億円と、2023年の約1.7倍となっている。

相次ぐ大型取引

大型案件の主な例として真っ先に挙げられるのは「青山ビル」であろう。香港ガウ・キャピタルが国内投資家に売却した1972年築のオフィスビルは近隣の小規模オフィス2物件を含めて900億円を超えたとされており、オフィスビルの1,000億円級の取引としては2022年末に4,360 億円の値を付けた「大手町プレイス」以来の取引であった。

そのほかにも日本ビルファンド投資法人による「グラントウキョウサウスタワー」の持ち分売却や、旧ミネベアミツミ本社ビルである「プライム高輪ゲートウェイ」の取引、大阪ではオリックス不動産投資法人による「サンマリオンタワー」の取得など、200億円前後のオフィスビルの売却が東京や大阪で相次いでいる。

オフィス賃貸市場が底打ち、賃料上昇フェーズへ

賃料上昇が見込めるフェーズに入っており、投資に見合うリターンが見込めるセクターへとオフィスは変貌し始めている

こうした大型案件が急速に増加した背景として真っ先に挙げられるのがオフィス賃貸市場の回復であろう。JLLが毎期発行している「プロパティクロック」では、Aグレード、Bグレードともに2024年第1四半期末時点で賃料サイクルのボトムに位置している

つまり、今後は賃料上昇が見込めるフェーズに入っており、投資に見合うリターンが見込めるセクターへとオフィスは変貌し始めているといえよう。

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2024年後半はオフィスが不動産投資の目玉に

利回りについては今後、オフィス投資の増加が期待されるなか、価格調整も含め大きな変化はないものと考えられる。

また、現時点で大幅に金利が上昇するという見立てもなく、各金融機関ともベースレート分の上昇を除いてはこれまでの貸し出し条件を維持しているとされる。

つまり、引き続き極めて良好な資金調達環境は継続しており、これも取得利回りの低位安定を支える原動力であるといえよう。

オフィス取引については2024年後半に大型案件の取引がいくつか予定されており、さらなる増加が見込まれる。勢いづく賃貸市場にひっぱられる形で投資妙味のあるセクターへと再起しつつあるオフィス投資市場は2024年後半の不動産投資における目玉となろう。

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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