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オフィス投資市場:2023年の振り返りと2024年の展望

2023年に引き続き、2024年も好調を維持する日本の不動産投資市場。世界的にみても数少ない有望市場として認知されているが、オフィス投資額は鈍化傾向にある。外資系投資家がオフィス投資を手控えていることが一つの要因だが、2024年は復活の機運が高まりつつあるようだ。

2024年 04月 09日
日本の投資市場は引き続き好調もオフィス投資額は減少

国内の不動産投資市場は第4 四半期に少しスローダウンしたものの、通年では前年比4%増という結果となった。これは世界の主要マーケットにおいて唯一のプラス成長だったことからも、日本への集中的な投資が引き続き続いていることを示している。

2024年の日本の不動産投資市場に関する解説記事はこちら

一方で投資セクターにおいては明暗が分かれる結果となり、特にオフィス投資は大きく減少している。この背景と2024年のオフィス投資の展望について分析したい。

外資系投資家のオフィス投資熱に水を差す3つの理由

2023年通年のオフィスの投資額は1兆1,000億円余と、1兆円はキープしたものの前年比で26%の減少となった。この減少の最も大きい要因は外資系機関投資家によるオフィス投資が極端に減少したことにある。国内オフィス投資額のうち外資系投資家が占める割合は2022年には20%を記録していたが、2023年はわずか5%となっており、外資系投資家のオフィス投資熱はすっかり冷めている感すらある。

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米国とはオフィス帰還率も空室率も段違いに良い日本においてもオフィス投資に積極的に動けないという背景がある

この外資系投資家がオフィス投資を控えている理由として、次の3つが挙げられよう。

1. リモートワークの一般化に伴うオフィス需要の減退

世界の主要マーケットにおいて、コロナ以降リモートワークが働き方のひとつとして完全に認知され一般化してきている。その傾向は特に北米で強くみられ、JLLの調査では2024年2月時点のオフィス帰還率はサンフランシスコで45%、ニューヨークでも51%と、全従業員の半数はいまだリモートワークを実施していることがうかがえる。

こうした状況はオフィス賃貸需要に著しく影響をあたえており、現在のサンフランシスコとニューヨークのオフィス空室率はそれぞれ32%と17%と、極めて高い状況が続いている。

特に米国を本拠とする外資系投資家においてはこうした状況を踏まえ、全世界的にオフィスへの投資を控えている関係で、米国とはオフィス帰還率も空室率も段違いに良い日本においてもオフィス投資に積極的に動けないという背景がある。

2. 国内市場における「投資ストラテジー」に見合う投資物件の枯渇

2024年2月末時点で米国の10年物国債の利回りは5%以上が続いており、コア系の投資マネーは潜在的リスクのある不動産より国債へ投資をしたほうがリスクも最小化でき、かつ高利回りを確保できる状況にある。したがって不動産へ流れる投資マネーはより高い利回りを狙ったバリューアッド、あるいはオポチュニスティック系に偏ることとなる。

こうした「リスクを取る不動産投資」は、オフィスにおいては全館空室になって地道なリーシング活動によってテナントを埋め戻したり、築古のビルを安価で取得して多額の資本的支出によるリノベーションを実行、その上で市場賃料に匹敵、場合によってはそれを超える賃料でテナントを誘致して高値で売却するといった手法がとられることが一般的だ。

しかしながら、2024年2月末時点の東京都心部のAグレードオフィスの空室率は4%前後で、そうしたリスク系マネーの行先となる物件群が極めて少ないのが現状である。国内で活動している外資系投資家のほとんどはこうしたバリューアッド、あるはオポチュニスティック系の投資先を探しており、それに見合う投資先のないオフィスにおいては「投資したくてもできない」という状況があるものと考えられる。

3. 好調なマーケット環境

先に述べた通り、日本は世界でも唯一、前年比でプラス成長を見せたマーケットであり、取引自体は極めて活発に行われている。優良物件においては数多くの入札が集まることもしばしばで、ひいては物件価格の高騰、利回りの一層の低下などにつながっている。外資系投資家はこのタイミングでポートフォリオの一部を売却することでキャピタルゲインを享受できることから、現時点では取得より売却へ舵を切っているケースが増えている。

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2024年から国内コア投資家の動きが活発化、外資系投資家への呼び水に

外資系投資家がオフィス投資に乗り出す可能性も(画像はイメージ)

外資系投資家にとっても絶好の売却機会であると同時に、物件を入れ替えるにあたってオフィス物件を検討する流れも出てくると考えられる

こうした要因が重なったこともあり、2023年はオフィスにとって若干厳しい状況ではあったが、2024年に入ってその状況に若干の変化がみられている。特に国内のコア系投資家の動きが活発化していることがその最たるものである。2023年から国内…特にインフラ系事業会社の不動産子会社によるオフィス物件取得が顕在化してきているが、今年にはいって上場リート、私募リートなども積極的に取得に回っている。

外資系投資家が買い控えるなか、こうした国内のコア系投資家による多数の物件取得は、オフィスが持つ安定性などが国内投資家においてはすでに周知の事実であり、安心して投資に回っていることが背景にあろう。

また、こうした国内勢の活発な動きは物件を供給する側に回っている外資系投資家にとっても絶好の売却機会であると同時に、物件を入れ替えるにあたってオフィス物件を検討する流れも出てくると考えられる

賃貸市場も急速に回復、2024年はオフィス投資復活へ

2024年は日本のオフィス投資市場の復活が期待される(画像はイメージ) 画像提供:PIXTA

都心のAグレードオフィスにおいてはすでに賃料・空室率ともに底打ち感がみられるなど、賃貸市場も急速に回復しつつある。

2024年の東京オフィス賃貸市場に関する記事はこちら

国内勢が旗振り役となってオフィス投資は今後、前年を上回る投資がみられると考えられる。海外勢を含めて今後のオフィス投資は注目に値しよう。

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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