記事

大型取引が堅調な大阪投資市場

コロナ禍で賃貸市場が後退局面に転じたものの、投資市場は堅調に推移している。中でも100億円以上の大型取引が活発に行われており、投資家の大阪における取得競争が熾烈となっている。アフターコロナもこのトレンドが継続するだろう。

2021年 11月 18日

コロナ禍で各セクターの賃貸市場が総じて悪化する中、投資市場は活況な状況が続いている。東京では今後の市況回復に時間を要すると判断する投資家による利益確定の売り物件の増加に加えて、コロナ禍で痛みの大きい事業会社による自社物件が売り物件として市場に出てくるケースが相次いでおり、大型取引が活発となっている(参照記事:大型物件の取引が増加する東京オフィス市場 2021年9月14日掲載)。これに対して大阪では東京と比べて事業会社による売り物件がわずかであるにもかかわらず大型取引が堅調に成立している。

2021年の大型取引は過去5年で最多の見込み

2021年の大阪における100億円超/1物件の投資額は、見込み分を含めると約2,000億円に達し、大型取引は過去5年間で最も多くなる見通しである。

セクター別にみると、オフィスが最も多く、次いで物流施設、リテールとなっている。各セクターにバランス良く投資が行われており、大阪全体が投資対象として評価されていることがうかがえる。オフィスはコロナ禍の影響で賃貸市場が悪化しているものの、2020-21年のコロナ禍においては需要の減退が予想よりも限定的であること、また2022年以降に本格化する新規供給も多くの投資家が関心を示すBグレードビルにおいては、その影響が軽微にとどまると判断して大型取引に踏み切るケースが多くみられる。

大阪オフィス市場に関する記事を見る

物流施設は、賃貸市場で供給の増加が続くものの、コロナ禍が需要の拡大を後押しており、需給は依然としてひっ迫している。こうした状況を受けて投資家の大型投資への意欲が高い状況が続いている。リテールについては、賃貸市場がコロナ禍の影響が直撃しているにもかかわらず、プライムエリアにおいてはアフターコロナを見据えて物件の希少性や非代替性を評価して、積極的に投資機会を模索する投資家が多い。その他では、近年、投資対象として注目度の高いデータセンター用の用地が取引された。

投資主体をみると、大型の売り物件が市場に出た場合、国内外いずれも複数の投資家が取得を検討するが、最終的に取得にいたるのは外資のコア投資家が圧倒的に多い。この傾向はコロナ以前から変わっていない。

2022年以降もトレンドが継続
購読

さらにインサイトをお探しですか?アップデートを見逃さない

グローバルな事業用不動産市場から最新のニュース、インサイト、投資機会を受け取る。

大阪の投資市場は2022年以降も2021年以前とほぼ同様のトレンドとなる可能性が高いだろう。年間投資額は2017-2021年の間、概ね1,500-2,000億円で安定している。投資家の投資意欲の高まりを考えると投資額が年々増加してもおかしくない状況であるが、2022年以降も同様と見込まれる。その理由は、オフィスはAグレードビルに流動性がほとんどなく引き続き取引の主戦場はBグレードビルであり、リテールは数年に1度出るか出ないかのプライムエリアの売り物件となるため、投資額が安定的に積み上がることは考えにくい。既に投資家の関心度が高い物流施設やデータセンターが今後、投資額を下支えしていくものとみられる。

投資家の大阪への関心が低下する可能性は低く、今後も数少ない大型の投資機会は熾烈な取得競争が繰り広げられる可能性が高い。投資家が投資を実現するためには大阪に対して中長期的な視点で物件を見極めることが肝要である。

日本の不動産投資市場における最新動向を見る

連絡先 山口 武

JLL日本 関西支社 リサーチディレクター

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。

あなたの投資の目標は何ですか?

世界中にある投資機会と資本源をご覧下さい。そして、JLLがどのようにお客様の投資目標の達成を支援できるかお尋ねください。