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AIの台頭が生み出す新たな不動産需要

企業のみならず、自治体や大学等でも生成AIを活用されるようになっている。こうしたAIの需要拡大は、そのまま新たな不動産需要を生み出す源泉ともなりえる。AIによって生み出されるであろう5つの不動産需要とは?

2023年 08月 29日
AI産業の成長が不動産需要を喚起する

急速に拡大する AI エコシステムとそれをサポートするインフラは、世界の様々な市場で不動産に対する新たな需要を喚起するだろう

2023年4月、生成AI「ChatGPT」を開発したOpenAI社のサム・アルトマンCEOが来日し、岸田首相と会談する等、日本において生成AI開発に注目が集まったことは記憶に新しい。その影響力は凄まじく、企業のみならず、行政や大学等でも生成AIの利用開始を発表するほどだ。

AIに対する期待の高さは不動産業界も同様だ。JLLのグローバル調査(英語版)によると、投資家・デベロッパー・テナントのいずれもAIに対する期待感を高めており、「AIが今後3年間で不動産に最も大きな影響を与えるテクノロジーのトップ3に入る」と回答しており、中でもAIの分析能力と、不動産需要の新たな道を切り開くAIの活用方法が多くの関心を集めている。

JLLグローバル 不動産テック グローバル リサーチ アソシエイト ワン・ユハンは「AI には不動産を再構築する大きな可能性があり、新しい市場・資産タイプの出現から、投資手法・収益モデルの革新に至るまで多大な影響を及ぼしている。急速に拡大する AI エコシステムとそれをサポートするインフラは、世界の様々な市場で不動産に対する新たな需要を喚起するだろう」と力を込める。

AIによって不動産需要が高まる5分野とは?

では、AIが普及することで不動産業界にどのような影響で現れるのだろうか。下記の5つの分野で、不動産の需要が拡大することが見込まれる。

主要なIT集積地やAI研究に秀でた大学等の学術機関の近くにAI関連企業が拠点を開設するケースがグローバルで増えつつある

1. AI集積地

AIを有効活用するための専門スキルを有する人材をいかに育成・確保するかが大きな課題となっている。どの場所で事業を展開するのが最も有効か、AI開発の高度人材をいかに獲得できるか、AIを開発するテクノロジー企業や投資家の意思決定を促す大きな要因となっている。

そうした中、AI開発に関するエコシステムの構築とAI人材の獲得を寄与する不動産市場…多くの場合は主要なIT集積地やAI研究に秀でた大学等の学術機関の近くにAI関連企業が拠点を開設するケースがグローバルで増えつつある。

例えば、ChatGPTを開発したOpenAI社は2023年6月、ロンドンに初の海外拠点を開設すると発表した他、受託電子機器メーカーのウィストロンが台湾・新竹市のビジネスパークにAIや5G関連製品の新工場を建設する等、研究開発拠点や工場の誘致による不動産需要の拡大が挙げられる。中国・上海でもAIに関する企業集積地化を進めている。

2. データセンター開発

AIに必要な膨大な量のデータ処理・保存により、データセンターの需要が拡大し、世界的にデータセンター開発が進められている。JLL のグローバル調査レポート(英語版)によると、開発中のハイパースケールデータセンターは5年前には500施設だったが、 2024年までに2倍に増加すると予想している。大量のデータ処理に対応するため、100MW以上の大規模施設であるハイパースケールデータセンターが開発の主流になっている。

一方、膨大な電力を使用するデータセンターは「環境配慮」に対するプレッシャーにさらされており、新規開発されたデータセンターの多くは環境配慮型とされる。

3. AIを活用したスマートビルディング

地球温暖化に歯止めがかからない現状、不動産のサステナビリティ対策が求められており、AI等のテクノロジーを駆使してサステナビリティ性能を引き出すスマートビルディングに大きな期待が集まっている。

例えば、香港のスマートビルディング「One Taikoo Place」では、AI によって異なる建物管理システムや設備、データ等を統合し、将来的な保全計画と施設運営を改善することで省エネを実現している。

スマートビルディングに関するJLLのサービスはこちら

AIの活用が期待されるのはオフィスビルだけではない。JLLアジア太平洋地域 COO アルバート・オビディは「物流倉庫においてすでに高度なAIソリューションが使用されているが、その対象となるのは必ずしも施設管理だけではない。AIにより個々の物流倉庫に対する役割を分析することができ、生産拠点や流通拠点の配置等のサプライチェーン戦略に対する最適解を導き出せる可能性がある」と説明する。

4. 新たな投資機会

より詳細なマーケット分析を実現するべく、AI の導入が進んでいる。膨大なデータ量から一定の規則性を見つけ出し、詳細は分析を可能にするAIの機能は、投資の目的やリスク許容度、マーケット状況に合わせて最適な投資戦略を導き出すことに寄与する。例えば、JLLが提供する投資家向けサービス「キャピタルマーケットクオンツ」は、世界中の物件情報と取引情報に関する過去20年超のデータをAIで分析したインサイトを提供し、投資家の意思決定をサポートしている。

5. パーソナル化されたオフィス空間

AI の進歩により、さらに一歩踏み込んだワークプレイス改革の実現が期待されている。例えば、従業員の行動パターンに関するオフィス内に設置したIoTセンサーによって収集した従業員の行動データをAIが分析し、個人の好みに基づいて室温や照度、机の高さ等の執務環境を自動的に調整する等、パーソナル化されたオフィス空間を実現することも可能だ。

急成長が見込まれる新たな産業が台頭することで、不動産の需要が急激に拡大することは、ITスタートアップがグローバル企業に瞬く間に成長したことからも窺える。

AI産業の今後の発展から目が離せない。

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