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環境不動産の新しい価値とサステナブルな未来

オフィスや建物など不動産を所有する企業や投資家にとって、既存の物件や新築の物件の価値を高めることは至上命題であるが、その手段として近年もっとも注目されている「環境不動産」という考え方の概要と具体的な施策を解説する。

2022年 03月 01日
今、需要が高まる「環境不動産」とは?

近年の地球環境の悪化にともない、不動産に対しても環境配慮の需要が高まっている。環境性能が高く安心安全で良好なマネジメントがなされている不動産を「環境不動産(Environmental Real Estate)」と呼ぶ。具体的には、以下のような性能を備えた不動産が環境不動産だといえる。

  • 省エネルギーな設計構造
  • 再生可能エネルギーの導入
  • 周辺の自然環境に悪影響を与えない
  • 耐震・耐災害性能が高い
  • 建設時から解体までのライフサイクルを通してCO2排出量が一定基準を下回っている 等

上記のような性能はオペレーションコストの削減やビルで働く人々の健康・快適な環境、周辺環境の向上などの付加価値をもたらし、不動産の価値向上が見込めることが可能だ。

不動産の環境価値を高める認証

不動産においてもESG投資がスタンダードとなる昨今、指標として注目されるのが「GRESB」

投資市場においても、従来のように収益等の財務情報だけによらず、サステナビリティ(Environment)・社会的貢献(Social)・不正・不祥事を起こさない事業活動(Governance)に対する取り組みによって長期的な視点で成長性やリスクファクターを評価するESG投資に関心が高まっている。不動産においてもESG投資がスタンダードとなる昨今、指標として注目されるのが「GRESB」 だ。2009年に欧州年金基金が中心となって創設し、不動産やインフラストラクチャ―を保有・運用する企業やファンドのESG配慮を測る国際的なベンチマーク評価となっている。

不動産分野でGRESBの評価は、マネジメント・パフォーマンスの2つの評価項目で指標を点数化している。GRESB参加企業の中ではパフォーマンス項目の達成が遅れている企業が多く、この分野の改善向上が不動産価値を高める鍵となっている。

環境不動産がもたらすESG不動産投資の促進

不動産テックを活用した環境不動産への舵取りは、今後のESG不動産投資の需要の高まりに応えていく重要な一手となる

持続可能な社会の実現に向けて、不動産にもSDGs達成の取り組みが不可欠となった今、クライアント向けの不動産サービスでも様々な取り組みが実施されている。不動産テックを活用したオフィスビルや商業施設の省エネ化実現、ビル利用者の健康促進・建物の緑化等を施したグリーンビルディングといった環境不動産への舵取りは、今後のESG不動産投資の需要の高まりに応えていく重要な一手となっていくだろう。

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サステナブル化による環境不動産の新しい価値

環境不動産の価値を入居者・オーナー・デベロッパー・投資家等、建物を取り巻く多様な関係者に伝えることは必須だが、具体的にはどのようなものが挙げられるのか。実際の事例に基づく環境不動産の新しい価値について解説していこう。

省エネルギーによるコスト削減

大型複合商業施設の事例では、2015年度から本格的に省エネ対策を推進し、経済産業省の「平成30年度エネルギー管理優良事業者等関東経済産業局表彰」、一般財団法人省エネルギーセンター主宰の「2019年度省エネ大賞」でも省エネルギーセンター会長賞を受賞した。IoT(モノとインターネット)技術を駆使し、センサーで測定した温度や照度を基準に自動的に空調と照明を制御し、高い省エネ効果を発揮した点が評価されている。

資産価値の向上

2021年第 1 四半期に JLL が実施した、647 名の一般事業法人および投資家を代表するシニアエグゼクティブを対象とした調査では、世界中の組織がより責任ある不動産への投資に関心を高めていることが明らかになった。このような関心の高まりを背景に不動産がサステナビリティに貢献するための5つのステップは以下となる。

  1. コミット:社内でのベースラインを確立し、コミットメントとゴールを再定義する
  2. 戦略:コミットメントを詳細なアクションプランに落とし込む
  3. 投資:オペレーションと資本の改善のための投資を含む詳細なアクションンプランの実行
  4. 最適化:専門家の協力のもとテクノロジーを活用し、目標に対するパフォーマンスを測定、最適化する
  5. 連携:パートナーシップのエコシステムに参加し、サステナビリティへの影響を加速させる
環境の質改善によるオフィス利用者のウェルネスの向上

オフィスビルや商業施設などの環境不動産が目指す価値は、省エネや地球環境への影響はもちろんだが、そこで働く人々のウェルネスという視点も欠かせない。アフターコロナでオフィス回帰が進む2021年以降、建物の外構・内装・管理・ガバナンスまで含めた性能や仕様、取り組みといったハードとソフト両面のウェルネスへの投資は中長期的に不動産価値を向上させるものといえる。

今後、あらゆる業界においてサステナビリティが重要視される社会では、不動産にも持続可能かつ責任ある運営が求められる。保有不動産を最適化し、将来を見据えた価値向上がこれからさらに必要不可欠となってくるだろう。

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