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DX化が急速に進む不動産業界、不動産DXの現状と未来

経済産業省がDX化を進めている。コロナ禍をきっかけに、あらゆる業界で急速にDX化が進みつつあるなか、それまでテクノロジー導入が遅れていたとされる不動産業界にも大きな変化が表れている。不動産業界におけるDXの現状と将来の展望について解説する。

2022年 07月 01日
不動産業界におけるDXの現状

2021年6月に一般社団法人不動産テック協会ならびに不動産テック7社が共同で実施したアンケート調査「不動産業界におけるDX推進状況」によると、不動産業者237社のうち90%以上にあたる218社が「DX推進をしている」と回答。この結果から不動産業界はDXの推進を前向きに捉えていると考えられる。

一方、同調査においてDX推進において苦労している点について質問したところ、45.7%の企業が「DX推進人材が確保できない」が回答した他、「何から取り組むべきか、導入ツールがわからない」という回答が29.2%、社内の体制整備含めて導入プロセスがわからない」という回答が24.7%を占めた。これらの結果をまとめると、現在の不動産業界はDX推進の重要性を理解していて、実際に取り組みも行っているものの、知識やノウハウの不足に課題も感じているようだ。

不動産業界のDX化はなぜ遅れているのか?

コロナ禍によって不動産業界のDX化は急速な進展をみせているが、従前の不動産業界はテクノロジーの導入が遅れていたとされる業界であった。

一般的に取引金額が大きく、一度契約したら簡単に買い換えなどができない重要な資産である不動産を取り扱うため、不動産業界の商慣習は長らく紙ベースのアナログを前提にしていた。オンラインのECサイトで「ワンクリックで購入」というわけにはどうしてもいかない。不動産に投資・賃借するには実際に物件を内覧した上で、正式な契約書類を交わすことが必要不可欠だった。

また、不動産業界ではつい最近まで手続き上、書面の発行と押印が義務化されていた。DXの第一歩はペーパーレス化とされるが、法律上それが難しかったのだ。その法律は2022年5月に施行された宅建業法の改正法によって重要事項説明書などの電子化が可能になったものの、長年の商習慣はなかなか変えられないようだ。

大手デベロッパー・不動産会社を先駆者としてDX化は進みつつあるが、いまだオフラインでの業務に依存している不動産業者は少なくない。電話やFAX、紙のチラシや店頭の間取り図を掲載するなど、不動産業界全体がDX化に舵を切ったとは言い難い状況だ。

不動産テック企業の台頭

画像提供:PIXTA

 

従来の不動産業界はどうしてもアナログな業務フローが多かったが、そのような商習慣も不動産テックによって変革されつつある

一方、不動産業界でDX化が進むに伴い「不動産テック」が注目を集めている。テックとは「テクノロジー」の略。つまり、不動産DXに関係するテクノロジーを扱う企業のことを不動産テック企業という。

不動産テックには扱うサービス領域によって細分化され、次の12ジャンルが知られている。

  • ローン・保証
  • クラウドファンディング
  • 仲介業務支援
  • 管理業務支援
  • 価格可視化・査定
  • 不動産情報
  • 物件情報・メディア
  • マッチング
  • VR・AR
  • IoT
  • リフォーム・イノベーション
  • スペースシェアリング

不動産テックの台頭によって、不動産業界におけるDX化も急速に進みつつある。従来の不動産業界はどうしてもアナログな業務フローが多かったが、そのような商習慣も不動産テックによって変革されつつあるようだ。

不動産テックによるDX推進の未来

不動産テックによるDX化によって、将来の不動産業界はどのように変化するのだろうか。

透明性の向上

不動産市場の先進国と比較して、情報開示で遅れが目立つ日本。JLLの「2020年版グローバル不動産透明度インデックス」によると、取引価格やポートフォリオ、共益費などの各種情報・データが開示されていないことが透明度向上の主な課題に挙げられており、日本の不動産市場における慢性的な課題となっている

一方、デジタルツールやビッグデータ技術によって入手可能なデータが急速に拡大する他、取引プロセスの透明化、建物管理・運営面の質向上など、不動産テックを本格的に導入することで、透明性を大幅に改善する国・地域が増加している。不動産テックの更なる普及拡大によって日本でも透明性の向上が期待されている。

不動産関連業務の効率化

実務作業が煩雑な不動産業界。何枚もの複雑な書類を作成し、実印での押印、印紙が必要となり、その書類は全て保管しなければならない。保管するスペースや印紙代も軽視できないコストである。

しかし、近年はAIやRPA、OCRなどの技術が発展し、これらの書類作成・保管も効率化されるようになってきている。このように業務時間が短縮されるため、将来的には顧客対応に比重を置けるようになり、サービスの質向上が期待される。

顧客満足度の向上

不動産DXの中には顧客の便利さに直結するテクノロジーが存在する。例えば、ビデオ会議による物件の説明や、VR技術を利用したオンライン内覧などである。今までは店舗に行かないと物件が見られなかったが、家に居ながらにしてオンラインで物件が内覧できるのは大きな進化だろう。

これらの技術は最近注目されているメタバースとも親和性が高い。メタバース内にリアルの物件を模したバーチャルな物件を作り、アバターを使って内覧し、物件の説明をする未来も近づいている。

オフィスなどの施設運営の効率化

IoTセンサーを活用してオフィス環境の温度や湿度データを収集し、最適な執務環境の構築を実現するIoTアナリティクス、会議室予約などのオフィス機能をデジタルツールで一元管理するIWMSなどのテクノロジーを活用したDX化は、アフターコロナに適応したニューノーマルな働き方を実現する上で非常に有用だ。

 

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