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福岡空港は天神・博多駅に次ぐ第三極になりうるか?

天神・博多駅エリアは福岡不動産市場の二大巨頭だが、ここにきて注目されているのが福岡空港だ。2025年3月の増設滑走路供用開始に向け国際線旅客ターミナルビル増改築工事が進められ、さらには国内線地区に複合施設の整備が計画されている。高速道路の整備や地下鉄の検討も開始され、第三極への期待が高まっている。

2024年 02月 19日
将来を見据えた巨大プロジェクトを進める福岡空港

福岡市では天神ビッグバンや博多駅コネクティッドで大規模なオフィスビルの建て替えが進んでいる。

このため都心部では再開発ラッシュとなっており、福岡市民や国内外の投資家の注目を浴びている。

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しかしながら、その一方で福岡空港の発展はあまり報道されていない。ここ3年間のコロナ禍で、空港利用者が激減し、経営状態が悪化しているというマイナス面の報道が中心だった。

福岡空港は何もせずにただコロナが過ぎ去るのを待っていたのだろうか。実際はその逆である。コロナ禍で利用者数が落ち込む中でも、将来を見据えた巨大プロジェクトを着々と進行させていたのだ。

今回は「福岡空港は天神・博多に次ぐ第3極となりうるか?」に焦点を当てて解説する。

福岡空港の基礎知識

まず、前提として第2滑走路の建築や福岡空港の民間委託等について、4つの基本的事項を確認しておきたい。

1. 第2滑走路の建築

福岡空港は日本一過密な空港として知られており、2012年には増便・新規就航が相次いだことから発着回数は約15.6万回(出所:国土交通省「空港管理状況調書」)を記録し、その後も発着回数は増加。2016年3月には航空法にもとづく「混雑空港」に指定された。当時の産経新聞の報道では「円滑に運用できるのは年間14万5,000回の離発着が限度」とあるが、コロナ前は約19万回(出所:国土交通省「空港管理状況調査」)の離発着を記録していた。

このため国土交通省は、既存の2,800mの滑走路に加え、並行して2,500mの滑走路を建設することを決定。国土交通省九州地方整備局によると、工事は環境アセス等を経て2015年から始まり2025年3月末に供用開始予定とされる。ただし両者の離隔距離が300m弱と短く、同時に離発着することができないため、離発着回数のキャパは年間18.8万-21.1万回に留まるとされている。

2. 福岡空港民営化

2019年4月から福岡空港は民営化されており、現在は福岡国際空港株式会社の手によって管理運営されている。この会社には地元の九州電力株式会社や西日本鉄道株式会社に加え、三菱商事株式会社等が参画している。同社がコンセッションで勝ち取った運営権の対価は4,500億円程度とされ、同社は毎年150億円近い金額を向こう30年間、国に支払うことになっている。

同社の2023年3月決算によれば最終利益が91億円の赤字であったが、同年9月の中間決算では、売上高が前年同期比2倍の235億円で、最終損益は4億円の赤字であった。旅客数はコロナ前の2018年同期の96%まで回復。ターミナルのテナント収入や免税店の売り上げも増加した。その一方で、民営化に伴い国に支払っている空港運営権の対価が重荷となって、最終損益は僅かな赤字となった。しかし、福岡空港によると2024年3月期の決算では営業利益が黒字化の見込みだという。

3. 福岡空港の旅客数

福岡空港の2022年度の旅客数は下表のとおり約1,800万人で(2019年度は2,303万人)、羽田、成田に次いで全国第3位の旅客数となっている。

また、航空データOAG社の「メガハブ・インデックス2023(世界の主要空港を対象に、国際線からの乗り継ぎ便が最も充実しているハブ空港機能のランキング)」によれば、世界1位が英国ロンドンのヒースロー空港で、東京・羽田空港が5位、福岡空港が31位となった。地方都市に所在しながらも福岡空港は世界31位のハブ空港として存在感を示してい る。

順位 空港名 2022年度旅客数 2019年度旅客数 2019年度比
1 羽田空港 59,810,290 82,220018 72.7%
2 成田空港 18,656,460 39,541,269 47.1%
3 福岡空港 17,967,916 23,035,578 78.0%
4 新千歳空港 17,876,335 22,814,950 78.3%
5 那覇空港 16,228,632 20,613,619 78.7%
6 大阪伊丹空港 12,988,740 15,765,029 82.3%
7 関西国際空港 11,446,868 28,663,014 39.9%
8 中部国際空港 6,012,571 12,590,387 47.7%
9 鹿児島空港 4,678,643 5,769120 81.0%
10 神戸空港 3,109,115 3,292,298 94.4%

出所:順位別・日本の空港別乗降客数(2022年度)出所:国土交通省「空港管理状況調書」を基にJLL作成

4. 福岡空港のアクセス時間の短さ

JR博多駅から福岡空港までは、市営地下鉄空港線で2駅であり、時間距離で約5分である。このため福岡空港は世界で最も都心に近い空港と呼ばれている(出所:森記念財団 都市戦略研究所 2022年度版「世界の都市総合ランキング」より)。福岡市の発展の背景には空港の近さが少なからず起因している。

変貌を遂げる福岡空港

次に2025年3月末に予定される増設滑走路供用の開始以降、大きな変貌を遂げることになる福岡空港について説明する。

1. 【国内線地区】複合施設や立体駐車場、バスターミナルなどの建設を計画

福岡空港の表玄関である国内線エリアでは、立体駐車場を建て替えて、商業施設・ホテル・バスターミナルの機能を備えた複合施設を建築するビッグプロジェクトが進行中である。二次交通でのアクセスがスムーズになるほか、ホテルや飲食店、ショップが入った複合施設ができる計画で2024年度に着工、2025年度には竣工予定である。ホテルのブランド等は不明だが、当該プロジェクトは梓設計・隈研吾建築都市設計事務所・西日本技術開発共同企業体が設計している。

福岡空港 国内線エリアにおける再開発計画(イメージ図)出所:梓設計・隈研吾建築都市設計事務所・西日本技術開発共同企業体

2. 【国際線地区】国際線ターミナルの増築等

国際線地区では、北側コンコースを延伸し、PBB(旅客搭乗橋)を現行の6基から12基に拡大し、ターミナルビルも増設する計画が進行中である。免税店エリアも現行の1,500㎡から4倍の6,000㎡に増やす計画で、2025年3月末の竣工を目指している。

次に外国人入国者数の回復率をみると、福岡空港は外国人入国者数の回復が全国で一番早い空港となっている。事実、福岡市内では数えきれないほどの外国人観光客が闊歩しており、ホテルの稼働率や宿泊単価は上昇を続けている。なかでも宿泊単価は高騰している状況にあり、コロナ前の2019年の水準を大きく凌駕している。

主要空港別の外国人入国者数の回復率(2023年1-8月と2019年同期を比較)出所:法務省「出入国管理統計」を基にJLL作成

福岡空港 国際線ターミナル増改築計画(2025年3月末の施設整備後イメージ図)出所: 梓設計・隈研吾建築都市設計事務所・西日本技術開発共同企業体

3. 国際線地区 地下鉄七熊線延伸の可能性

福岡市の高島 宗一郎市長は、「国際金融都市」を掲げ、海外のビジネス客や観光客を福岡市に呼び込む環境整備を進めているが、その中で国際線ターミナルの交通アクセスの悪さが指摘されている。このため、福岡市では今後市営地下鉄七隈線をさらに伸ばして国際線ターミナルへ引っ張ってくる案が浮上している。

高島市長は将来に向け総合的に考えているというが、アジアの諸都市と伍して戦っていくためには国際線と都心部を結ぶ交通インフラは喫緊の課題である。定時制のある公共交通機関がビジネス客と観光客の安心・安全につながるからである。この点は経済界からの要望も強いため、早晩本格的な検討が進むと見られている。

4. 福岡空港国内線築 都市高速道路の延伸

福岡都市高速道路の福岡空港国内線ターミナルへの延伸計画が進んでいる。当初の予定より遅れて2029年度前後に供用開始される予定である。これにより博多駅からタクシーで福岡空港へ向かう際の時間距離が大きく短縮されることになる。

福岡広域都市計画道路・都市高速道路3号線の整備計画 出所:JLL

まとめ

福岡市は国際都市を標榜しており、交通インフラや空港ターミナルビルの整備とともに、福岡空港周辺は発展の一途をたどる

上記のとおり、福岡空港では、2025年3月末の増設滑走路供用開始に向け国際線旅客ターミナルビル増改築工事が進められ、さらには国際線地区に複合施設の整備が計画さられている。また周辺では高速道路の整備や地下鉄の検討が始まっている。

そのため、福岡空港は空の玄関として、JR博多駅(陸の玄関)と同様に拠点性が強まっていくと考えられる。その意味で、今後は、都心部の中枢管理機能の一端を分掌するエリアとして、ホテルやオフィス、公共施設等が進出すると考えられる。現実には、空港が近いため背の高いビルの建築が禁止されており、周辺が市街化調整区域に指定されていることから、大規模な開発は困難を伴うが、福岡市が強いリーダーシップを持っているので、規制緩和により突破していく可能性が高い。

年間2,000万人以上が利用する福岡空港は、ポテンシャルを秘めた魅力的な市場である。人が乗降するだけの空港ではもったいないので、賑わいを創出するために飲食・物販店舗の拡充、インターナショナルホテル、待ち時間を有効利用できるオフィス等の付加機能の整備が待たれる。

福岡市は国際都市を標榜しており、交通インフラや空港ターミナルビルの整備とともに、福岡空港周辺は発展の一途をたどると予測される。

【執筆者:JLL日本 福岡支社 支社長 兼 キャピタルマーケット事業部 福岡代表 山崎 健二】

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