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九州大学の移転に伴う福岡市西区の変貌

福岡市の中心部である天神や博多駅まで乗り換えなしの電車利用で30-45分。海と山にも近く、暮らしとビジネスの両立が可能な多機能性を持った「生活の質」が高いエリアである福岡市西区。ここに九州大学が移転することで教育・文化環境も急速に高まっている。福岡市の中でも将来的な発展が期待される。

2022年 08月 10日
九州大学の移転

九州の雄である九州大学は、福岡市東区箱崎地区から福岡市西区元岡桑原地区の市街化区域へと移転した。

移転プロジェクトは1991年に決定され、2018年にようやく完了した。当時、敷地面積は旧帝国大学の中で一番広い275haを目指していた。そのために福岡市内だけでは十分な面積を確保できず、隣接する志摩町、前原町(両町とも現在は糸島市)を一部取り込む形となった。

もともと丘陵地帯だったことに加え、埋蔵文化財が数多く出土したことから実際の有効面積はそれほど多くないが、それでも九州大学が日本一の面積を誇るキャンパスを持っていることは案外知られていない。

現在の九州大学

現在の九州大学伊都キャンパスは下記画像が示すとおり、中高層のビル群が立ち並ぶ、さながら新興市街地といった状況である。キャンパス内の移動手段は自転車等でも可能だが、「aimo」と呼ばれるオンデマンド交通システムが学生の移動をサポートする。aimoは九州大学伊都キャンパス内で運行されている、乗りたいときに行きたい場所まで自由に移動できるシステムで、人工知能AIがリアルタイムに発生する乗降リクエストに対して効率的なルート・配車計算を行い、人を輸送する。ただし自動運転ではなく運転手はいる。九州大学伊都キャンパスは国内最大規模の実証実験キャンパスとしてこのような産学官共創プロジェクトやスタートアップなど先駆的な取り組みが行われている。

交通アクセス

九州大学の新キャンパスは福岡市の西端部、糸島市との行政境付近に開発されたため、大学へのアクセスはJR「博多」駅からJR筑肥線「九大学研都市」駅まで約30分、同駅から昭和バスで約15分に位置する。周辺に目立った生活利便施設はなく「あまおう」で知られるイチゴの栽培農家が多いなど、今でも豊かな田園風景が広がっている。

九州大学の敷地の一部は糸島市にまたがって所在しているが、実はこの糸島市、ただの地方都市ではない。人口10万人足らずながら、イギリスの情報誌「MONOCLE」が実施した「輝く小さな街(Bright lights, small city)」の2021年ランキングで世界第3位 に選ばれたほどの小粋な地方都市なのだ。美しい海と山に囲まれた自然豊かなエリアにオシャレなカフェや蠣小屋などのおいしいグルメが集まる福岡きっての人気観光地、それが糸島市である。
 

MONOCLE「輝く小さな街」2021年ランキング
順位 都市
1 ポルト ポルトガル
2 ルーヴェン ベルギー
3 糸島市 日本
4 ルツェルン スイス
5 ビクトリア カナダ
周辺の開発

伊都キャンパスを中心としたまちづくりは、九州大学と福岡市、福岡県、糸島市、地域経済が一緒になって作成した「学術研究都市構想」に沿って行われており、大規模開発とあわせて小規模な研究開発拠点等を点在させて分散型地域核を作っていくことを目指している。現在、大規模開発は国道202号近くの北原・田尻土地区画整理事業によって進捗中である。福岡市は、国道202号と「九大学研都市」駅から九州大学伊都キャンパスを結ぶ学園通線が交差する北原西交差点付近で、規模11.8haの土地区画整理事業を実施している。

この土地区画整理事業では戸建住宅のほか学生向けマンション等の開発、スーパーマーケットやドラッグストア、日用雑貨店に加えて、金融機関やメディカルモールなどが出店する予定である。もちろんスタバやマクドナルドも登場する。九州大学へのGATEWAYとしてコアの開発拠点となる北原・田尻土地区画整理事業は2023年度に完成(換地処分)予定である。

今後の行方

JR「九大学研都市」駅から九州大学伊都キャンパスに至る範囲は、福岡市の中心部である天神や博多まで乗り換えなしの電車利用で30-45分、海と山にも近く、暮らしとビジネスの両立が可能な多機能性を持った「生活の質」が高いエリアである。人口も増加傾向にありのどかな雰囲気の中に充実した商業施設が建設されようとしている。これに九州大学が加わることで教育・文化環境も急速に高まっている。九州大学周辺は福岡市の中でも将来的な発展が期待できる街である。

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執筆者:JLL日本 福岡支社 支社長 兼 キャピタルマーケット事業部 福岡代表 山﨑 健二

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