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不動産市場としての魅力が高まる福岡-官民連携のプロジェクトで変貌する福岡マーケット

「天神ビッグバン」、「博多コネクティッド」など、都市の魅力向上に寄与する大型プロジェクトが目白押しの福岡市。「アジアへの玄関口」として多くの企業が注目し、不動産市場としても今後の成長が期待されている。

2021年 06月 10日

国内外の不動産投資家が福岡に注目する理由

日本の不動産市場において、福岡マーケットは国内外の投資家の注目を集めている。この背景は、福岡のファンダメンタルズが他の都市よりも優れており、良好なファンダメンタルズに裏付けられた今後の成長性を不動産に関わるプレーヤーが評価していることにある。

しかし、民間の事業者がいくらマーケットを評価しても、1事業者だけでは、福岡の都市としての魅力や競争力を高めるには限りがあろう。こうした中で、福岡の不動産市場の成長において、切り離せない強みを紹介する。

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官民一体で都市競争力の向上を目指す福岡の強み

福岡市は2011年に「福岡地域戦略推進協議会」を立ち上げ、福岡の都市競争力を高める取り組みを積極的に行っている。福岡市と福岡(九州)の経済を牽引する地場企業、全国展開する大手不動産事業者を含み200社を超える企業で構成されている。議会の設立趣旨は以下の通り。

  • 地域経済のグローバル化(国際競争力強化)
  • 産学官民が一体となったプラットフォーム
  • 迅速な戦略の実行(事業組成など)
  • 地域の成長モデルを福岡から世界に発信し、九州、日本、人類の発展に貢献

こうした理念や目的を有する協議会などは他都市にも存在するが、福岡市は官民の一体感、連携、スピード感が他の都市を上回っている。協議会が効果的に機能しているのだろう。民間事業者の背中を官(国・自治体)が後押しするスキームは、個別の不動産に見えない多くの付加価値を与えることにつながる。この点は福岡の不動産市場を語る上で無視できない重要なポイントといえよう。

福岡の未来を牽引する不動産プロジェクト

天神ビッグバン

福岡市の天神地区は、国家戦略特区による「航空法高さ制限の特例承認」と市独自の容積率緩和で、民間事業者の力を最大限に活かしたビルへの建替えを促進している。2021年秋に竣工予定の「天神ビジネスセンター」を皮切りに、建て替えによる大型再開発でこれまでの天神地区が一変するような新たなランドマークとなるビルが複数建つ。近年、旺盛なオフィス需要に対して、深刻な供給不足によって福岡に進出できなかった企業や業容拡大を目指す企業の受け皿として機能するだろう。競争力の高いオフィスビルができることで、賃料水準に幅が広がり、その結果、全体の賃料水準の底上げが期待され、オフィスセクターにとってポジティブに働くと考えられる。

ホテルにおいても「ザ・リッツカールトン」の進出が決まっており、国内外の富裕層向けのホテル不足という課題解消、国際都市にふさわしい都市としてのイメージや国際競争力の向上に寄与するだろう。ホテル・リテールセクターにとってポジティブな材料といえる。

博多コネクティッド

福岡市では博多駅周辺地区において民間事業者の力を活かした取り組み「博多コネクティッド」を計画している。自治体は容積率の緩和とともに鉄道(地下鉄七隈線)の延伸や道路網(はかた駅前通り再整備)、筑紫口駅前広場の整備などのインフラの整備などの後方支援を行っている。博多駅周辺地区では既に竣工したオフィスビルやホテルが多い。足もとでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で厳しいマーケット環境下にあるものの、いずれの事業も競争力の高いプロジェクトであり堅調といえよう。天神地区同様に競争力の高いオフィスビルやホテルができることで、賃料水準や宿泊料に幅が広がり、その結果、全体の賃料水準や宿泊料の底上げが期待される。オフィス・ホテルセクターにはポジティブ材料である。

海の中道海浜公園官民連携推進事業

2021年5月、国土交通省(九州地方整備局)が「Park -PFI※1」を活用して公募した「海の中道海浜公園官民連携推進事業」は、三菱地所株式会社、積水ハウス株式会社、一般財団法人公園財団、株式会社オープン・エーが民間事業者として選定された。「パーク・ツーリズム※2」をコンセプトにした滞在型レクリエーション拠点として、2022年3月の開業を目指している。

Park-PFI事業による国営公園の開業は、当該事業が日本初となる。福岡市は2011年に「福岡地域戦略推進協議会」を立ち上げ、福岡の都市競争力を高める取り組みを積極的に行ってきた。当該事業が他の自治体に先駆けて実現に至ったのはこうした取り組みの賜物といえよう。足もとではコロナ禍で不動産を取り巻く環境が良いとはいえないものの、当該事業は、アフターコロナにおいて、福岡への訪問者を増やす呼び水となり、ホテル・商業セクターの回復への後押しとして期待される。

計画概要

所在地:福岡県福岡市東区西戸崎18-25
主用途:宿泊施設・温浴施設・飲食施設等

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日本の三大都市(東京、大阪、名古屋)に次いで経済規模の大きい大都市である福岡では、これほどスケールの大きいプロジェクトが実現に向かっている。足もとではコロナ禍で先行きへの不透明感が拭えない状況にあるが、将来的に飛躍が期待できるプロジェクトが進行している。アフターコロナにおいては他の都市と比べて一層の魅力を放っているのではないだろうか。

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※1:2017年の都市公園法改正により創設された「公募設置管理制度」。飲食店、売店等の公園利用者の利便性向上に資する公募対象公園施設の設置と、当該施設から生まれる収益を活用してその周辺の園路、広場等の一般の公園利用者が利用できる特定公園施設の整備・改修等を一体的に行う事業者を公募により選定。民間資金を活用した整備・管理手法

※2:公園そのものが観光の目的地となる取り組み。「海の中道海浜公園官民連携推進事業」では公園を起点に、文化的交流や体験型コンテンツによって地域固有の魅力を伝えていくことを提案

連絡先 山口 武

JLL日本 関西支社 リサーチディレクター

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