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ESG不動産投資における企業や投資家の対応ポイントとは?

環境や社会に配慮したESG投資の考え方が広まりつつある今、不動産の在り方や価値も大きく変わろうとしている。短期的な利益を求める考え方から、長期的かつ持続可能な成長視点に重きを置くことで、目に見える数字だけではない要素が重要視されるようになってきている。

2022年 01月 04日
ESG不動産投資が重要とされる背景

ESG投資の考え方は、金融による経済発展ばかりでなく、環境や社会に配慮した観点を投資基準に反映させる内容を含んだ責任投資原則(PRI:Principals for Responsible Investment)が国連から提唱されたことで大きく広がった。PRIは6つの原則やESG(環境:Environment 社会:Society 企業統治:Governance)の要因をもとに、持続可能な金融システムでの経済発展により、環境や社会への還元が生まれるようなエコシステムをアセットオーナーが協働して作り上げることを目標に掲げている。

このPRIの提言をきっかけに、投資家の判断基準もアップデートされ、今ではGRESB等の様々な評価指標が存在する。投資家視点では、アセットに対しESG観点で本質的な要素を見極めていくことが必要であり、不動産オーナー視点では、表層的な対策となってしまわないよう、PRIそしてESGの根本的な意義を理解し、専門的な知識を持つパートナーのサポート等をもとに対策を進めていくことが今後重要となるだろう。

不動産へのESG投資で生まれるメリットとは?

アフターコロナに向けた企業資産の価値向上を進めるプロセスへESGの考え方を取り入れ、環境に配慮した取り組みにより、社会的な企業プレゼンスをアピールするきっかけにも繋がる

ESG視点の不動産の価値向上によるメリットは様々だ。昨今注目されているグリーンビルディングはESG投資の影響を受け広がっている不動産業界での取り組みの1つであり、対応する企業や不動産オーナーも多くなっている。このグリーンビルディングの取り組みにも関係するESG不動産投資の具体的なメリットとして、省エネ化が挙げられる。事例として、不動産テックの代表的なツールであるIoTセンサーを活用し、空調の自動制御を行い無駄な消耗を削減、照明をLEDに変更する等の省エネ化により費用対効果を得て、コスト削減にも繋がった商業施設が挙げられる。また、ESGはSDGs(持続可能な開発目標)と密接に関係しており、これらの取り組みにより、企業や組織のCSR活動として外的なブランディングにも寄与 する。CRE戦略を実践する上で、喫緊の課題となるアフターコロナに向けた企業資産の価値向上を進めるプロセスへESGの考え方を取り入れ、環境に配慮した取り組みにより、社会的な企業プレゼンスをアピールするきっかけにも繋がる。しかし、前述した通り、根本のPRIの目標や意義を理解し、企業の現状や課題を織り交ぜた総体的かつ本質的な取り組みでなければならない。今後更に投資家や社会的な判断基準が厳しくなることが予想され、表面的な対応では評価が得られなくなるだろう。CRE戦略を織り交ぜたESG対応は、入念な戦略的プロセス策定が欠かせない。ESG投資の考え方は、安定的かつ持続的な資産である不動産を求めることから、結果的に長期的な運用が可能となるだけでなく、総じて社会的貢献にも大きく寄与する。経済発展に貢献しながら、環境・社会への還元に繋がるESG投資が果たす意義は大きい。

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不動産オーナー視点でのESG投資への対応策とは?

ESG投資に本質的に対応していくには、不動産オーナーの観点で様々なポイントが挙げられる。環境配慮への重要性が問われる不動産業界では、目的に合わせた評価認証が多く存在する。建物の環境性能を様々な評価基準で示したLEED認証やCASBEE認証、ESG投資の選定プロセスで活用されるGRESB、建物で働くヒトの健康視点で評価するWELL認証等、これらは環境・社会全体の多様な視点で定められた評価指標で、不動産オーナーや投資家がオフィスビル等の保有施設の付加価値向上を目的に認証を取得しているケースも少なくない。昨今では、オフィスビルの100%再生可能エネルギー活用による脱炭素化で、オール電化のオフィスが開発され、サステナブルな取り組みが活発となっており、優良なテナントを誘致する重要要素になり始めている。このトレンドに対し、速やかに適応していくことがESG投資を先導する不動産オーナーとして欠かせない考え方となる。

投資家視点で必要となるESG不動産投資のポイント 

ESG不動産投資では、オフィスビル等の不動産資産を対象に、オフィスを利用する従業員の健康状態に配慮された建物であるのか、セキュリティ対策は十分になされているのかという要素を軸に中長期的な視点で投資判断 をするケースが多くなってきている。収益性だけを求められていた従来の投資家の視点から、ESGの考え方を取り入れ、様々な手法で環境・社会に配慮した投資が求められるようになった。ESGへの配慮は不動産投資において今後欠かせない概念となることは明白だろう。

ESGの観点で省エネ対策を行った商業施設の成功事例

ESGの観点を活かした対策により費用対効果に繋がる等、様々な成功事例が生まれている

不動産業界では、ESGの観点を活かした対策により費用対効果に繋がる等、様々な成功事例が生まれている。大型複合商業施設の省エネ化の事例では、不動産テックのIoTツールを活用することで、照明や空調の省エネ化を実現し、過去との比較で共用部電気使用量を約30%削減することに寄与し、費用対効果が際立つ結果になった。専門的な知見を持つパートナーとの協働により、ESGに配慮すると同時に効果的な結果に結びついてくるのである。

ESGの考え方は不動産において大きな変化をもたらすと共に、長期的かつ持続的な社会を作ることへ寄与し、利益だけではない大きな社会意義を生み出すことができる。そのためには、近い未来に備え、知識や情報、本質的なインサイトを持ち、率先して行動していくことが不可欠となる。

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