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オフィストレンドから読み解くこれからのニューノーマルな働き方

働く場に求められるニーズや、従業員にとってのオフィスの存在意義がコロナ禍で変化したことにより、オフィストレンドも多様化してきている。これらの変化に俊敏に対応し、数年先の未来を見据え、ニューノーマルな働き方に寄り添ったオフィス改革を進める企業も少なくない。今と未来を映し出す最新のオフィストレンドについて解説する。

2021年 07月 01日

オフィスワーカーの声から導くこれからのオフィストレンド

オフィストレンドが多様化した大きな要因として、コロナ禍でリモートワークを経験した従業員の”働き方”に対する意識変化が根本にあると考えられる。JLLが世界中のオフィスワーカーを対象に実施した新型コロナウイルスによる影響に関するサーベイレポートでは、グローバル全体の58%が「オフィスへ戻りたい」と回答しており、オフィス回帰を望む従業員の66%がミレニアム世代と呼ばれる35歳未満の若者であった。オフィスへ戻ることの理由として、業務に集中できる、交流やコミュニケーション等が挙げられており、世界中のオフィスワーカーは、リアルな”働く場”の価値を改めて感じたのではないだろうか。その他「自分自身、自身の会社や国の経済について 自信が持てるか?」という将来に関する設問の結果「とても自信を持っている」との回答が、日本ではそれぞれ10%の割合でしか得られなかった。アジア全体の回答と比較し、最大約3倍もの差があったことから、日本の従業員が感じる将来への悲観的視点は深刻であると同時に「ヒトとの関わり合い」が不足していることが根源の1つにあると考えられる。

これらの現状を目の当たりにし、リアルな声を”次”の行動へ活かせるかどうかは、企業の力量にかかっているといってもよい。リモートワークからの学びを”次に”活かす要素として、希少価値の高いリアルな交流をオフィスへ戦略的に組み込んだレイアウトやデザインで従業員が求める”繋がり”を促進し、お互いの目的だけでなく企業全体のミッションやビジョンを今一度共有、そして孤独を解消し、将来の希望を見出していくことが挙げられる。ここで見落としてはいけないポイントは、リモートワークの継続である。継続といってもフルリモートワークではない。リアルな場の役割を果たすコアオフィス、サテライトオフィスと在宅勤務を組み合わせた”ハイブリッドなワークプレイス”という考え方へアップデートすれば、働く一人ひとりにワークライフの選択肢を与えるきっかけにも繋がる。多様化するオフィストレンドは従来の考え方の範囲を越えた、ワークライフインテグレーションのような仕事とプライベートを包括した戦略が求められているのではないだろうか。

多様化するオフィストレンドは従来の考え方の範囲を越えた、ワークライフインテグレーションのような仕事とプライベートを包括した戦略が求められているのではないだろうか

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フレキシブルなスペースと企業の考え方

不確実な時代であるからこそ柔軟であることが企業としての必須要素となりつつあり、この考えはオフィスにも顕著にあらわれている。柔軟性を示すものとして、昨今注目されているフレキシブルオフィスは、サービスオフィスやコワーキングスペース、シェアオフィスやサテライトオフィス等の共用型オフィスを指し、分散型オフィス戦略を採用した企業が積極的に取り入れている事例がみられるようになった。コロナ禍での不安定なマーケットが落ち着くまで、一時的な避難場所としてフレキシブルオフィスを活用している企業も少なくない。これは、一般的なオフィスに比べ、初期投資の負担が少ないことが利用要因の1つとして挙げられる。オフィスは1拠点であるという従来の考え方とは対照的な多拠点とし、企業や従業員に寄り添うフレキシブルオフィスは今の時代の象徴的なトレンドであるといえるだろう。

“ヒト”中心の要素を取り入れたオフィスデザイン・レイアウト

偶然の出会いや気づき、交流を創り出すセレンディピティのような要素を持つオフィスデザインやレイアウトにより、従業員だけでなくステークホルダーが「訪れたくなるようなオフィス」を再現している企業も増えてきている

リアルな交流は、孤独感を解消し、モチベーションを向上させるだけでなく、新規事業でのアイディア創発等、業務プロセスでも優先順位の高い効果を生み出すことができる。雑談や部署外の社内メンバーとのコミュニケーションで生まれた交流から得られる気づきやインスピレーションは、仕事への大きな刺激となる。偶然の出会いや気づき、交流を創り出すセレンディピティのような要素を持つオフィスデザインやレイアウトにより、従業員だけでなくステークホルダーが「訪れたくなるようなオフィス」を再現している企業も増えてきている。「毎日行かないといけない場所」ではなく自発的に「行きたい」と思えるようなオフィスづくりをすることが不可欠であり、その根底にあるのが、人間の本質的な要素であるといえる。

企業戦略を盛り込んだオフィスの存在意義

オフィスに関するトレンドキーワードとして注目されている「サステナブルオフィス」。世界的な取り組みとして提言されたSDGs以外にも、国際的な環境政策が次々に掲げられる中、オフィスビルの価値基準もサステナブル化の波によって大きく変化している。グリーンビルディング化や炭素排出量実質ゼロ達成を公約する企業が積極的に環境配慮の取り組みを進めており、この流れを受け、バイオフィリックデザイン等の自然とヒトが共存できるコンセプトやエコ重視のオフィスが今後のトレンドになると推測できる。サステナブルオフィスは、社会的責任の役割の観点から、企業プレゼンスを高めることができるので、押さえておくべきオフィストレンドの1つでもある。

時代を先取るオフィストレンドの考え方と成功事例

企業にとって最大の財産である”ヒト”が幸せに働くことで、優秀な人材を獲得できるようなオフィスづくりを実現した成功事例では、移転プロジェクトの目的やコンセプトデザインを明確に示しオフィスデザインを通して事業内容や社風等を実感することができる。屋内公園をイメージし、人工芝やテントを設置したミーティングスペースや全体が見渡せ風通しの良いラウンジなど、自分らしく居られる環境づくり等、レイアウトやデザインのみに縛られず企業自身のオフィス戦略を活かしていることが垣間見られる。

オフィストレンドは日々変化している。「従業員が行きたくなるようなオフィス」を模索する企業が増えるとは、10年前では考えられなかった。効率的な働き方が可能となった今だからこそ、ヒトの要素がオフィスへ取り入れられ、より人間らしくあることに戻っている。ニューノーマルな働き方という響きは、想像もつかないような近未来のイメージが強かったが、最新のオフィストレンドの共通ポイントから、意外にもより人間らしい要素が根底にあることが窺える。

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