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【欧米】投資家が注目する女子スポーツ市場

欧米では女子スポーツの人気が急上昇し、専用スタジアムに対する需要がにわかに高まっているという。投資家はこうしたトレンドを機敏に察知、女性スポーツ市場が新たな投資対象として注目されるようになっているようだ。

2024年 07月 25日
女性が台頭するスポーツ界

2024年7月26日-8月11日にかけて開催されるパリ・オリンピックにおいて史上初めて男女同数の選手が出場することになるという。スポーツ界に新たな風が吹き始めている。

スポーツ界における女性の台頭はオリンピックだけではない。象徴的なのは米国の女子バスケットボールだろう。

例えば、米国女子バスケットボールのプロリーグであるWNBAでは昨シーズンの視聴率が過去21年間で最高を記録した。

そして、アイオワ大学の女子バスケットボールのスター選手であるケイトリン・クラーク選手の得点記録更新をめぐる活躍に牽引される形で、彼女が所属するアイオワ大学とルイジアナ州立大学のNCAAトーナメント女子準々決勝はカレッジバスケットボール史上最多となる1,230万人が視聴した。2023年のMLBワールドシリーズやNBAファイナルを凌駕する数値だ。

女子チーム専用スタジアムが登場
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女子スポーツは、ファンだけでなく不動産投資家からもようやく注目を集めるようになった

こうした状況下、米国の不動産業界では1つの可能性が論じられるようになった。「男子スポーツとは別に女子チーム専用のスタジアム(スポーツ施設)が開発される可能性はありえるのだろうか?」と。

しかし、それはすでに実践段階に入っている。

米国ミズーリ州西部に位置するカンザスシティでは2024年3月、サッカー女子プロチーム初の専用スタジアムがグランドオープンを迎え、歴史的な節目を飾った。

他方、2023年8月には女子プロホッケーリーグ「PWHL(Professional Women‘s Hockey League)」が設立され、2024年1月には女子バレーボールのプロリーグである「Pro Volleyball Federation」が開幕戦を迎えるなど、女子スポーツは紛れもない成長を遂げ、その影響力を拡大している。

JLL プロジェクト・開発マネジメント ナショナルディレクターを務めるジム・レネは「女子スポーツは、ファンだけでなく不動産投資家からもようやく注目を集めるようになった」と指摘する。

「財政・経済的な運営モデルとしてはまだ改善の余地が残っているが、スポーツ施設に対して投資家は大きな関心を示している。これは、サッカーやバスケットボールなど、さまざまな女子プロスポーツのフランチャイズ価値が上昇していることからも見て取れる」

10億米ドル超の可能性も…女子スポーツ市場の商業的価値

エリート女子スポーツ市場の収益は2024年までに12億8,000万米ドルに達すると予想、10億米ドルを超える可能性

グローバルなコンサルティング企業であるデロイトはエリート女子スポーツ市場の収益は2024年までに12億8,000万米ドルに達すると予想しており、これは同社が2021年に予測した数値から300%増となり、初めて10億米ドルを超える可能性がある。

女子スポーツ界を取り巻く環境は、まさに興奮のるつぼと化しているように見受けられるが、女子スポーツ界の成長が他の不動産セクター…特に商業施設、住宅、ホテルに与える影響は依然として不透明のままだ。

果たして、女性スポーツ関連の不動産市場が“トリクルダウン効果”を生み出し、発展することはできるのだろうか?

この問いに対して、レネは「女性スポーツの不動産価値を高めるには、オーナー、投資家、デベロッパーの協力体制と地域への投資が不可欠」との見解を示している。

将来を見据えた施設開発と地域への投資が求められる

ファンの獲得など、時間と共に進化の芽が生まれるスポーツ施設は慎重に運営することが求められ、女性エリートスポーツ市場の成長にとって重要なカギとなる。レネは「アスリート、ファン、コミュニティといったそれぞれのニーズに当面は応えながら、将来性を考慮した施設開発を実践することで、持続可能なエコシステムを育むことができる」と説明する。

女性スポーツに特化したファンドも登場

足元の需要を満たすだけでなく、継続的な改善・成長・革新の基盤となるスポーツ施設が求められている

投資家たちは、女子スポーツの将来を楽観視している。モナーク・コレクティブは女子スポーツチーム・リーグに投資する1億5,000万米ドルのファンドを立ち上げた他、スポーツ起業家や元アスリートが参画する投資家グループのマーキュリー13は欧州と中南米の女子サッカークラブの買収に1億ドルを投資予定と発表している。

レネは「今こそ、女性エリートスポーツのニーズに適した施設を開発する絶好の時機といえる。特別な施設を創り出すよう努力すれば、おのずと成功への道が開ける。足元の需要を満たすだけでなく、継続的な改善・成長・革新の基盤となるスポーツ施設が求められている」と力を込める。

女性スポーツが商業的な価値を高めることで、投資家を惹きつけ、スポーツ施設などのインフラの発展を促すことになるだろう。

※本稿はJLLグローバルが発表した英語コラム「Are more stadiums on the way for women’s sports teams?」を抄訳したものです。

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連絡先 ジム・レネ

JLL米国 プロジェクト・開発マネジメント ナショナルディレクター

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