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コロナ禍で再評価される日本の不動産投資市場:レジデンシャルと物流施設が牽引

新型コロナ感染拡大によって停滞する世界の不動産投資市場において、日本がその存在感を高めている。世界金融危機という「非常事態」では海外投資家の多くは日本から撤退したが、コロナ禍では逆に海外投資家を惹きつけている。2020年上半期には不動産投資額で東京が世界1位に。「セーフヘイブン」としての魅力を発揮している。

2020年 10月 16日

日本不動産投資市場のプレゼンス急上昇

不動産投資額は対前年同期比6%増

「日本の不動産投資市場が再び世界の主役に戻ってきた」

こう指摘するのはJLL日本 リサーチ事業部長 赤城 威志だ。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は依然として収束の気配が感じられず、世界の不動産投資市場も停滞が続いている中での赤城の発言には理由がある。

JLL日本 リサーチ事業部の調査では日本の不動産投資市場は2020年上半期(1月-6月)の不動産投資額は2.6兆円、対前年同期比では6%増と、コロナ禍にも関わらず異例の「健闘」を見せたためだ。加えて、国別の投資額では日本が世界3位に浮上。第1四半期に決算を迎える国内企業が不動産取引を牽引するといったお家事情があるものの、世界の不動産投資市場における日本のプレゼンスが急激に上昇しているのは、まぎれもない事実だ。

日本以外の不動産投資市場はどうか。同じくJLLリサーチ部門の調査によると2020年上半期の世界全体の不動産投資額は3,210億ドル(33兆円)。対前年同期比では29%減となり、新型コロナウイルスの影響が色濃く反映される結果となった。

さらに地域別にみると南北アメリカ地域では37%減、EMEA(欧州・アフリカ・中東)地域では13%減、そして日本を含めたアジア太平洋地域では32%減といずれも2桁減となった。対前年同期比ベースで投資額が増加した日本は異彩を放っているのだ。

都市別投資額では東京初の1位に

都市別に見た不動産投資額でも日本(東京)の勢いはとどまることを知らない。あくまで上半期のみの結果だが、JLLが調査を開始して以来、東京が初めて世界1位に昇りつめた。2位のニューヨークを大幅に引き離し、他の主要都市の倍程度の投資額を積み上げた。まさに東京の「独り勝ち」といえる状況だ。

6割に迫る海外投資家の投資割合

赤城が「従前から日本(東京)の不動産投資市場は国内投資家が強く、相対的に海外投資家のプレゼンスが低いというのが世界的な共通認識だった。しかしコロナ禍にあって自国以外の海外投資家による投資額で東京が世界2位になった」と説明するように、世界の不動産投資市場を牽引するグローバルの投資家層が日本を選好した結果、日本不動産投資市場のプレゼンスが相対的に上昇することになった。

これを裏付けるように、日本への不動産投資額を見れば海外投資家の存在感が高まっていることがわかる。JLL日本 リサーチ事業部が調査した海外投資家による日本の不動産へ投資金額の推移では、2019年第4四半期から2020年第3四半期(9月中旬時点推定、以下同)まで、日本における総投資額のうち海外投資家による投資額の割合は急激に拡大している。

特に2020年第3四半期に至っては全体投資額のほぼ6割が海外投資家による投資であり、コロナ禍で「自粛」ムードに切り替えた国内投資家と比較すると、海外投資家の積極姿勢は依然として継続していることが窺える。

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「安全・安定」が魅力の日本不動産市場

海外投資家が日本不動産投資市場を牽引したのは2005年-2007年頃の不動産ミニバブル期までさかのぼる。しかし、リーマン・ショックに端を発する世界金融危機ではほとんどの海外投資家は日本から撤退していった。

今回のコロナ禍は世界金融危機に匹敵する「有事」といえそうだが、日本市場が海外投資家を惹きつける結果となり、世界金融危機当時とはその様相が一変している。

市場を牽引するコア投資家が日本を評価

では、なぜ海外投資家はコロナ禍であるにも関わらず日本の不動産投資市場に惹きつけられたのだろう。

その理由はいくつか考えられるが、赤城は3つの大きな要因を挙げる。1つ目は国家としての安定性、2つ目は低金利による高利回り、そして3つ目が新型コロナに対してレジリエンス(耐性・強靭性)のある不動産ストックが豊富な点だ。

① 投資市場の安定性

日本は世界3位の経済に支えられ、政権が交代しても政策の継続性が比較的担保されている「セーフヘイブン」としての魅力が海外投資家に選好されたと考えられる。また、新型コロナに対する死者数のみならず経済的な打撃が比較的少なかったことも追い風になった。

② 高利回り

コロナ禍にあっても依然として不動産の多くは安定した収益を出し続けている。加えて低金利状態が続き、自己資金に対する利回り(キャッシュ・オン・キャッシュ・リターン)が他国に比べていまだに高い。

③ 豊富な不動産ストック

コロナ禍によってレジリエンスが示された物流施設やレジデンシャル(住宅)において、既存ストックが潤沢だ。2000年初頭から多層階マルチテナント型の大型物流施設の開発が加速し、現在も大規模な新規供給が続いている。一方、レジデンシャル・セクターは諸外国では「マルチファミリー」と呼ばれ、比較的歴史の浅い新興アセットクラスと認識されているが、日本では上場REITにレジ専門銘柄が複数存在するように、コアアセットとしての歴史を有する。2020年上半期の物流施設とレジデンシャルを併せた投資割合は、オフィス・リテールの投資割合に肉薄している

赤城は「コロナ以前から世界の不動産投資市場を牽引してきた年金基金や保険会社、政府系投資会社といった『コア投資家』にとっては『レジリエント』な日本の不動産投資市場はコロナ禍において相対的に安全・安定した市場として再評価された」と強調する。

コロナ禍という世界的な「緊急事態」において、奇しくも日本不動産投資市場の底力が浮き彫りになったようだ。

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連絡先 赤城 威志

JLL日本 リサーチ事業部長

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