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世界有数のインバウンド人気都市“大阪”の逆襲

2023年4月のコラム「復活の号砲が鳴った”ミナミ“」で旅行者の回復スピードは現地にいなければ体感できないことを強調したが、数字にも顕著に表れている。半年が経過しようとするなか、足もとでは投資家が大阪での投資機会をうかがう動きは日に日に増しているが、回復スピードについてこられていない印象は拭えない。

2023年 09月 26日
回復”から“成長”へ

2020年、2021年に大阪を代表する商業地ミナミ(心斎橋・難波)の地価公示が2年連続で全国トップの下落率になった際に、大阪の不動産市場はその依存度の高さから「インバウンド頼み」などとネガティブな見解が目立った。

大阪・ミナミの公示地価に関するコラムはこちら

確かに大阪(関西)経済においてインバウンドの寄与度が大きいことは事実である。しかし、百年に一度と言われる感染症による影響の大きさよりも、インバウンドにおける世界有数の人気都市であるという事実に重きを置くのが不動産投資においては妥当な判断といえよう。

復活の号砲ではなく、回復から成長ステージに移行している。世界有数のインバウンドの人気都市“大阪”の逆襲がはじまろうとしている

そして、2022年5-7月の関西国際空港の外国人旅客数は、コロナ禍以前の2019年の同期に対して72%、2022年5-7月の大阪府の延べ宿泊者数は、同96%まで回復している。もはや「復活の号砲」ではなく、回復から成長ステージに移行している。世界有数のインバウンド人気都市“大阪”の逆襲がはじまろうとしている。

コラム「復活の号砲が鳴った“ミナミ”」はこちら
 

データが示す外国人旅客数の回復
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2019年5-7月の関西国際空港の外国人旅客数(国際線旅客)は152万人/月平均、1年前の2022年同期が4.6万人/月平均であったのに対して、2023年5-7月は110万人/月平均と2019年比で72%、前年同期比で2,391%にまで回復している。この数字は中国による訪日団体旅行の解禁前であるため、この点を踏まえるとほぼコロナ禍以前の水準まで回復しているといっても過言ではない。

足もとでは政治的な問題やオーバーツーリズムの問題などもあるが、これらの懸念点は大阪(関西)の魅力や人気に関わる問題でなく、時間の経過とともに解消されていくだろう。

関西国際空港の利用状況(航空旅客数/外国人旅客) 出所:大阪出入国在留管理局関西空港支局(外国人旅客数※国際線、通過旅客を含まない)の統計をもとにJLL作成

データが示す宿泊者数の回復

2019年5-7月の大阪府の延べ宿泊者数は345万人/月平均、1年前の2022年の同期は201万人/月平均であったのに対して、2023年5-7月は332万人と2019年比で96%、前年同期比で165%にまで回復している。

注目すべきは、日本人・外国人宿泊者双方が増加している点だ。大阪はインバウンドばかりが注目されがちであるが、日本人旅行者からも人気が高く、2023年5-7月は214万人と2019年比で104%、前年同期比で108%となり、いずれも増加している。大阪を中心に京都、神戸、奈良、和歌山を含めて関西の観光資源の豊かさが背景にあると考えられる。

外国人の宿泊者数においても2023年5-7月は118万人と2019年比で85%と、コロナ禍以前の水準に近づいている。関西国際空港を経由しなくても、宿泊地として大阪が選好されるケースが多いとみられ、訪日旅行の目的地として大阪を訪れたいと考える外国人が多いことを示唆している。

大阪府の延べ宿泊者数 出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」をもとにJLL作成(大阪府、従業員数10名以上の施設)

旅行者の多様化

画像提供:PIXTA

大阪での投資機会をうかがう投資家は、こうしたホテルにみられるような宿泊需要の変化をいち早く先取りして、投資を実現することが鍵になる

大阪はもともとラグジュアリーホテルをはじめとするハイグレードホテルが相対的に少なく、インバウンドが回復に転じた2022年下期にはこうしたホテルでのみ外国人旅行者の姿を見かけるようになった。

その後、2023年に入ると利便性の高いエリアに位置する好立地のホテルで、グレードを問わず外国人旅行者が目立つようになり、足もとでは裏通りにあるエコノミーホテルや民泊などでも外国人旅行者の姿が目をひくようになってきている。

投資市場におけるホテルセクターは、ハイグレードホテルや好立地のホテルが人気を集める傾向が強いが、宿泊需要の裾野は確実に広がっている。

今後、大阪での投資機会をうかがう投資家は、こうしたホテルにみられるような宿泊需要の変化をいち早く先取りして、投資を実現することが鍵になるだろう。

インバウンドの恩恵によって大阪(関西)経済は再び活気づいている。2025年には大阪・関西万博などのイベントも控えており、コロナ禍以前の姿を上回る成長を後押しする材料もある。投資家にはインバウンド効果がホテルのみならず、オフィス、リテール、物流施設にまで波及することを見据えて、大阪を投資対象として向き合っていただきたい。

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連絡先 山口 武

JLL日本 関西支社 リサーチディレクター

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