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データセンター需要が新興市場にシフトしている

アジア太平洋地域におけるデータセンターへの需要は日本をはじめとする成熟市場がけん引してきた。そして投資家やデータセンター事業者が次に注目 しているのが中国、インド、インドネシアなどの新興市場だ。

2021年 03月 23日

インターネット利用の拡大がデータセンター需要を支える

データセンターの需要はアジア太平洋地域の新興市場にシフトしており、投資家や施設所有者は同地域におけるインターネットの利用拡大を好機ととらえている。

中国、インド、インドネシアでは、2020年に大口投資家による多数の取引があり、新規施設に対する数十億ドルのコミットメントがなされた。

JLLアジア太平洋地域 コーポレートソリューションズ リージョナル・インダストリーズ ヘッド ラルフ・デビッドソンは「アジア太平洋地域全体のデータセンターに対する需要はかつてないほど高まっている」と述べている。

データセンターは、クラウドコンピューティングと消費者向けのモバイルインターネットの利用拡大を受けて、日本、香港、シンガポール、シドニーなどの市場で急成長を遂げている。市場調査大手のStatistaによると、ホスティング、ストレージ、クラウドコンピューティングサービスの市場規模は、2021年に1,630億米ドルに達するとされ、2017年から30%近い成長が予測されている。Cisco Systemsによるとアジア太平洋地域のクラウド通信量だけでも同期間中に150%以上増加する見通しだ。

JLL キャピタルマーケット オルタナティブ シニアディレクター ボブ・タンは「データ通信量の飛躍的な増加により、投資家やデータセンター事業者の両者にとって、データセンターは世界的にも地域的にも注目の投資対象となっている。人口構成や規制の枠組みの進化からみても、アジア太平洋地域のデータセンター市場は新興市場、成熟市場の双方で説得力のある投資機会となっている」と指摘する。

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データセンターの有望市場

データセンターにおける新興市場として投資家やデータセンター事業者から大きな期待が寄せられているのが中国、インド、インドネシアの3市場だ。

中国

2020年6月、ブラックストーンが中国のデータセンター事業者である21vianetに1億5,000万米ドルの投資を発表した。さらに、中国に拠点を置くデータセンター事業者のGDSとシンガポールのソブリンウェルスファンドであるGICは2019年に中国でデータセンターを建設・運営を行うパートナーシップを発表。タンは「中でも中国は最も多くの投資機会を提供している」と説明する。

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インド

インドではAdaniグループが約100億米ドルをデータセンターに投資する予定だ。2019年には米Digital Realtyと覚書を交わしている。また、2020年にはインド有数のハイパースケール施設が存在するムンバイにおいてColt DCSがハイパースケール施設を建設に着工し、完成すればインド最大規模となる見込みだ。そして、Equinixは2020年にGPX Indiaの買収を通じてインド市場への参入を発表した。

インドネシア

インドネシアは依然として発展途上段階にある。Space DCは2020年11月にインドネシアのデータセンター第1号を開設。Keppel GroupはSalimグループと共同でデータセンター開発を行うパートナーシップ契約を締結した。Princeton Digital GroupはXL Axiataのデータセンターポートフォリオの過半数持分を取得して市場に参入している。

日本

他方、日本のデータセンター市場は成熟しているものの、電力供給や通信を含むインフラが極めて安定し、高度な知識を持った質の高い人材が豊富。治安の良さや政情不安が小さいこともあり、国外のデータセンター事業者が関東圏や関西圏に相次いで参入している。電力供給や通信品質、自然災害リスクなどの注意すべき課題はあるものの、魅力的な市場として成長を続けている。

焦点は投資機会の見極め

JLLアジア太平洋地域 コーポレートソリューション リサーチ ヘッド ジェームス・テイラーは「アジア太平町地域におけるデータセンター市場のけん引役は成熟市場になっている一方、投資家やデータセンター事業者は新興市場の将来性に注目しており、適切な投資機会を見極めることが重要な焦点となっている」と締めくくった。

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連絡先 ボブ・タン

JLL キャピタルマーケット オルタナティブ シニアディレクター

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