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ステイケーション・ワーケーションにホテル業界は期待している

人の往来を避けるコロナ禍の状況にあって都市部のホテルは国内市場に注目している。ステイケーションやワーケーションが世界的な広がりを見せる中、ホテル業界は宿泊需要の底上げを期待している。

2020年 10月 15日

国内観光が回復の兆し

自宅近くのホテル滞在が増加

シンガポール政府が2020年7月、国内居住者に対するステイケーション(Stay+Vacationを組み合わせた造語:近場のホテルで休暇する旅行スタイル)利用のためにホテルの営業再開を許可すると、その週末が宿泊予約で満室となるのに時間はかからなかった。

数カ月に渡るロックダウンを経て、世界中で「息抜き」が渇望されていることは明白だ。しかし、渡航規制が敷かれ、市民が安全確保に慎重な姿勢をとる中で、徐々に国内観光が回復の兆しを見せつつある。 米国や英国をはじめ、あらゆる国々において自宅に近く、そして多くの場合は同一市内に存在するホテルへの滞在が増加している のだ。

このことが、コロナ禍で多くの空室を抱えるホテル経営者に恩恵をもたらしている。

JLLホテルズ&ホスピタリティ アジア アドバイザリー担当 シニア・ヴァイス・プレジデント サシ・ラジャンは「都市部のホテルの多くはステイケーション市場に狙いを定めている。ステイケーションによるホテル収入はコロナ前には遠く及ばないものの空室よりは望ましい」と指摘する。

シンガポールのホテル予約ラッシュは、7月と8月に2度あった連休にも後押しされた。

香港のホテルはシャンパンやウィスキーをテーマとした宿泊パックで国内客を誘致している。

英国では、6月に在宅休暇を義務づける規制が撤廃されると11秒ごとに1件のステイケーション予約が行われた。

ラジャンは「ロックダウン中、政府支援による隔離施設として機能していない限り、ホテルが客室収入を得る選択肢は限定的であった。しかしより重要な点は、 ステイケーションの受け入れで宿泊客に再びサービスを提供することが、ホテル業界全体のモラルを大きく引き上げる 点にある。目的意識が改まるからだ」と説明する。

国内市場の大小でステイケーション需要は異なる

とりわけ地域内や国内の玄関や経済ハブの機能を果たすゲートウェイ都市にとってステイケーションは重要だ。例えば、外国人観光客が旅行者の多くを占めるシンガポールでは国際事業に復帰できなければホテル業界は大打撃を受けるとの声も聞こえてくる。香港も同様だ。

一方、ホテルセクター全体を支えるほど国内市場が巨大な地域では様相は異なる。例えばオーストラリアでは、国内観光客がドライブで違った景色を楽しむことを選択するケースが多く、都市から離れた地方のホテルでのステイケーションが好調だ。

ラジャンは、「ホテルがより小さな市場に対応するには、エクスペリエンスの要素を拡大させるべきと考えており、次のように指摘する。

「魅力的な割引や食事付の滞在の他に、宿泊客が求めているのは新しい体験だ。ホテルには、宿泊客を引き寄せる多彩なコンセプトや付加価値の提供など、これまで以上に創意工夫が求められる」

例えば、周辺のビジネスやレストランとのコラボレーションや、カップルや家族連れといった特定の客層を対象とした特典を用意することも一案だろう。

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週末に限定しないホテル滞在

この他にも、ゲートウェイ都市のホテルは週末以外に注目することでステイケーション需要を最大化させている。従来、ステイケーションは1-2泊であることが多かったが、多くの都市で依然として在宅勤務が推奨される中、ホテル滞在を延長することが可能になっている。

インドでは、ホテルの快適な宿泊部屋で仕事をしつつ、グルメな食事や観光等の特典も組み合わせたワーケーション(Work+Vacationを組み合わせた造語:リゾート地や観光地でリモートワークしながら休暇する旅行スタイル)を提供 している。ムンバイのJWマリオットやベンガルールのコンラッドといったラグジュアリーホテルが、プロフェッショナルを対象とした4-7泊のワーケーション・パックを用意した。

また、インドのハイアットプレイスは、無料Wi-Fiと食事のルームサービスに加えてホテル内のどこからでも印刷可能なリモート印刷サービスとビジネスセンターへの24時間アクセスを提供している。

日本でもワーケーションに注目集まる

日本も同様にワーケーションに注目が集まっている 。政府が2020年7月にワーケーション促進を提唱した他、リゾート地の側面を持つ長野県や和歌山県などが推進している。

ラジャンは「ホテルでは、当日空室の問い合わせを受けた直後に宿泊客がチェックインするケースが増えている。宿泊客は、在宅勤務から環境を変化させることを求めている。ステイケーションは今のところ普及しており、これを週末以外へと延長する機会をホテルにもたらしている」との見解を示している。

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