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事業課題を解決するためのワークプレイス戦略

「働き方改革」の一環でワークプレイス改革に取り組む企業が増えているが、ハードを作り込んでも使いこなせなくては意味がない。重要なのはワークプレイスの意義、本質を共有するための仕掛けづくりだ。

3月 20, 2018

移転ありきのワークプレイス戦略は失敗のもと

「移転先が決まってからどの様なオフィスにするか検討する企業が多いが、働き方についての課題をしっかり検証し、戦略的にワークプレイスづくりを行わないと意味がない」

こう指摘するのはJLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部でワークプレイスコンサルティングを担当する溝上裕二だ。JLL日本では2年半前から「SWS(ストラテジックワークプレイスソリューション)」の提供を本格化。ワークプレイス戦略づくりに関する本質的な問題解決に奔走してきた。溝上は「クライアントが気づいていない課題を抽出し、その問題を解決するためにどのようなワークプレイスが必要なのか導き出すこと」がSWSに求められる役割だと説明する。

前述した通り、デザイン重視のオシャレなオフィスは確かに印象がよいが、使い勝手が悪いなどの様々な問題が噴出することが多々ある。多額のコストを投じての「改悪」では本末転倒。何のためにワークプレイスを再構築するのか。動機を明確にし、「稼ぐ場」としてワークプレイスが事業活動のエンジンとして機能しなければ意味がない。

ワークプレイスの存在意義を深掘りする- オフィスで働き方改革

クライアントの課題を解決する働く環境をいかにつくるか。SWSが最初に行うのはワークプレイス戦略における方向づけだ。まずはプロジェクトのゴールを確立。次にクライアントが抱える問題点を抽出するべく、経営層だけでなく実際にワークプレイスで働く従業員へインタビューを重ねる。ワークプレイスの現在の状態を調査・診断し、クライアントが思い描く「ありたい姿」を導き出す。その実現のためには何をすべきか戦略シナリオ案を複数策定し、最終的に課題解決に向けた働き方変革の方針とワークプレイス戦略を確立する。JLLがサポートしたあるクライアントでは、SWS導入によってブランドごとに縦割りになった営業部門のコミュニケーションが現状のオフィスでは育まれていないという経営課題を導き出した。また、他のクライアントでは協力会社に自社製品やその課題を深く理解してもらい、よりコワーキングする必要があることに気が付いたそうだ。こうした「プログラミング」と呼ばれる要求条件確立の過程を経て「ワークプレイス戦略」を構築。実際の設計・施工で生かすことになる。溝上は「十分な調査とインタビューによって事業戦略にコミットしたワークプレイス戦略づくりにつなげられる。具体的にワークプレイス設計を行う前に『どの様な環境をつくるか』というクライアントの要求条件を整理することが最も重要」と述べている。

従業員の意識を変えるチェンジマネジメント- オフィスで働き方改革

プログラミングでワークプレイスづくりに関する要求条件が揃い、設計・施工、資材や什器の調達・移転業務などの実務におけるプロジェクトマネジメントが始動する。これと同時並行でSWSに課せられる重要な業務がチェンジマネジメントだ。新しいワークプレイスが完成しても盛り上がっているのは経営層とプロジェクト担当者だけ、他のスタッフが置き去りになるケースは意外に少なくない。特に従前の島型オフィスから突然自由に働く場所を選べるABW(Activity Based Working)型オフィスに移行する大きな変化にスタッフがついてこられず、心理的な拒絶感が芽生えやすい。そこでチェンジマネジメントでは入居までに新しいワークプレイスの意義、本質をスタッフに浸透させる役割を担う。溝上によると「スタッフに議論してもらい、最終的には『自分が作ったワークプレイスだ』と愛着を感じてもらえるようにすること」が目的だという。様々な仕掛けを施してスタッフの関心をワークプレイスへ向かわせる。例えば、スタッフに対して家具選定等の参加型イベントを多数実施。おのずとワークプレイスへの関心度は高くなる。

入居前までにチェンジマネジメントを完了させ、入居3カ月-6カ月の「使用後」を評価する。ワークプレイスとしてうまく使われているか、スタッフが満足しているか6段階評価でアンケートを実施。問題があれば改善に繋げていく。溝上は「ここで得られた問題をフィードバックし、次のプロジェクトで生かすなど、ワークプレイス戦略のアップデートに繋げていく」と説明する。

ハードを作るだけでは悲惨な状況に…- オフィスで働き方改革

チェンジマネジメントを実施せず、失敗した事例は枚挙にいとまがない。例えば、ABW型オフィスにしたものの座席が固定化してしまう。ラウンジを作ったものの使い方がわからず、自分の席から動かない。さらに悲惨な状況に陥ることもある。溝上は「人望のないラインマネージャーには誰も近づかず、オフィス内で『ドーナツ化現象』が起こるケースもある」と穏やかではない。ABW型オフィスはラインマネージャーにとって鬼門であり、これまでの島型オフィスなら部下の管理も容易だったが、ABW型オフィスは部下の行動を把握しきれない。部下の判断力を鍛え、独り立ちさせないと事業が回らなくなる。溝上は「企業が業績を伸ばしていくためには個人個人で判断できる人材をいかに育てるかが鍵になる。そのためには多種多様な体験をし、学習でき、個人の自主性を増強する環境を用意する必要がある」と力説する。

ワークプレイスは企業が抱える様々な課題を解決し、事業成長を促すために最も重要な場所だ。新たに構築するワークプレイスの本質に焦点を当てるSWSに課せられた役割は非常に大きい。

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