記事

JLLが支援した大学生ハッカソンから生まれた不動産テックの可能性

「イノベーターたちの甲子園」を標榜する日本最大規模の学生向けハッカソン「JPHACKS」において「JLLスポンサー賞」を受賞したのが不動産テック「まどりーだー」だ。4人の学生イノベーターがわずか2週間で開発。AIとVRを駆使して既存サービスの欠点を解消した優れものだ。

2023年 02月 10日
大学生がハッカソンで開発した不動産テックとは?

目の前には3D化された「部屋」が現れ、顔や体の向きを変えるとグルリと部屋の中の様子がわかる。もちろん部屋の中を歩き回ることができるし、「握る」などの手の動きも操作できる……これは、間取り図から実際の広さを認識できる不動産テック・サービス「まどりーだー」の体験談だ。

「まどりーだー」を開発したのは東京大学を中心とした4人の学生イノベーターたち。日本最大規模の学生向けハッカソン「JP(ジャパン)HAKCS 2022」に参加した彼らは、わずか2週間でこの不動産テック・サービスを開発した。プラチナスポンサーとして「JPHACKS」に協賛したJLL日本が参加者に提案した課題「『不動産の未来を拓き、より良い世界へ』を実現するためのアイデア」として最も優れていたことから見事「JLLスポンサー賞」を獲得した。
 

JPHACKSのサイトはこちら
 

上京時の部屋探しの苦労からアイデアが生まれた

AIとVRを駆使し、間取り図の専有面積部分から任意の2点間の距離を捕捉し、壁を含めて3D化された室内空間をバーチャル体験できるというウェブアプリを開発

開発メンバーの1人、春口 和登さんは「間取り図が意外と分かりにくい点に着目した」と、「まどりーだー」を開発した経緯について説明する。

学生が引っ越しする際に利用する賃貸物件の検索サイトを利用した方は非常に多いのではないだろうか。サイトに掲載されている間取り図には「●帖」、「●㎡」と広さを表しているが、この数値が実際にどの程度の広さなのか体感的にわからず、家具の配置を事前に考えるのが難しいといった課題がある。開発メンバーの中村 孔星さんは「開発メンバーは中学からの同級生。大学入学時の部屋探しで苦労した経験からアイデアが生まれた」と説明する。

こうした課題を解決するため、彼らはAIとVRを駆使し、間取り図の専有面積部分から任意の2点間の距離を捕捉し、壁を含めて3D化された室内空間をバーチャル体験できるというウェブアプリを開発することにした。

「まどりーだー」の主な機能
1. AIによる距離計算

「まどりーだー」の主な機能は2点。1つは間取り図から寸法を導き出す計算機能だ。ウェブサイトに掲載されている間取り図データを読み込み、専有面積に該当する部分をセグメンテーション(自動/手動)する機能を独自開発した。専有面積から1ピクセルあたりの面積に算出することで1ピクセルあたりの長さを導き出し、2点間の距離を計測できるようにした。

2. 間取り図の3D化

もう1つの機能は間取り図の3D化機能だ。ウェブ上に疑似的な部屋を作り出し、VRゴーグルを通じて部屋(3D空間)を内見することができる。間取り図に記載された壁部分を浮き出させることで壁に区切られた部屋を再現する。VRゴーグルを装着すれば、実際に部屋の中を動き回るような感覚が味わえる。
 

間取り図から3D空間を生み出す

「まどりーだー」は仮想空間によって実物に近い広さを体感できるため、既存のバーチャル内見ツールの欠点を解消している

JLL日本 マーケティング&コミュニケーション事業部長 石井 孝典は「バーチャル内見システムはすでに存在しているが、広角カメラで撮影した画像を使用していることが多く、実際に内見に訪れると狭く感じる。しかし『まどりーだー』は仮想空間によって実物に近い広さを体感できるため、既存のバーチャル内見ツールの欠点を解消している」と評価する。また、家具を配置できる機能や、天井高や日射条件、窓から見える景観などを反映させる機能が求められる他、居住用のみならずオフィスへの活用など、実用化を期待する声は決して小さくない。

とはいえ、「アイデアとしては面白いが、まだ製品としてリリースできない」というのが開発者たちの本音だ。開発者の1人、廣津 和哉さんは「突貫工事で開発したため、ウェブアプリのコードを一から書き直さなくてはならない。また、AIに学習させた間取り図は400枚程度と非常に少なく、現時点である程度の精度が出ているものの数万枚程度まで学習させて3Dモデルの精度を高める必要ある」と説明する。
 

JLLは不動産テックリーダーとして不動産市場の活性化に貢献

JLLは「まどりーだー」の開発メンバーを表彰

JLL日本は新たな不動産テックの開発や不動産業界におけるオープンイノベーションの創発などに注力し、不動産市場の活性化に貢献

不動産市場の参入のしやすさなどを表す指標として、JLLが隔年で発表している「2022年版グローバル不動産透明度インデックス」では日本の不動産テック普及度は28位に低迷しており、デジタル化が進んでいる市場との格差拡大が大きな課題になっている。

JLL日本は新たな不動産テックの開発や不動産業界におけるオープンイノベーションの創発などに注力し、不動産市場の活性化に貢献していく腹積もりだ。

JLLの不動産テック・サービスはこちら

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。