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「第三のオフィス」日本でも普及拡大

メインオフィスを「第一のオフィス」と定義すると「第二のオフィス」となるのはサテライトオフィスではないだろうか。そして今最も注目されているのが「第三のオフィス」フレキシブルスペースの存在だ。

2月 26, 2018

サテライトオフィス利用増加、国内デベロッパーの参入続く

企業が進める「働き方改革」の実現に向けて「第二のオフィス」サテライトオフィスを活用する企業が増えて居る。都心にあるメインオフィスから離れ、居住地域の近くにテレワーク可能なオフィス空間を用意する。メインオフィスを基点に点在することから「衛星」という位置づけだが、従業員は都心まで通う必要がなくなる。本格化した「働き方改革」の波を受けてその数は増殖中だ。

デベロッパーやプロパティマネジメント会社がサテライトオフィスの賃貸事業へ参入するケースも増加中だ。代表的なのは2016年に「NewWork」を開始した東急電鉄だ。自社保有物件ではなく、他社保有ビルの床を借り上げて事業を開始することから、その本気度が見て取れる。業界大手の三井不動産も2017年から法人向け多拠点型シェアオフィス「WORKSTYLING」事業を本格的に始動した。東京建物やNTT都市開発も新規参入組だ。いずれも法人がターゲットとなる。施設利用を希望する法人と契約を結び、当該法人に在籍するワーカーが居住エリアに近いサテライトオフィスへ赴いて通常通りの業務を行うことができる。

サテライトオフィスが発展していくとメインオフィスの需要が減少するとの声もあるが、JLL日本 コーポレーション営業本部 事業部長 佐藤 俊朗は「確かにオフィスの従業員1人あたり面積は低下傾向にあるが、メインオフィス内にカフェを設ける等、共用部を充実させて人が働きたくなる仕掛けづくりが重要になる。そのため、床面積の著しい需要減退はない」との見解を示す。地方都市ではより地域社会に近い空間をオフィスへ替えていく動きも顕在化している。地域と企業の交流の場としても機能し、大手IT企業は生産性が約3割向上したとの事例もあるほどだ。

米国で爆発的に増加

サテライトオフィスの活用が広がっている中、今後日本でブレイクしそうなのが「第三のオフィス」だ。JLLでは「フレキシブルスペース」と呼ぶが、サービスオフィスやコワーキングスペースが該当する。佐藤によると「利用時間や契約期間が自由に選択でき、内装工事等の初期投資が不要という『柔軟さ』が最大の特長」とフレキシブルスペースの由来を説明する。今年から日本に本格上陸する米国発のコワーキングスペース「WeWork」のようにリゾートホテルのような快適な環境で、ITが充実したカフェにいるような感覚で仕事ができる。人に寄り添った施設運営がフレキシブルスペースの人気を押し上げている。

このフレキシブルスペース、実際に米国では普及拡大が進み、オフィス市場において圧倒的な存在感を示している。JLLの調査ではフレキシブルスペースは2010年時点で297,656坪だったが、2014年は723,888坪、2017年になると1,438,722坪まで拡大している。「丸ビル30棟分」に相当する床面積がフレキシブルスペース化していることが判明した。佐藤によると「全米のビルストックの5%程度をフレキシブルスペースが占め、最終的には30%程度まで拡大すると推測される。1人当たりに必要なオフィス面積は減少しており、空室となった既存床をフレキシブルスペースが埋めていくという構図となる。そして、フレキシブルスペースを導入したオフィスビルのほうがリーシングは有利になり、売却価格が高いという統計もある」と指摘する。

企業がフレキシブルスペースを利用するメリットは多岐にのぼる。1つはコスト削減だ。内装造作工事に多額のコストをかけ、長期の賃貸借契約を結ぶのはリスクがある急激に変化しそうなスペースニーズの場合は、投下資本利益率(ROIC)の観点から見てもフレキシブルスペースのほうが有利だ。その他、自分たちの生活スタイルに合わせて働きたいと考えるワーカーへの対応、ビジネス拡大のために俊敏に働ける場所の必要性等が挙げられる。佐藤は「在宅勤務を推奨していたグローバル企業が『Back to Office』に回帰している。コラボレーションやコミュニケーションの重要性を再認識し、在宅勤務の代わりにフレキシブルスペースを用意するようになった」と指摘する。企業の多角的なニーズを満たすことでグローバルトレンドに躍り出た。

2018年は日本の「フレキシブルスペース」元年に

さて、ここまでは米国の状況に触れたが、日本でフレキシブルスペースは普及していくのだろうか。答えは「YES」だ。前述した通り、長期間の賃貸借契約に縛られない柔軟なオフィスに需要は集まるはずだ。特に新規プロジェクトを立ち上げる際、いかに早く事業を始められるかが鍵を握る。賃貸借契約を結び、内装造作工事を経て1年後に完成するオフィスでは他社競争に勝てなくなるためだ。そして、原状回復工事の責務を回避できる。

働き方改革による生産性向上が重視される中、イニシャルコストが高い日本ほど柔軟性の高いフレキシブルスペースに対する需要はますます拡大していくだろう。佐藤は「今年は日本におけるフレキシブルスペース元年になる」と断言している。

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