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今日におけるオフィス環境の比較方法

モダンオフィスのベンチマーキング手法は進化を続けており、より洗練されたワークプレイス体験の質的評価が行えるようになった。競争力を保とうと考える企業にとって、その重要度は増している。

2019年 10月 29日

今日の企業は、オフィスの所在地や空間の使い方を競合他社と単に比較するようなことはしない。最高の従業員を勧誘し、確保するために、各社はワークプレイス体験全体を比較対象にしようとしているのだ。

ビジネスの世界ではこれまで「1平米あたりのコスト」や「デスク稼働率」といったデータを通じて不動産の評価を行ってきた。しかし人間主体のワークプレイス環境が重視されつつある現在、従業員の幸福度を測定基準にする傾向が強まっている。

この基準には静かな空間や業務終了後のプライベートな時間、あるいは敷地内のフィットネスセンターの利用度や人気度、管理職とのコミュニケーションの迅速性などが含まれる。

JLLのグローバル・ベンチマーキングサービス担当部長のAndrew Hawkeswoodは、「ベンチマーキングを通じて競合他社の動向や、自社がすでに占有しているスペースを最適化する方法を可視化し、把握することができる。しかし今日、オペレーションレベルで秀でるだけでは不十分とみなされる。従業員は給与だけでなくワークプレイス環境やアメニティも考慮に入れるようになっており、企業は不動産をタレントの勧誘と確保につながるビジネスアセットとして見ている」と語る。

とあるグローバルバンクのCFOは、自社の不動産が同業者よりも合理化され効率的に運営ができていると知らされたが、それに対して彼はこう発言した。「それは結構だ。しかしここは素晴らしいワークプレイスといえるだろうか?」

サステナビリティ認証にはじまり地域コミュニティや社会事業への関与まで、責任ある企業活動(Responsible Business Initiatives)のベンチマーキング分野は成長を続けている。

Hawkeswoodは「サービス、アメニティならびにブランディングの質的評価を実施することで、企業はワークプレイス改善活動が望んでいた影響を与えているかどうか、またそれが投資に見合ったものかどうかを適切に判断できるだろう」と語る。

投資効果の分析

定量的データもまた重要だ。オフィスのスマート化が進むにつれて供給されるデータ量も増え、ベンチマーキングはテクノロジーの進歩による恩恵を多く受けるようになった。

JLLグローバル・ベンチマーキングサービス オペレーション責任者 Bruce Horneは「今日の我々の生活では、データがより大きく重要な役割を担うようになった。ベンチマーキングは目新しいものではないが、利用可能なデータの量が増え続ける現在は、より広く普及している」と述べる

データは「ある企業の不動産の利用状況が競合他社や業界トップのそれと比べてどうなっているのか」を測定するために利用されるだけではない。フレックススペースがますます重要視されるなか、各エリアがどのように使われているのかを理解するためにも用いられる。

Hawkeswoodによると、「資金面に問題がなかったとしても、自社スペースのバリューとアメニティが他社のスペースと比べてどうなっているのか、それを理解することで投資判断がしやすくなる」とのこと。

一方、グローバル企業の場合、各地のオフィスのベンチマーキングを行うことで、どの地域/オフィスが自社内ならびに業界内で最も効率的な運用をされているのかが浮き彫りになる。

この情報は特定のロケーションを拡大すべきか閉鎖すべきかという判断に寄与するだけでなく、フレキシブルな空間を採り入れようと考える企業が増えるなかで、新しいワークプレイス環境を見つけるための戦略ももたらしてくれる。

Hawkeswoodは「柔軟性と即応性は、不動産の主要ベンチマークとして重要度を増しつつある」と指摘している。

求められる一貫性

比較するビジネスまたはスペースの基準が一貫しているかどうかで、ベンチマーキングの効果も変わってくる。たとえば国によって平方フィートの定義が異なることを考慮に入れてからでないと、正しい比較ができないし、また複数の通貨での価格を考慮する際は、地域ごとの生活コストに応じた計算が必要となる。

Horneは、「異なる地域やシステムからデータを集めるときは注意が必要で、適切にデータを組み直してから比較しないと、測定基準の信頼性獲得やポートフォリオ開発といった面で問題が生まれかねない。にもかかわらずその点を安易に考える企業が時折みかけられる」と語っている。

1棟のビルの中だけでみても、特定の企業とその事業目標に関する最も効果的な測定基準を採り入れ、そのうえでベンチマーキング分析を行うのは簡単ではないかもしれない。ただしGEMcode(世界地所測定コード)はその助けになる。

事業目標が具体性に欠けるものだと、有用な結果に到達すること自体が困難になる。

Hawkeswoodは、「従業員幸福度のような基準は測定が困難だ。というのもこれには空間そのものと、仕事の満足度(当然、金銭的報酬が含まれる)の兼ね合いが生じるからだ」と述べている。

未来の建物のためのベンチマーキング

スマートビルに関心を示す企業が増えている。経営陣がテクノロジーへの投資の効果や先々の機会のありかを理解するにあたって、ベンチマーキングは中心的なファクターとなる。

Hawkeswoodは「従業員間のコラボレーションが増え、モビリティが高まったことで、ワークプレイスに求めるものが変化しつつある。建物のスマート化が進めば進むほど、テナント企業は従業員のユーザーエクスペリエンスを管理調整しやすくなるだろう」と言う。

ベンチマーキングも進化するオフィス環境に順応し、より広範な比較基準を用いられるようになってきた。

サステナビリティへのコミットメントをアピールしたい企業であれば、CO2の低排出(あるいはマイナス排出)を比較することもできるだろう。従業員のメンタルヘルスサポートやCHO(Chief Happiness Officer)の存在など、幸福度に関する評価も多く存在する。

精度と包括性の高いデータを組み合わせることで、自分たちが創り出すワークプレイス環境がどれほどの効果をあげているのかを、企業視点、競争者視点、そして従業員視点で把握できるようになるだろう。

Horneは「データリッチなスマートビルは常識になりつつある。ベンチマーキングとは、そのデータを収穫して、どこに経費が掛かっているか、そしてどこが成長しつつあるかを理解する手段だ。より多くのデータがあれば、それを正しく分析して戦略的知見を獲得し、より高度なマネジメントが可能になるだろう」と語る。

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