オンライン会議の課題解決で注目浴びる3Dホログラム
ハイブリッドな働き方への移行が進む中、オンライン会議の課題が顕在化しつつある。すべての会議参加者に平等な機会を提供するための解決策として3Dホログラム技術に注目が集まっている。
様々な業界で3Dホログラムの実証実験が進む
映画「スターウォーズ」でR2-D2が立体映像を投影する姿をご覧になったことはあるだろうか。この映画の中の空想が現実のものになろうとしている。空中に映像を浮かび上がらせる3Dホログラムの研究は進んでおり、先般、アメリカ航空宇宙局(NASA)は国際宇宙ステーションに3Dホログラムによって地球にいる医師を宇宙へ「派遣」することに成功。また、日本のコンビニエンスストア大手のセブン-イレブンはホログラム技術によって直接画面に触れずに操作できる「空中ディスプレイ」の実証実験を開始し、買い物客を驚かせた。
ハイブリッド会議の課題を解決する3Dホログラム
3Dホログラムを活用する実証実験は様々な業界で盛り上がりを見せつつあるが、近い将来、3Dホログラムを導入したオフィスが登場するかもしれない。ハイブリッド・ワークが定着するにつれてコミュニケーションとコラボレーションに対する不安が高まっているためだ。
今やオンライン会議は日常の一コマになりつつあるが、相手の表情や反応が読み取れず、意思疎通に限界を感じている企業も少なくない。JLLテクノロジー 上級副社長 ダン・バーンズは「会議室とオンライン、2つの参加者グループが混在することが当たり前になっており、会議に対する積極性に大きな隔たりが生じている」と指摘する。こうしたハイブリッド・ワーク時代の課題に対して仮想オフィス・ツールを活用する企業が増えているが、さらに進歩的な一部の企業は「3Dホログラム」がその答えになる可能性があると考えている。
例えば、フレキシブルオフィス大手のWeWorkはカナダの企業ARHT Mediaが開発した最新技術を活用し、ホログラム会議テクノロジーの導入を発表した。また、スロバキアのスタートアップのMatsuko社はスマートフォンのカメラを自分に向けて発言することで3Dホログラム映像を表示しながらオンライン会議が行えるARアプリを発表した。
日本でも3Dホログラムを活用したリモートワークシステムが開発されている。スタートアップ企業のH2Lは、リモートワーカーの映像や動きを透過ホログラムで離れた場所(オフィス)に投影するソリューションを開発。実際にオフィスに滞在しているように話しかけたり、ホログラムに設置されたカメラを通じてモノを見せたりすることができ、オフィスワーカーと同じようなコミュニケーションを取ることができるという。
バーンズは「3Dホログラムで実物大の同僚が会議室にいきなり登場するという時代は、まだ道半ばだろう。しかし、ハイブリッド・ワークの台頭によって生み出された課題に対応している」と指摘する。これによって、すべての会議参加者に公平な機会を提供することが可能になる。
3Dホログラムは万能ではない
バーンズは「3Dホログラミング技術のように、より没入感のある体験を可能にするオンライン会議テクノロジーは、会議の質を大幅に改善し、オフィスで働く人々と自宅で働く人々の間の摩擦を取り除くことができる」と述べている。企業はハイブリッド・ワークで苦労する従業員のために、共創・協働に適した作業環境を用意するために新しいテクノロジーを使用することに柔軟であるべきだろう。
しかし、その半面、3Dホログラムが万能のソリューションではないことを認識しておくことも重要だ。クラウドコンピューティング、リモート作業ツールをはじめ、ワークプレイスなどのアプリケーションやコラボレーションツールまで、ハイブリッド・ワークを効率化するために役立つ多彩なオプションが存在する。バーンズは「センサーによるアプリケーション、予約システム、オンライン会議システム、モバイルアプリなど、複数の異なるシステムが統合され、働く人々の感情の摩擦やストレスが軽減されることが最も重要」と述べる。
3Dホログラム技術のみならず、様々なテクノロジーを活用し、従業員により優れたエクスペリエンス(良い体験)を提供することがハイブリッド・ワーク時代に最適な働き方改革になりそうだ