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FMに求められる「働き方改革」への対応

ファシリティマネージャー(FM)に求められる役割は時代の趨勢によって変化してきた。基本となる業務は施設管理に他ならないが、企業が推進する「働き方改革」やテクノロジーの進化といった社会的環境の変化に合わせて、FMに求められる役割はさらに高度化・多角化していきそうだ。

2018年5月29日

FM市場規模は拡大の一途

FMのグローバル化がついに本格化しそうだ。2017年4月、FMで初となる国際規格ISO41011及びISO41012が発行され、今年度中には認証規格ISO41001「FM-Management Systems – Requirements with Guidance for Use」が発行予定だ。これによりFMを定義する語彙やファシリティサービスの供給に必要な項目、サービスレベル評価等についてのグローバルな指針が示される。FMの世界基準が策定されたともいえるのだ。

これに伴い、FMのグローバル市場規模も拡大の一途を辿っている。2020年までには約7,000億米ドルへの成長が見込まれ、2025年~2030年頃には1兆億ドルまで拡大すると予測。現時点では最大のマーケットは欧米だが、アジア太平洋地域におけるFMの需要はこれまで以上に拡大すると見られている。FM事業のアウトソーシング化の進捗度は北米では60%以上に達している一方、アジア太平洋地域では約30%程度に留まり、その差は大きい。

社会情勢の変化がFMに影響

10年前から現在にかけてFM業務の根幹を担うのは施設管理や総務サービスに付随するコスト管理であることに変わりはないが、世界的な法改正、グローバルビジネス動向に密接に関係し、目まぐるしく変化する社会情勢がFMに多大な影響を及ぼしている。2007年と2011年にIFMA(国際ファシリティマネジメント協会)が発表したレポート「Exploring the Current Trends and Future Outlook」をもとに、FMの最新トレンドを比較してみたが、過去10年でFMに求められる役割が大きく変化していることがわかる。2050年までに65歳以上が総人口の3分の1を占める日本は特に高齢化率が高い。高度経済成長期に建設された施設・インフラの老朽化対策も必要だ。ヒトとモノ、双方の高齢化に対してFMは10年ほど前から継続的に対応してきたが、東日本大震災を契機に、建物のBCP対策や安全性確保が重視されるようになる。そして、今後FMを進化させるのはテクノロジーの活用といえるだろう。データ収集などを行い、次世代の働き方を実現するためのアイデアが求められる。コスト管理から安全性確保へ、そして現在は執務空間の快適性向上へ。FMに課せられる役割はより高度になっているのだ。

テクノロジーの活用が鍵に

FMに期待される役割をまとめると大きく3つに大別される。「サステナビリティ」、「テクノロジー」、そして近年注目されるのが「ワークスタイル変革・ウェルネス」だ。サステナビリティは恒常的にFMに必要とされるものだが、自転車通勤に対する対応や電気自動車用の充電設備といった、他の産業の発展を受けてファシリティを変化させていくことが求められている。また、新たなソフトウェアを用いて施設管理の効率化を実現しなくてはならない。そしてワークスタイルを効率化するためにもテクノロジーの力が必要となる。スマートビルやスマートシティに代表されるように、あらゆる施設データがIoTセンサー等を用いて逐次データ収集を行い、クオリティライフワークを実現するためのワークプレイス改革や社員満足度向上のためのワークプレイスづくりに生かされようとしている。FMがこうした施策を提案する際、まずはデータを蓄積することで問題点の「見える化」を進めなければクライアントの理解は得られないだろう。そして収集したビッグデータは会議室の最有効活用や賃貸床面積の調整等にも活用できる。すでにワークスタイルの変革に着手する企業も多く、執務空間の多様化が進んでいる。

「働き方改革」実現に向けて

FMに求められる過去10年のトレンドは大きく変化してきた。では、今後FMに求められる役割はどのようなものになるのだろうか。これもテクノロジーの進化から大きな影響を受けることになりそうだ。2020年には世界人口の8割がスマートフォンを所有すると予測され、2025年には情報通信量の半分をIoTにおけるビッグデータが占めると予測される。VR/ARの活用、自動翻訳の実用化も控えており、2030年になると特定のオフィスで働くのではなく、外部のコワーキングスペースやサテライトオフィスといった「フレキシブルスペース」の需要が高まると予想される。ワークプレイスに携わるFMはこうした変化に対応するための施策を常に意識するべきだろう。

先進的な海外グローバル企業はFMデータの収集を完了し、すでに運用適正化プロセスまで構築している段階にあるが、日本企業の場合はその段階になく、まずはFM状況を可視化し、自らの足元を把握することから始める必要がある。FMはアセットマネジメントの範疇となり、予算も数十億円規模に膨らむ可能性が高い。経営陣がコミットし、会社全体で資産効率の改善を図ることが求められる。

ただし「個の意識」が高い欧米ではFMの裁量で業務を推進できるが、日本企業は「上位下達」の文化が根深く、現場から変革の声が挙がることは稀だ。外部のFMが「ワークプレイスや制度を変える」と提案しても変わらない。従業員の当事者意識を喚起することが「働き方改革」実現の第一歩となるだろう。

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