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オープンプランのオフィスにもプライバシーを

オープンオフィスはコラボレーションを促すこともできるが、ぎこちない静けさをもたらすこともある。従業員が独りで働くスペースがないようならば、ワークプレイス設計を見直すべきだろう。

2017年 05月 12日

業務時間中、気軽に会話をする時間と独りで集中して仕事をする時間を誰もが必要としている。子どもの学校からの連絡や、機密情報が含まれる顧客の電子メールを読むためだったり、次なる大きなビジネス・アイディアのブレーンストーミングのためだったりするだろう。

残念なことに、米国では最も一般的なオフィススペースであるにもかかわらず、一部のオープンオフィスでは肩越しに誰かに覗き見られている、あるいは聞き耳を立てられているという感覚が拭えない。従業員のワークスペースは低いパーティションで囲まれたキュービクルに限定されることがほとんどであり、多くの従業員が私用は階段やキッチン、更にはトイレで済ませていることは驚きに値しない。

この種の環境は、単に居心地が悪いだけではなく実際にエンゲージメントを阻害する可能性がある。JLL ストラテジック・コンサルティング・グループ マネージングディレクター バーニース・ブーチャーは「職場におけるプライバシーの欠如は、生産性に対する明確な犯罪行為だ。見識ある組織はプライバシーを特権ではなく権利とみなすことが互いに利益をもたらすと理解している」と強調する。

事実、エンゲージメントはそれを自由に回避する選択肢がある場合にのみ進展することを示す証拠が増えている。

よく設計されたオープンオフィスの隠れた価値

オープンプランのオフィスの最も目につく魅力はコスト節減であり、従業員一人当たりのコストは最大50%低下する。しかし、従業員が適切な場所で適宜最高の仕事ができると感じる場合にのみ、ワークプレイスの長期的価値は確固たるものとなる。

これは必ずしもオフィスの完全な再設計を必要とするわけではなく、簡単な対策でも効果は期待できる。移動可能なパネルで、ワークスペースをよりよく管理することが可能だ。例えば、小さなチームがいくつかのパネルを組み立ててプライベートな会議スペースを作ることができるだろう。

低いパーティションで囲まれたキュービクルで働く従業員は、スクリーンフィルターや植物で視覚的プライバシーを確保できる。会議室には必要に応じて曇りガラスやブラインドの設置が可能だ。

また、静かなBCMやホワイトノイズで会話を聞こえにくくすることもできる。ウールやフェルト等の素材をキュービクルの裏張りに使えば防音効果が得られる。

長期的成功のための戦略計画

JLL ワークプレイス・ストラテジー及びチェンジマネジメント シニア・ヴァイス・プレジデント フィル・カーシュナーは「エンゲージメントと生産性が高く、プライバシーを重視したワークプレイスに最適なシナリオは、アクティビティー・ベース(ABW)型の設計である」と語る。この計画シナリオでは、従業員は作業の性質に応じて個別のデスク、電話ボックス、または会議室等で異なる環境で働くことが可能だ。

ワークプレイス内の異なるエリアには個別のルールが適用される。例えば、サイレントゾーンでは電話使用が禁止されているといった具合だ。多くの組織が食堂やラウンジにエンゲージメントを意図した設計を用いるが、グループ会議にプライバシーを確保するため布張りの防音ブースも設置されている。

マサチューセッツ工科大学の研究によれば、ほとんどの従業員がワークプレイス内で12m以上移動することは少ないため、電話ボックス等のプライバシーエリアは各フロア、またはウィングごとに設置され、明確な標識が設置されるべきである。

スペースの最大活用

ブーチャーは「優れた設計は幸福なワークプレイスの鍵となるが、従業員にそうしたスペースの利用を認めることも同様に重要だ」と説明する。金融業界等では指令・統制文化が上司に働いていると認められるためには常時在席していなければならないと従業員にプレッシャーを与えることが多いという。銀行はこの文化を改めようと努力しているが、スペースの適切な利用を促すためには、管理職の協調的な取組が必要となる。

ブーチャーは「在席主義は最もよく計画されたワークプレイスをも妨害する。在席イコール仕事中とみなされるならば、自由に動き回ることはふざけているように見られてしまう。管理職は、こうしたスペースを目に見えて利用することでロールモデルとならなければならない」と指摘し、最初の1カ月にオープン・コラボレーション・スペースで少なくとも1回会議を行うか、あるいはカフェで3回仕事をする等の具体的な目標を定めることを提案する。そして、従業員に適切なスペース利用を求めるならば、管理職は口先だけではなく態度で示すことも必要となる。

オープンオフィスは正しく活用しなければ落とし穴がある。成功するオフィスは、コスト削減だけではなく職場環境を改善することで従業員の士気を高めることも重視しているのだ。

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