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インハウスのカフェバーはオフィスの新たな魅力となるのか

より多くの企業が、バリスタが従業員にグルメなラテや水出しコーヒーを淹れるフルスケールのカフェを社内に備えている。

2017年 08月 01日

一時はテクノロジー・セクターの独断場であったインハウスのカフェバーが世界中のオフィスで主流化している。イェルプ、ツイッター、グーグル等のIT企業に続き、JLL等のプロフェッショナル・サービス企業からサイバーセキュリティ企業のレジットスクリプト、健康保険グループであるメディケアまで、より多くの企業が社内にフルスケールのカフェを持ち、バリスタが従業員に高級ラテや水出しコーヒーを淹れている。

2015年のパッケージド・ファクツの報告によれば、正社員の75%が勤務中にコーヒーを飲むとされており、インハウス・カフェの需要は多い。ほとんどの場合、企業は既存のコーヒーブランドと組んでいる。例えば、LinkedInはサンフランシスコのオフィスに人気カフェであるイクエーターを入居させ、コーヒーだけではなく同社の従業員にラテ・アートのワークショップやコーヒー・カクテルのクラスフーディーズ・プログラムに参加する機会を提供している。

JLL ワークプレイス・ストラテジーチーム シニアアソシエート デジーナ・チャペルは「米国は他の多くの国々同様、コーヒー文化が旺盛であり、誰もがコーヒーの好みに非常にうるさい。多くの従業員にとってアレンジの選択肢が限られた特徴のない飲料が提供される典型的なオフィスの休憩所は魅力を持たない。」

近代的ライフスタイルにおけるコーヒーの位置付け

今日のモバイル・ライフスタイルも大きな役割を果たしている。全米コーヒー協会によれば、米国人の40%が自宅外で準備されたコーヒーを飲んでいる。一方、フレキシブルワークの増加が職場をカフェへと移動させることを可能にしたことも、非公式なワークスペースへの需要を過熱させている。

チャペルは「スターバックスは無料のWi-Fi、幅広い飲料の選択肢、そして一般的に長時間を過ごすに十分快適であり、打ち合わせすら可能な多用途環境を提供するため人気が高い。こうした多機能業務環境が、オフィス内にカフェバーを設置したいという需要を牽引している」と指摘。従業員はオフィスを離れて歩道を歩くのではなく、廊下の反対側へ行くだけだ。

多くの社内施設では外部と比べて価格が最大50%割安となっているが、従業員は時間と費用を節約するだけではない。大きな利点は、オフィス内にあるカフェスタイルの施設が同僚とのコミュニケーションを円滑にし、採算性の向上に役立つことである。チャペルは「カフェバーを備えた企業の従業員はエンゲージメントが高いことが明らかになっている」と分析し、こうしたカフェは従業員が休憩したり、突発的に打ち合わせができるフレキシブルな環境をもたらすという。

優れた設計のスペースは、活気ある環境を顧客とのカジュアルな打ち合わせに使うことも可能にし、企業のポジティブなブランドイメージを強調しつつ、会話の内容が外部に漏れるリスクを最小化し、社外における会議の費用も節約できる。

万能薬はない

一方、カフェバーはあらゆるオフィス環境に適しているわけではなく、投資意義が認められるためには毎日一定数の利用者がなければならない。時には企業文化が邪魔になることもある。

一部の企業は従業員が求めていても社内にカフェバーを設置することに消極的だ。チャペルによると「多くの企業が依然として離席中は仕事していないという前提で運営されている。このため、クリエイティブな思考とコラボレーションを重視するテック系企業や急成長するスタートアップ企業といった、より進歩的な組織がこのトレンドを率先してきた」と説明する。

しかし、今や企業の姿勢が変化している。チャペルは「より多くの企業がホスピタリティの性質をオフィスに取り入れることの価値を認めるようになっている」との認識だ。仮にフルスケールの社内カフェは無理でも、高級なコーヒーマシンを戦略的に配置し、そのメンテナンス要員や質の良いコーヒー豆を確保する等、カフェバーのエッセンスを取り込むことは可能だ。そうすれば簡単に優れた結果を得ることができるのである。

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