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東京五輪にむけて外国企業が日本進出?

六本木から渋谷へ移転するグーグル、目黒の新築オフィスビルを新たに借り増したアマゾン.ドット.コム。2018年から本格的に日本上陸を果たすコワーキングスペース運営会社のWeWork……。ビルのブランド価値向上を念頭に海外の有名企業の誘致を待望するビルオーナーは少なくない。

2018年 02月 05日

新築大規模ビルは外国企業狙い

少子高齢化によって労働人口が先細る日本においてオフィス需要そのものの低下も危惧されている。オフィス需要を新たに創出するための方策として「海外企業の日本誘致」に期待を寄せる声は日増しに高まっているのが現状だ。2020年に開催される東京五輪は世界から注目されるビッグイベント。五輪自体はオフィス需要を喚起する直接的要因とはならないまでも「東京がいかに働きやすいビジネス環境であるか」を世界中に知らしめる絶好の「見本市」にはなる。都心部のあらゆる場所で競うかのように進められる大規模再開発の狙いは、まさに海外企業の誘致にあり、事実、新たに開発されたオフィスビルにはグローバル企業の誘致に成功しているのだ。

リーマンショック以来、外資の動きは低迷- 外資系企業をリーシング

海外企業の日本進出は日本経済の浮沈にかかわる重要事項であり、政府は国際戦略総合特区を定め、税率を優遇する等の支援を行ってきた。東京では「アジアヘッドクォーター特区」として6区域(東京都心・臨海地域、新宿駅周辺地域、渋谷周辺地域、品川駅・田町駅周辺地域、羽田空港跡地、池袋周辺地域)を外国企業の誘致プロジェクトを推進している。

とはいえ、こうした取り組みが絶大な効果を発揮しているかといえば、そうとも言い切れない。多くの外国企業の日本進出をサポートしてきたJLL日本マーケッツ事業部オフィスリーシング部 千福英樹は「外国企業の動きはまだまだ本格化していない」との見解を示す。海外企業の日本進出が顕著だったのは2000年~2003年頃。バブル崩壊から回復に向かい始めた日本経済にビジネスチャンスを求めた海外の金融関連企業やIT企業が多数日本へ進出し、オフィス賃料のけん引役となった。金融関連企業はまだ日本へ戻ってきておらず、主な動きはIT企業が中心だが、その数はまだ多くはない。しかし、千福は「東京五輪の開催が決定して以来、景気は回復しており、海外企業の反応は前向きになりつつある。五輪の成否が海外企業誘致の鍵になる」と断言する。

国内オーナーは外国企業の誘致に期待- 外資系企業をリーシング

海外企業の腰はまだ重いが、彼らを受け入れる国内のビルオーナーサイドは期待を隠さない。JLL日本のもとに国内オーナーからの問い合わせが増えているのは事実だ。しかし、千福は「確かにオーナーサイドがグローバル企業の誘致をJLLに期待する傾向は更に強まっているが、最終的に入居先を決定するのは企業サイドになる。企業のニーズにビル側がいかに応えられるかが最も重要」との見解を示す。オフィスに対して海外企業ならではの「好み」は明確だというのだ。では、どのようなオフィスがグローバル企業に「刺さる」のか。千福は「クライアントの考え方によるが…」と前置きしながら、3つの共通点を挙げてくれた。

1つ目は立地だ。立地が重要であることは賃貸オフィス全般にいえることだが、グローバル企業が最も好むエリアは港区と千代田区で、それに加えIT企業に人気の渋谷区以外は基本的にニーズが少ないそうだ。千福によると「特に千代田区、港区は他のエリアに比べグレードが高く優れたオフィスビルが多数存在する。加えて港区は外国人に好まれる住宅が充実しているのが最大の強み。インターナショナルスクールやバイリンガル対応が可能なクリニック、行政の対応も外国人に対して手厚い。職住近接を好む外国人ワーカーのニーズを満たしているため」だという。

2つ目は共用スペースの充実だ。敷地全体に緑が豊富で、飲食店やカンファレンス機能、リフレッシュスペース等、オフィス空間以外の共用スペースが充実しているオフィスビルは好まれる傾向にある。

3つ目は駅とのアプローチだ。駅直結ならベストだが、千福は「駅直結でなくても駅から敷地へ行くまでのアプローチ、そしてエントランスホールからワークスペースまでのアプローチがワーカーたちにワクワクさせる雰囲気があることも人気を集める重要なポイント」と指摘する。

一方、最新鋭のAグレードオフィスのスペック(天井高、OAフロア、空調、電気容量、BCP対策など)やセキュリティを含めた安全性は既に世界的にも最高水準にあり、物件ごとに差がなくなっており、スペックで差別化を図るのはもはや難しく、立地と共用施設の充実度で印象に差がつくとの見解だ。

商習慣のギャップを埋める努力を- 外資系企業をリーシング

商習慣の違いから契約時の対応に苦労することも考えられるが、これも企業によっては状況が大きく異なるようだ。例えば日本での生活や勤務が長い外国人や日本人をそのまま現地法人の社長に起用する場合は日本の不動産賃貸借上の商習慣を理解している可能性が高いが、JLL日本は日本になじみのない海外企業との取引も多く、そのような企業に対し日本の不動産賃貸借上の商習慣をレクチャーしたり、場合によっては弁護士の紹介や賃貸借契約書の翻訳を支援する等、一定の対応を行うことで、外資系企業との取引の少ない国内ビルオーナーとの対応サポートもしているので、商習慣の違いによる契約プロセスでのトラブルを未然に防ぎ、円滑に契約をまとめることができる。

千福は「日本のオーナーの場合、外国企業のリーシングに対する考え方が二極化しており、先進的なデベロッパーは積極的だが、コンサバティブな国内オーナー等はまだまだハードルが高い。現状、外国企業を受け入れに積極的なオーナーは限られており、そこに需要が集中している」と述べる。成長性の面では名もなきITベンチャーが急成長を遂げる可能性もありえる。来る東京五輪が開催される2020年に向けて外国企業の動きも活発になるのではないか。

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