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続く建築費高騰と工事長期化の兆候が物流不動産市場に及ぼす影響

2022年6月に建築費高騰による物流不動産市場への影響について寄稿したが、その後も物流施設の建築費が継続して上昇しており、物流施設開発事業者や投資家の収支・事業想定のみならず、スケジュール等に影響を与えている。今後の方向性について予測する。

2022年 10月 21日
建築費の上昇と物流施設投資への影響

コロナ禍の2021年以降、物流施設の建築費が急激に上昇していると前回コラム「建築費高騰による物流不動産市場の今後の行方(2022年6月8日掲載)」で取り上げたが、それ以降もさらに物流施設の建築費は上昇している。

前回と大きく異なっている要因は、円安である。

中でも鉄骨は、物流施設の躯体の中で大きな割合を占めているが、その材料である鉄鉱石と石炭を100%輸入に頼っており、影響が大きい。

デベロッパーや投資家が2022年前半頃に想定した物流施設の建築費は45万-50万円/坪、その1年前との比較で概ね5万円/坪上昇したことは前回お伝えしたが、改めて彼らへヒアリングしたところ、現時点では50万-55万円/坪と、この半年間で更に5万円/坪程度上昇している。

また、最近になって参入してきたデベロッパーや投資家が好む中小規模の物流施設(延床2,000-4,000坪程度)では同60万円/坪という声も聞こえてくる。

統計でもその傾向が確認できる。建設物価調査会が公表している倉庫の建築費指数では、2021年4月の工事原価は121.5であったが、1年後の2022年4月には同133.5、さらに直近の2022年9月には同139.7と、この5カ月で約5.0%の上昇となっている。

出所:建設物価調査会の公表データを基にJLL作成

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投資意欲は全く衰えていない状況であり、一層低い利回りによる高い価格での売却を見込み、建築費の上昇を吸収してしまっている。それどころか、建築費の上昇を補って余りあり、それが土地へ向いて土地価格のさらなる上昇を招いている

このように建築費の上昇が止まらない状況の中で、デベロッパーや投資家によっては具体的な行動もみえてきている。

前回は、着工凍結や延期といった具体的な動きはほとんどみられていなかったが、現在では、近い将来に建築費の上昇が落ち着くとの考えのもと、着工を延期するデベロッパーも実際に出てきている。

一方で、今後も継続的に建築費の上昇が続くと考え、現在の建築費の水準でも開発利益が見込めるのであれば、当初見込みよりも少なくなるとしても着工させる、と考えるデベロッパーもいる。

また、各建築資材の納期も従前より延びているようだ。鉄骨は、発注してから納品されるまで1年程度所要する、といった話も聞かれる。

建設中の物流施設の竣工が遅れるといったことは、目下のところ発生していないようであるが、今後については、上述の着工の延期だけでなく、予定通り着工するも竣工時期が後ろ倒しになる、という事態もあり得よう。

このことはデベロッパーよりも特に投資家に影響を与えることになろう。投資家はIRR(Internal Interest Return:内部収益率)といった時間軸を含めた投資評価指標に重きを置いて投資プロジェクトを評価している。仮に土地購入費や建築費といった投資額が変わらなくても、家賃収入発生までの期間や売却までの期間が延びることで、これらの指標は悪化することになる。逆に言えば、指標を維持するには投資額を少なくする必要があり、現在の建築費が上昇、高止まりする環境下では、理論的には土地購入費を抑えるしかなくなる。

ここまで、継続する建築費の上昇と建設スケジュールの長期化の懸念を述べてきたが、いずれも、期待する賃料収入や売却価格等を変えない限り、土地を安く購入するしかないことになる。

ところが、現実には土地価格の下落という事象は起きておらず、少なくとも投資市場に関していえば、①円安による物件の割安感、②今なお低く抑えられている借入金利と、③それに伴うイールドギャップの存在から、今なお海外からの新規参入が続く状況である。

投資意欲は全く衰えていない状況であり、一層低い利回りによる高い価格での売却を見込み、建築費の上昇を吸収してしまっている。それどころか、建築費の上昇を補って余りあり、それが土地へ向いて土地価格のさらなる上昇を招いているといえる。

今後については、利回りには依然として低下余地があるとみられることから、建築費の上昇が続いたとしても、しばらくは土地価格も上昇、もしくは横ばいとなり、少なくとも下落する方向には振れないものと考える。

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連絡先 佐久間 譲治

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 シニアディレクター

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