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海外投資家の国内不動産に対する見方

海外投資家による国内不動産への投資が今年に入って急速に増加してきている。毎年25%程度で推移する海外投資家割合が今年上半期は30%を超える水準で推移してきており、国内不動産への投資が加速してきているといえよう。背景には国内市場への変わらぬ信頼と、当面の間変化がないとされる金利動向があると考えられる。

2023年 07月 27日
海外投資家による日本への投資が加速

JLLキャピタルマーケット事業部ではクライアント向けのマーケットプレゼンテーションを随時行っている。今年に入ってその数が激増しており、半年間で実に前年同期比で3.5倍にのぼっている。そのほとんどが海外投資家向けであり、なかには現時点で日本への投資を行っていない先も多数含まれている。国内不動産投資市場への熱い視線はとどまることがないといった感もあるが、来日する投資家が口々に語るのが日本という国への高い信頼度である。

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海外投資家に信頼される日本の魅力

日本は先進国の一翼を担い、世界第三位の経済規模を誇る経済大国である。加えて政治リスクも皆無で、投資をするために必要なファンダメンタルズはすべて高水準で揃っている国であるといえよう。

オフィス
こうした信頼度はあらゆる商業用不動産にとっても安定した収益をあげられる投資先としての魅力を高める要因となっており、例えばオフィスは先進国のなかでは極めて低い空室率で安定した稼働、ならびに賃料収入が見込め、さらにはマーケット回復時には賃料のアップサイドも見込めるなど、あらゆる投資ストラテジーを受け入れることが可能なセクターであるといえる。
賃貸住宅/物流施設

昨今海外投資家に人気のセクターとして賃貸住宅と物流施設をあげることができるが、この2つのセクターにおいても、例えば賃貸住宅は極めて高い稼働率で長期間推移しており、その間安定した賃料収入を享受することが可能である。

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また、物流施設は長期間の賃貸借契約でこちらも安定したキャッシュフローが見込めることから、特にコア系投資家からの人気が極めて高いといえる。

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このように安定した賃料収入が見込める物件は、その根底に安定した経済基盤なしには実現できないと思われる。日本が選ばれる理由はまさに、投資家から高い評価を得ているその低リスクが第一の理由であると考えられる。

低金利政策によって海外投資家が日本へ殺到

 

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世界で唯一ポジティブスプレッドが取れる日本への投資が殺到するのは自明であろう

もう一つ日本の人気を高めているのが現在の低金利政策であると考えられる。

諸外国では物価の上昇を抑え込むために断続的に政策金利を上昇させてきている。一方で日本においては諸外国と比較してそれほど急激に金利が上昇しているわけでもないため、日銀も昨年12月のイールドカーブコントロール政策の見直しで実質50 bpsの利上げを行って以降、一切の金利の引き上げを行っていない。それどころか現在の低金利政策を当面の間維持するという姿勢も崩していない。

こうした低金利状況は不動産取得における借入には極めて優位性を発揮する。現在、借入後のいわゆるレバレッジ後利回りでポジティブスプレッドが確保できるのは日本だけであり、諸外国はすべて借り入れると物件本来の利回りより低い利回りになってしまう逆ザヤ状態となっている。不動産投資には借入が不可欠であることは言うまでもないことから、世界で唯一ポジティブスプレッドが取れる日本への投資が殺到するのは自明であろう。

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国内不動産市場の数少ない課題

国内不動産投資市場は今後も安定かつ収益性の高い世界で唯一の市場として投資家の耳目を集め続けることとなる

こうした極めて良好なファンダメンタルズに支えられて順調に取引額を伸ばしつつある国内不動産市場だが、問題点がないわけでもない。

特に先述の海外投資家から人気の高い賃貸住宅や物流施設などは限定された投資機会に数多くの購入希望が殺到することで価格の上昇に歯止めが効かない状況である。こうした高値止まりしている状況は、新規投資家の参入を妨げる大きな要因となっており、市場メカニズムで価格が動いている状況であるとはいえ、何らかの是正が必要であると考えられる。

一方で国内不動産投資市場は今後も安定かつ収益性の高い世界で唯一の市場として投資家の耳目を集め続けることとなると考えられることから、今年後半も多くの物件が取引され、多くの投資家でにぎわうこととなろう。

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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