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優良テナントを誘致するリーシングとは?

オフィスや商業施設等の賃貸不動産において、テナント誘致活動に関する業務全般を指すリーシング。賃貸借契約締結に向けた仲介業務や営業活動のみならず、立地等のマーケティング調査、テナント構成や賃貸条件の設定など、テナント誘致に関わる幅広い戦略を立案・実行する。今回は注目を浴びるリーシングマネジメントについて解説する。

2021年 08月 02日
オフィス賃貸事業の成否を握るリーシングとは?

オフィス賃貸事業にとって収益の源泉となるのがテナントからの賃料だ。空室が発生すれば賃料が途絶え、結果として不動産としての価値が大きく棄損する。いかに優良なテナントを誘致し、長期間入居して続けてもらうか。オフィス賃貸事業を成功に導く鍵となるのが「リーシング」といえるだろう。

リーシングとは、オフィスや商業施設等の賃貸不動産において、テナント誘致活動に関する業務全般を指す。オーナー側の立場にあるプレイヤーが賃貸借契約締結に向けた仲介業務や営業活動のみならず、立地等のマーケティング調査、テナント構成や賃貸条件の設定など、テナント誘致に関わる幅広い戦略を立案・実行するものだ。具体的には、内覧会の企画・運営、物件パネルや物件資料(マイソク)といった各種営業ツールの制作等が挙げられる。

 

リーシングマネジメントとプロパティマネジメントの違いとは?

マーケティングやテナント誘致はリーシングマネジメント、資産価値を最大化させる施設運用にはプロパティマネジメントという専門分野ごとのパートナーを選出することが効果的

 

テナントの誘致業務が主軸となるリーシングマネジメントと不動産の管理・価値向上等の幅広いプロセスを担うプロパティマネジメント。この2つの業務にはテナント誘致や契約を行うという共通要素があるが、テナントが求める多様なニーズや条件に対応するべく、マーケティングやテナント誘致はリーシングマネジメント、資産価値を最大化させる施設運用にはプロパティマネジメントという専門分野ごとのパートナーを選出することが効果的であるといえる。

収益性の高いテナント物件を実現するリーシングマネジメントの業務とは?
 

ターゲット層が求めるオフィスビルの条件や立地等を事前に把握しておくことが効果的なリーシングを行う上で要

優良なテナントをオフィスビルへ定着させるには、リサーチやマーケティング戦略のもと、ニーズに沿った魅力的な賃貸不動産へと価値を向上させ、計画的に営業によるアプローチを行うことが効果的である。収益性の高いオフィスビル等の賃貸不動産へと導くリーシングマネジメント業務は以下の3つに分けられる。

1. 市場やニーズを探るリサーチ

オフィスビルのオーナーとのヒアリングを綿密に行い、施設やターゲット層等の要望を明らかにした上で、物件の立地や競合、ニーズに関する市場を徹底的にリサーチ、分析することが欠かせない。特にオフィスの場合、新しい働き方が主流となる中でテナントのニーズは大きく変化している。そのため、ターゲット層が求めるオフィスビルの条件や立地等を事前に把握しておくことが効果的なリーシングを行う上で要となってくる。

2. マーケティング戦略立案・企画

まず、実際のリーシングプロセスで齟齬が起きないように、オフィスビルオーナーとの方向性やコンセプトに相違がないか改めて確認することが重要なポイントとなる。その後、市場リサーチ、分析プロセスで抽出した要素をもとにターゲット層の選定、競合との差別化ポイントの設定、差別化ポイント実現のための改装の計画、賃料設定等、マーケティング戦略を立案し、具体的な企画プロセスを進行していく。ここでは、長期的な視点でオフィスビルという賃貸不動産の価値が決まってくるため、徹底的なマーケティング戦略立案が成否を分けるポイントとなる。

3. 優良テナントの入居を促進する戦略に基づいた営業活動

選定したターゲット層に対し、マーケティング戦略立案・企画で最適化されたオフィスビル物件を紹介する営業活動プロセス。後にあるリーシングマネジメントの専門会社の見極めポイントでも紹介するが、より多くの営業活動に加え、オフィス仲介業者とのネットワークや効率的な連携が優良なテナントの入居を促す最大の策ともいわれている。徹底したマーケティング戦略により最適化されたオフィスビルを的確なターゲットとなるテナントへアプローチし、収益性を高めていくためには、戦略的な営業活動が鍵を握る。

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リーシングに関わるプレイヤー属性
 
リーシングにおいて重要な役割を担うのがテナント誘致活動の実務を担うサービス会社の存在だ。広く知られるのがオフィス仲介業者だが、テナントリーシングにおけるプレイヤー大きく3つに分かれる。①テナントレップ、②オフィス仲介、③リーシングマネジメントである。
 
①オフィス戦略に関するサポートを行うテナントレップ

オフィス移転・新設・契約更新等のタイミングで、テナントのオフィス戦略に関する様々なサポートを行う。欧米等ではテナントレップの存在は広く定着している。日本では外資系の総合不動産サービス会社が主なプレイヤーとなる。

②賃貸借契約の成立を仲介するオフィス仲介

一般的にはオフィス入居時にオーナーとテナント間で結ばれる賃貸借契約の成立を仲介する中立的な立ち位置となる。ただし、テナントの要望を受けて入居候補物件を捜索する他、仲介同士の競合関係もあり、完全に中立の立場とはなりにくい。歴史のある老舗仲介、信託銀行、外資系の総合不動産サービス会社など、プレイヤーは多岐にわたる。

③オーナーの利益最大化を目的とするリーシングマネジメント

テナント側に立つテナントレップの対極の存在として「オーナーレップ」とも呼ばれる。オーナーの利益最大化を目的に、プロパティマネジメント(PM)やビルメンテナンス(BM)といったステークホルダーと連携し、オーナー側から委託されリーシング戦略を主導する。JLLを含めた外資系の総合不動産サービス会社が主なプレイヤーとなる。

リーシングマネジメント専門会社の実力を見極める2つのポイント

リーシングマネジメントを提供するサービス会社は多数存在するが、その実力を見極めるポイントは大きく2点ある。「情報ネットワーク」、「テナント誘致力」だ。

情報ネットワーク

リーシングはより多くのテナントに営業したほうが成約率は高まりやすい。そのため、オフィス仲介業者との連携が重要になる。リーシングマネジメントを提供する事業者の多くはオフィス仲介出身が多いとされ、前述した通り、仲介業者同士は競合関係にあるため、連携しにくいとされている。一方、業務の性質上、従前からオフィス仲介と連携することが多いプロパティマネジメント出身だと相対的に情報ネットワークが厚いと考えられる。JLLのリーシングマネジメントチームを例にすると、不動産運用サービス事業部(PM)で長年リーシングに携わったベテランスタッフが多数在籍しており、大手仲介、地域の有力仲介業者等と信頼関係を構築し、綿密な情報共有のもと、優良テナントの誘致を成功してきた実績がある。

テナント誘致力

オフィス仲介会社等の外部の協力者との連携のみならず、リーシングマネジメント自身のテナント誘致力も重視すべきポイントだ。リーシングマネジメントの社内リソースの連携体制、日系・外資系企業双方との深いネットワーク等がテナント誘致力を計る指標といえる。また、JLLでは遠隔地からの物件内覧が可能なバーチャル内覧システムを内製化しており、こうした不動産テックを活用した先進的かつ効率的なリーシング手法を有している点も評価ポイントになる。


オフィス市況悪化で注目集めるリーシングマネジメント

テナントが退去した空室をいかに迅速に埋め戻すかが、オフィスビルの収益性、資産価値に直結する。とはいえ、新型コロナウイルス感染拡大を機に、オフィス市況が下降局面に入る中、ビルオーナーや管理会社にとって空室の埋め戻しは容易に解決できない。そうした中、リーシングそのものを外部の専門家に委託する「リーシングマネジメント」が注目されている。

リーシングマネジメントの優位性


一般的にリーシング活動を主導するのはビルオーナー、ビルの運営を受託している管理会社(PM、BM)、もしくはオーナーと専属専任媒介契約を結んだオフィス仲介業者、リーシングマネジメントが挙げられる。下の図は「マーケット理解」、「能動的なリーシング活動」、「情報管理」等、リーシングに必要不可欠な要素について比較してみた。

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マーケットに対する理解力として、最新の空室情報を賃料相場の変化といったオフィス市場の最新情報に精通しているのがリーシングマネジメントやオフィス仲介業者である。対してビルオーナーや管理会社はオフィス仲介業者等から間接的に情報を得る立場にあり、空室や賃料水準等の情報鮮度は幾分落ちると考えられる。

また、リーシングマネジメントやオフィス仲介業者はテナント分析を積極的に行い、テナント誘致を進めていくが、オーナーや管理会社はテナントへの直接営業はあまり積極的に行わず、複数の仲介業者を介した、いわば「保険的」なリーシング活動を行うケースが多いように見受けられる。能動的なリーシング活動を積極的に展開しているのは前者といえるだろう。

さらに、リーシング活動を進める上で重要なポイントとなる仲介業者との連携体制については、仲介業者の専任媒介契約を結んだ場合、競合となる仲介業者とは密な連携体制を構築しにくい状況にあることが窺える。一方、リーシングマネジメントはオーナー側の立ち位置にあり、複数の仲介業者と連携してリーシング活動を進めることができる。オーナーや管理会社もオフィス仲介との連携を密にしやすい立場にあるが、付き合いのある仲介業者に頼りがちになる面は否めない。

このようにプレイヤーの立ち位置を比較すると、相対的にリーシングマネジメントはリーシング業務に特化・精通していることがわかる。マーケットに対する理解度、テナント分析力等の高い専門性、能動的なリーシング活動といった3要素を兼ね備えた存在といえるだろう。

リーシングマネジメントの報酬体系

リーシングマネジメントを活用した際のオーナーが負担するべき一般的な報酬体系は「固定報酬型」、「固定報酬+成功報酬型」、「成功報酬型」、「リテイナー報酬型」の4つに分かれる。最もポピュラーなのは成功報酬型で、次で固定報酬+成功報酬型が多いという。既存テナントから解約通知があったタイミング等、迅速にテナント募集活動を行う必要があるケースは成功報酬型となる。一方で、新規開発プロジェクトやリニューアルなど、長期間かけてテナント誘致を進めていくケースでは固定報酬+成功報酬型が多いとされる。

固定報酬型 月額固定のリーシング活動費 ・開発物件
・リニューアル物件
・長期プロジェクト
固定報酬+成功報酬型 月額固定のリーシング活動費+インセンティブ(成約時) ・開発物件
・リニューアル物件
・長期プロジェクト
成功報酬型 インセンティブ(成約時) ・短期プロジェクト
リテイナー報酬型 月額固定リーシング活動費+インセンティブ(成約時:受領済の固定報酬と相殺) ・開発物件
・リニューアル物件
・長期プロジェクト

出所:JLL日本

 
リーシングの成否がオフィスビルの価値を左右する

ファンドや一般事業会社など、リーシングに関する実務的なノウハウを持たないビルオーナーが増えている。また、物件管理を委託している管理会社は主業務である物件管理に忙殺され、リーシングに関するノウハウ・人材不足の可能性もありえる。

リーシングの成否はオフィスビルの価値を大きく左右する。その道の専門家であるリーシングマネジメントを起用するメリットは十分にありそうだ。

JLL日本では、オーナーや管理会社に代わってオフィスビルのリーシング業務を担う「リーシングマネジメント」サービスをはじめ、移転先となるオフィスビルの仲介、オフィス移転業務のプロジェクトマネジメント、移転後のオフィス運営まで、企業のオフィス戦略を一気通貫で支援しています。オフィスに関するご相談がありましたら下記の問合せフォームからご連絡ください。

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連絡先 千福 英樹

JLL日本 オフィス リーシング アドバイザリー事業部 エグゼクティブディレクター

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