【長期空室も顕在化】注目される物流施設のリーシング対策
2020年には空室率0%台に至った首都圏の物流不動産市場。しかし、新規大量供給と既存物件の空室枯渇が相まって8%弱まで上昇。長期空室を抱える一部の新規物件も現れる等、取捨選択が鮮明になる“二極化”の兆しが見え隠れする。そうした中、空室解消のためにJLLのリーシングマネジメントに注目するオーナー・投資家が増えている。
0%台から8%弱へ空室率が上昇
コロナ禍を受けてなお堅調に推移してきた物流不動産市場が曲がり角を迎えているのでしょうか?
JLLの調査によると、首都圏の物流不動産市場における2023年第3四半期末時点の空室率は7.6%(湾岸エリア8.6%、内陸エリア7.1%)。空室率0.2%を記録した2020年以来、徐々に空室率が上昇に転じ、足元では8%弱に達しました。
物流不動産市場を調査しているJLL日本 リサーチ事業部 シニアディレクター 谷口 学は空室率上昇の理由について「新規大量供給の継続と開発エリアの拡大によって新築物件の空室消化に時間がかかっているため」と指摘しています。
新規開発の内定率や今後の新規供給量を鑑みて、JLL日本 リサーチ事業部では2023年第4四半期末時点の空室率を8%超。2024年の新規供給量は減少するため空室率の低下を見込んでいるものの、2024年の空室率は7.4%、2025年は7.2%と予想しています。
首都圏・大型物流施設の賃料・空室率の推移(対象:延床面積50,000㎡以上、2000年以降竣工) 出所:JLL日本 リサーチ事業部
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現在の空室率は適正範囲内
2020年の「0%時代」からの急激な空室率の上昇は、一見すると“テナント需要の減退”が危惧される状況ともいえそうですが、物流不動産のリーシング業務等を手掛けているJLL日本 ロジスティクス&インダストリアル リーシング事業部 シニアディレクター 友田 健は「“通常モード”に戻っただけ」と述べています。
2008年のリーマンショック、2015-2016年当時の大量供給、そして2018-2019年にかけての新規大量供給と、過去20年の物流不動産市場を振り返ると空室上昇期が3度訪れましたが、こうした荒波を乗り越えて現在に至ります。
「長年物流不動産市場を見てきた中で、竣工前に満床を迎える新築物件が多数存在するのは“異常”な状況。投資家やデベロッパーは竣工から半年ないし1年を目途に満床にする計画で開発を進めているため、物流不動産に対する投資意欲も引き続き旺盛。賃料水準も上昇傾向が続いています」(友田)
物流不動産市場で鮮明になる“二極化”の兆し
1年以上の空室が続く新規物件も現れており、オフィスと同様に取捨選択が鮮明になる“二極化”が見られ始めている
一部の新築物件で長期空室が顕在化
JLLが調査したところ、空室が発生しているのは一部の新規供給物件に限られており、既存物件は空室がほとんど見られません。総体的に見れば、日本の物流不動産市場は引き続き堅調に推移しているといえます。
しかし、新規供給が集中するエリアにおいて床需要を奪い合う構図も見え隠れしており、優勝劣敗が進むオフィス市場と同様に取捨選択が鮮明になる“二極化”が見られ始めているともいえるでしょう。
好立地かつ値ごろな賃料でありながら1年以上空室が続いている新規物件も存在しています。JLL日本 ロジスティクス&インダストリアル リーシング事業部 シニアディレクター 山田 剛によると「割高な賃料、駅からの距離、採用が難しいといった立地上の問題のみならず、業務効率が悪い躯体構造、脆弱な電気容量といった“使い勝手”の面で空室が長期化するケースもある」とのことですが、一様に右肩上がりの市況とはいえなくなってきたようです。
「2024年問題」が物流施設に与える影響
加えて、ドライバーの年間時間外労働時間の上限が960時間に制限される「2024年問題」等を背景に、物流コストが上昇している点も物流施設の稼働率に大きな影響を及ぼしそうです。
物流施設のテナントコンサルティング業務を手掛けている山田は「世界的なインフレ、急増する物流需要、エネルギー価格の高騰等を背景に物流コストの上昇傾向が続いている中、2024年問題等の影響もあって物流業者が長距離等の一部輸送業務に対応しない時代が将来的に訪れる可能性が高まっています」と指摘しています。
「物流コストに占める地代・賃料は1-2割程度ですが、輸配送費は5割程度。地代・家賃が多少増えても輸配送費を削減できるのであれば物流コスト全体を抑えることができます。そのため、2024年問題を受けて、多くの荷主企業は長距離輸送をやめ、輸送ルートの途中や配送地に近いエリアに在庫を保管する等、物流戦略を再考し始めています」(山田)
その結果、立地によって荷主が負担できる賃料が明確化される可能性があり、その賃料目安よりも高い物流施設では空室消化が遅れる等、近い将来“二極化”がさらに鮮明になる可能性もありそうです。
物流リーシングマネジメント業務への問い合わせ急増
JLLのリーシングマネジメント・サービスは長年の事業活動で培ったテナントとのリレーションを活かし、直接借主にアプローチするため、即効性がある
竣工から1年以上空室を抱える新築物流施設も存在する(画像はイメージ)
そうした中、JLL日本 ロジスティクス&インダストリアル リーシング事業部のもとには、オーナーや管理会社に代わってリーシング活動を代行するサービス「リーシングマネジメント」に関して2022年頃から問い合わせが増加しているといいます。
リーシングマネジメントとは、オーナーや管理会社に代わってテナント誘致活動に特化したサービスのこと。
友田によると「物流不動産市場に新規参入した外資系ファンド等、リーシングにマンパワーを割けないオーナー・投資家は少なくない。JLLのリーシングマネジメント・サービスは長年の事業活動で培ったテナントとのリレーションを活かし、直接借主にアプローチするため、借主の声・反応をダイレクトに聞くことができます」とのこと。
直近では、これまで大型物流不動産が存在しなかった新興エリアに開発された大型物流不動産のリーシングマネジメントを受託。テナント需要を1から喚起していかなくてはならず、リースアップに時間がかかると目されていましたが、JLLがリーシング活動を担当したことで竣工から半年程度で5割超の稼働を達成しました。
物流施設のリーシングマネジメントに興味のある方はJLLへ
引き続きEC需要の拡大が見込まれる等、物流施設に対する需要は今後も堅調に推移することが予想されますが、2024年問題を控える中、物流コスト全体の圧縮につながる好立地物件に需要が集中する等、二極化が進む可能性があり、今後はリーシング戦略に注力する必要がありそうです。
JLL日本では物流施設に関してマーケットレポートの作成、リーシングマネジメント・サービスの提供をはじめ、全館空調に対応する電気容量の増強といったバリューアップ工事の支援等、リーシング戦略に寄与する様々なサービスを提供しています。ご興味のある方は下記に問い合わせください。
連絡先 友田 健
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