大阪のIR区域整備計画が認定~期待が高まる大阪マーケット~
2025年に開催される大阪・関西万博の会場となる夢洲を舞台に、かねてから議論が進められてきた統合型リゾート(IR)の整備計画が正式に認定された。2029年秋-冬頃の開業に向けてIRの開発が本格化するなか、大阪経済・不動産マーケットにどのような影響を及ぼすのだろうか。
2029年の開業を目指し、IR開発が本格化
大阪府・市が国に申請していたIR統合型リゾート(IR)の「区域整備計画*」が1年にわたる審査を経て2023年4月14日に認定された。2025年大阪・関西万博の会場となる大阪市の夢洲に、国際会議場、カジノ、ホテル、エンターテイメント施設、飲食施設、物販施設などからなる総延床面積約77万㎡の超大型複合施設を開発する計画だ。コロナ禍の影響もあり当初計画より大幅に遅れたが、2029 年秋-冬頃の開業をめざして、いよいよ本格的に開発事業が動き出す。
計画されているIR施設
施設区分 | 具体的な施設 | 延床面積暫定計算値 |
---|---|---|
国際会議場施設 | 国際会議場施設 | 36,875㎡ |
展示等施設 | 展示等施設 | 31,455㎡ |
魅力増進施設 | ミュージアム、フードパビリオン、ガーデンシアター、体験スタジオ等 | 11,150㎡ |
送客施設 | ツーリズムセンター、バスターミナル、フェリーターミナル | 13,373㎡ |
宿泊施設 | ラグジュアリー、スーパー・ラグジュアリー、アッパー・アップスケール | 289,437㎡ |
カジノ施設 | カジノ施設 | 65,166㎡ | 来訪及び滞在寄与施設 | シアター、ラグジュアリーリテール、飲食施設等 | 75,703㎡ |
バックヤード、駐車場、エネルギーセンター | 247,366㎡ |
出所:大阪府
IR区域整備計画の3つの目標
1.MICE拠点の形成
区域整備計画には3つの目標が掲げられている。第一に、「世界水準のオールインワンMICE拠点の形成」である。収容人員6,000人以上の国際会議室を備えた複合的MICE施設を整備し、大規模国際会議のほか、大阪・関西が強みを有する産業(スポーツ、フード、メディカル、ウェルネス、ライフサイエンス、環境・エネルギー、ものづくり、テクノロジー 、スマートシティ及び観光)をテーマとした展示会等を誘致・開催することで、これらの産業の成長・グローバル化を促進する狙いだ。東京でなく大阪に日本を代表する世界水準の施設ができることは、大阪の都市競争力の向上に大きな期待ができよう。
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2025年の大阪・関西万博に加えて、その後も持続的で安定的な需要が見込まれることは大阪の不動産市場の活性化に大きく寄与するだろう
2.集客力強化への貢献
第二に、「国内外からの集客力強化への貢献」である。日本の文化や芸術などに触れられる魅力増進施設、ラグジュアリーブランドを含むリテール施設、日本初のカジノ施設、グレード・特徴の異なる3つのホテルを整備し、ビジネス客からファミリー層まで幅広い客層の来訪を促進することで、開業3年目期には国内旅行者数約1,358万人、訪日外国人旅行者数約629万人(政府の観光戦略における目標である訪日外国人旅行者数6,000万人の約10%)の来訪を見込んでいる。2025年の大阪・関西万博に加えて、その後も持続的で安定的な需要が見込まれることは大阪の不動産市場の活性化に大きく寄与するだろう。
3.日本観光のゲートウェイの形成
第三に、「日本観光のゲートウェイの形成」である。関西3空港、新幹線新大阪駅、名神高速道路・中国自動車道、大阪港などのアクセス拠点を活用するとともに、大阪メトロ中央線延伸による大阪IR直結の新駅、駐車場や大規模バスターミナル、送客施設機能(コンシェルジュ機能)を整備することで、世界と日本各地をつなぐ交流のハブとなることを目指している。区域整備計画の認定によりIRが実現味を帯びてきたことから、現在棚上げされているJR西日本の桜島線延線、京阪中之島線の大阪メトロ中央線九条駅までの延伸、近鉄奈良から夢洲への直通列車の開発といった計画も再開する可能性がある。大阪を中心に関西は環境資源が充実しており、交通アクセスが向上することによって、さらに観光の街として大阪、関西が注目を集めるだろう。
投資機会
IRの経済波及効果は1兆5,000億円超
アフターコロナ時代の本格的な幕開けを迎え、大型イベントの再開や訪日外国人の増加で街に活気が戻ってきたいま、IR計画が動き出したことで大阪マーケットへの期待は増々高まってくるだろう
IR区域の整備は、これら経済的・社会的な効果のみならず、地域経済にも好影響をもたらすと期待されている。IR施設への初期投資額は1兆828億円、その経済波及効果は1兆5,892億円と見込まれ、開業3年目期の来訪者の旅行消費額は6,637億円に達する見込みである。また、雇用面では、建設フェーズにおける雇用創出効果が約11.6万人、開業3年目期におけるIR施設で雇用される従業員が約1.5万人に上ると見込まれている。
世界経済の減速、建設費や人件費の増大、建設地の地盤・土壌の問題などの懸念はあるものの、「大阪・関西の持続的な経済成長のエンジンとなる世界最高水準の成長型IRの実現」により大阪府・市は更なる経済成長の実現をめざしている。アフターコロナ時代の本格的な幕開けを迎え、大型イベントの再開や訪日外国人の増加で街に活気が戻ってきたいま、IR計画が動き出したことで大阪マーケットへの期待は増々高まってくるだろう。
*正式名称は「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」。建設地は大阪市此花区夢洲中1丁目の一部ほか、敷地は約49万㎡、事業期間は35年間。事業者は合同会社日本MGMリゾーツ及びオリックス株式会社が中核株主となっている大阪IR株式会社。詳細はこちら。